コンサート寸評 2006年

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2006
タイトル 日付 会場 データ、感想
鼓童 十二月公演 2006/12/23 文京シビックホール 大ホール [曲]石井眞木:入破、渡辺薫:月夜野、藤舎呂悦:千里馬、他
♪ 初めて生で聴く鼓童、さすがに高水準の演奏だった。 隙のない完成度にある和太鼓の演奏は勿論だが、間に交えられる笛や歌や舞や、 照明などの舞台演出も含めて、 高度に洗練された総合舞台芸術の域に達していると思う。 和太鼓とは言っても、民族的・土俗的な要素が排されている分だけ、 打楽器(しかも表現力に富んだ)としての普遍的な要素が表に出ている (だからこそ、外国でも広く受け入れられているだろう)。 曲毎に色々な編成に組み替えられていたが、大太鼓による豪快な演奏よりも、 小太鼓を組み合わせた精緻なアンサンブルの方に、私はより強く心を引かれた。 休憩なしの100分間があっと言う間。
バッハ・コレギウム・ジャパン モーツァルト《レクイエム》 2006/12/26 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール [曲]W.A.モーツァルト: ヴェスペレC K339、 レクイエムd K626 [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]森麻季(ソプラノ)、マリアンネ・ベアーテ・キーラント(アルト)、 アンドレアス・ヴェラー(テノール)、ドミニク・ヴェルナー(バス)
♪BCJとしては初のモーツァルト公演。 いつものバッハのカンタータ公演より管弦楽も合唱も大編成で、 それを活かした劇的で豊かな響きの演奏はあまりにも素晴らしかった。 「典礼に則り」テノールによるグレゴリオ聖歌のアンティフォナが各曲の冒頭に 挿入されていたため、一層厳かな雰囲気が演出されている。 聴きながらあまりにも気分が昂ってしまい、 アンコールのアヴェ・ヴェルム・コルプス K618では、 無意識の内に涙がこぼれてしまった。 人気のソプラノ・森麻季は、今回初めて聴いたが、 流麗でしかも節度のある見事な歌には、一度でファンになりそう。
折々の会 第32回サロンコンサート「疾風怒涛チェロ協奏曲」 2006/10/28 東松山市平野市民活動センター [演奏]山本徹(バロックチェロ)、土居瑞穂(チェンバロ) [曲]C.P.E.バッハ:チェロ協奏曲d、 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番、 J.C.バッハ:チェンバロ・ソナタc
♪ 今年の山梨古楽コンクールで注目された若手チェロ奏者を起用した、 バッハ父子の作品集。 メインのエマヌエル・バッハのチェロ協奏曲は、 曲の持つ疾風怒濤を体現する熱烈な演奏で、 チェンバロ伴奏との息もぴったり合っていた。 ただ、私の耳にはオーケストラ伴奏のイメージが焼き付いているため、 バランス的にチェンバロ1台ではパワー(と厚み)不足の感は否めず、 せめて通奏低音の低音弦楽器がもう一人いればよかったのにと思う。 各奏者のソロ演奏は、選曲も含めて文句なしの出来栄え。
琉球フェスティバル '06 2006/10/08 日比谷野外大音楽堂 [出演]琉球チムドン楽団(沖縄)、大山百合香(奄美)、U-DOU&PLATY(沖縄)、 神谷千尋(沖縄)、中孝介(奄美)、大島保克(八重山)、 パーシャクラブ(八重山)、前川守賢(沖縄)、ディアマンテス(沖縄)、 登川誠仁(沖縄)、川満シェンシェー(司会)
♪ 沖縄・八重山・奄美の唄者をずらり並べた、お祭り的な豪華企画。 どちらかと賑やか系の出演者が多い分だけ、 しっとりと唄を聞かせる人が少なく、 特に目当ての大島保克さんの出番が3曲しかなかったのは残念。 しかし、これだけの一時に聴けるのは凄いことだと思う。 会場は飲食自由で、開演前から既に宴会モードに入っている人も多く、 下戸の私としては嬉しくない事態。 最後は時間切れで、締めがなく「ちゃちゃちゃブイ?」終わってしまった。 何れにせよ、野外コンサートを晴天で迎えられたのは幸運なこと。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第74回定期演奏会 2006/09/24 東京オペラシティ コンサートホール J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズVol.47 ソロ・カンタータ2 [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]キャロリン・サンプソン(ソプラノ)、ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)、 ゲルト・テュルク(テノール)、ペーター・コーイ(バス) [曲]J.S.バッハ: カンタータNr.52, 82, 169, 55, 58
♪ ソロ・カンタータ5曲を集めたプログラム。声楽はソリスト4人だけで、合唱団の出演はなく、コラール合唱も4人で歌われた。 ソリストはBCJ常連歌手陣の中でも最強の面々が呼ばれていて、実際もう非の打ち所がないような出来栄え。その中でも、テノールのゲルト・テュルクは更に突出していた。その強弱自在の情感溢れる表現力は、殆ど神がかりと言ってよい程で、聴いていて知らず知らず涙が出てしまった程。カーテンコールでも一際盛大な拍手が沸き起こってた。 器楽陣もいつもながら素晴らしく、特に三宮正満のオーボエ類は今回も見事。
志多ら ライヴ「祭来」ツアー2006 2006/09/18 クレアこうのす ♪ 愛知県・奥三河に拠点を置く和太鼓バンド・志多ら(しだら)の演奏会。 出演者は若き男女、計9人。大小さまざまの数多くの和太鼓を、ダイナミックな動きと共に、熱血的に演奏する。 曲によっては横笛が加わる他、ちょっとした寸劇風の演出なども挟んであり、 時には客席まで演奏者が飛び出して来たりして、なかなかのエンターテイナー集団と思う。 私は和太鼓をきちんと生で聴いたのは初めてだったが、 何か自分たちの内にある根源的な脈動に通じるような感じがして、強烈な体験だった。 リズムにもっと不規則性が欲しいのと、横笛があまりうまくなかったのが惜しいが、まだ若い人たちなので今後のレベルアップに期待。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第73回定演 2006/07/27 東京オペラシティ コンサートホール J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズVol.46 ライプツィヒ1725年-V [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]野々下由香里(ソプラノ)、ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)、 櫻田亮(テノール)、ペーター・コーイ(バス) [曲]J.S.バッハ: カンタータNr.128, 176, 87, 74
♪ いつも通りオープニングは今井奈緒子さんのオルガン独奏でBWV676, 715。 カンタータはツィーグラー・カンタータからの4曲で、何れも曲は短め。 今回の聴かせ所は何と言ってもロビン・ブレイズの歌で、 特にオーボエと絡み合うアリアなど、まるで天上の響き。 また、出番が少ないのは残念ながら、 トランペット3本+ティンパニの鮮やかな響きも堪能できた。 この日私は体調を崩していて少々無理して出掛けたのだが、 音楽のお陰でコンサート中は不調を忘れて過ごせたのが有り難い。 BCJ
ロシアの響き 櫻井慶喜チェロリサイタル 2006/07/15 クレアこうのす 小ホール [演奏]櫻井慶喜(たかよし)(チェロ)、寿明(じゅめい)義和(ピアノ) [曲]チャイコフスキー: なつかしい土地の思い出 Op.42より第3楽章、 ショスタコーヴィッチ: チェロ・ソナタd Op.40、 ラフマニノフ: チェロ・ソナタg Op.19
♪ 鴻巣市文化センター主催「若い芽のコンサート」シリーズ。 櫻井さんは地元・鴻巣出身の由。 二人は高校時代から20年来の共演の仲だそうで、 テンポや強弱の揺らぎで見せるぴったりした息の合い方には、本当に感動させられた。 ショスタコーヴィッチは、あの独特の息の詰まる感じがよく表されていて、期待通り。 ラフマニノフ作品は、どちらかと言えばピアノが主役のような曲で凄い熱演、 個人的には苦手な作曲家なのに今回は美しさを感じた。 曲間の解説にも飾らない人柄が伺えてよい。
レッド・プリースト 2006/06/09 王子ホール [演奏]P.アダムス(リコーダー)、J.ビショップ(ヴァイオリン)、 A.イースト(チェロ)、H.ビーチ(チェンバロ) [曲]「バロック・ファンタジア」T.ヴィターリ:シャコンヌ、 A.ヴィヴァルディ:「四季」、他 (編曲: レッド・プリースト)
♪ヴィヴァルディのあだ名「赤毛の司祭」を名乗った超絶アンサンブルによる、 大胆で過激な編曲で楽しむバロック名曲の数々。 演奏はどこまでも自由自在で愉悦感満載、 しかも極端なテンポの揺らぎにも一糸の乱れもない。 名前にちなんで赤を交えた衣装(丁度チェンバロの内装も赤!)も、 身振りや動きも交えた大袈裟な演出も、あくまでも聞き手を楽しませるためのもの。 CDで聴いた時にはちょっとやり過ぎではないかと思っていたのだが、 実際に生で聴いてみて、この自由度こそがバロックの本質的な魅力であったことに、 改めて気付かされた気分。 Red Priest
折々の会 第31回サロンコンサート 「ポプラチェンバロうぶ声コンサート 〜水永牧子チェンバロリサイタル〜」 2006/05/20 東松山市平野市民活動センター [チェンバロ]水永牧子 [曲]H.パーセル:組曲D、D.スカルラッティ:ソナタ(3曲)、 J.S.バッハ:フランス組曲第6番、他
♪ 数年前の台風で倒れてしまった北海道大学のポプラ並木を使って作られた チェンバロ(横田ハープシコード工房製作)の、プレお披露目公演。 演奏する水永牧子さんは何と、クラーク博士の一番弟子の孫の孫だとか。 激しい所は激しく、穏やかなところは穏やかに、歌心にも溢れ、 聞き手の感覚を裏切らない、安心して聴いていられるもの。 楽器は一段鍵盤のイタリアンタイプで、まだ未塗装で木の香りも初々しい。 前半はバードやパーセルなどイギリスものを中心に、 後半はD.スカルラッティやJ.S.バッハなど、 楽器にあった選曲の由。 お客さんも大入りで、しかもNHK他のマスコミ取材も入っていて、 更には午後の集中豪雨による湿度の高さもあって、 いつも以上に熱気に満ちていた。 折々の会
登川誠仁PRESENTS「沖縄・奄美・島々のうた」 2006/05/07 ティアラこうとう [演奏] 下地勇(宮古)、朝崎郁恵(奄美)、新良幸人(八重山)、登川誠仁(沖縄)
♪ 沖縄〜奄美の錚々たる唄者を揃えたコンサート、昨年の好評を受けて今年も開催。 下地勇(唄、ギター)は、早口の宮古方言による唄で、 歌詞の意味はさっぱり分からないが、情景は伝わってくる。 太鼓(サンデー)がゲスト参加。 朝崎郁恵(唄)はピアノ伴奏で、沖縄と違って物悲しい歌が多かった。 新良の三線がゲスト参加した歌など、目頭が熱くなった。 新良幸人(唄、三線)は、ピアノと太鼓の伴奏。 今回はしっとりとした曲が多く、よく伸びる美声と、繊細極まりない三線の音を、 存分に堪能。この人の音楽性の高さを、つくづく感じた。 登川誠仁(唄、六線)は太鼓と共演。 イイカゲンなように見せていながら、実は物凄い技巧を平然と披露しいて、 これぞ真の芸人と言う感じ。 最後に全員の共演もあり、休憩なしの2時間半。 去年に比べるとトークが少なく、たっぷり唄を聴かせてもらった。 来年も是非やって欲しい所。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第72回定期演奏会 2006/04/16 東京オペラシティ コンサートホール 受難節コンサート2006 [曲]J.S.バッハ: マタイ受難曲BWV244b(初期稿) [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]G.テュルク(エヴァンゲリスト)、P.コーイ(イエス)、他
♪ BCJ恒例の聖金曜日の受難曲、今回特筆すべきは初期稿の採用。 意外にも初期稿と通常の浄書譜との差異は大きく、 特に細部において概ね旋律線が装飾的でなく、 耳慣れない音に聴いていて途惑ってしまう程。 しかし、バッハが後でどう改良したのかがよく分かる。 リュート(今村泰典)の参加も特徴で、独奏パートは勿論、 通常の通奏低音でも音の豊かさが増強され、効果絶大。 演奏は機敏で劇的で、独唱陣も含めいつもながら極上のもの。 なお解説によれば、バッハの弟子アルトニコルによる筆写と言われてきた初期稿が、 実は孫弟子のファルラウによるものだったことや、 この初期稿より以前に単一合奏群による最初期稿が想定されることなど、 愛好家にとって実に興味の尽きないところ。 ホームページ
バッハ・コレギウム・ジャパン 第71回定期演奏会 2006/02/22 東京オペラシティ コンサートホール J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズVol.45 ライプツィヒ1725年〜IV [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]野々下由香里(ソプラノ)、ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)、 ジェイムズ・ギルクリスト(テノール)、ドミニク・ヴェルナー(バス) [曲]J.S.バッハ: カンタータNr.42, 108, 6, 103
♪ BWV6のヴィオロンチェロ・ピッコロのパートで、 ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ(すなわち「肩のチェロ」)を起用。 演奏は復元製作したディミトリー・バディアロフさん自身。 ヴィオラよりも大きく厚く、チェロに比べればかなり小さい楽器を、 首にかけた紐で胸の前に楽器を支えて構える。 現物を見たのも聴いたのも勿論初めて。 音色はやや曇った感じで、鮮明さに欠ける印象だが、 独奏声部の速い音の滑らかな動きは、明らかにチェロとは全く違う響き。 こうした新しい「試み」を一般愛好家に紹介してくれることを、非常に有り難く思う。 今回は他にも、ダン・ラウリンによるソプラニーノ・リコーダーの超絶技巧など、 器楽の見せ場が盛り沢山。 ホームページ
さだまさしコンサート「とこしへ」 2006/01/26 大宮ソニックシティ 大ホール ♪ 前から2列目の中央と言う絶好の席。 バンドはいつもの最強布陣5人で、休憩を挟んだ2部構成。 曲目についてはまだここでは書けないが、最新アルバム『とこしへ』の曲を中心に、 比較的静かな選曲が多く、じっくりと聴かせるプログラムになっていた。 (しばしば大音量過ぎて耳障りな)PAの調整も、今回は割とうまく行っていた。 さださんのヴァイオリンの出番も多かったことも嬉しい。 あの「メドレー」は恐らく初では。幸せこの上ない3時間強。 ホームページ
アンサンブル鴻巣ヴィルトゥオーゾ 第9回定期演奏会 2006/01/14 クレアこうのす 大ホール [共演]鴻巣女声合唱団、 [曲]モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジークK.525、 アヴェ・ヴェルム・コルプスK.618、甲田潤(編曲):日本の四季、 チャイコフスキー:フィレンツェの思い出Op.70
♪ 合奏は弦楽のみの編成。小編成の強みを活かしてキビキビとして抑揚に富み、 大いに満足の演奏ぶり。モーツァルトは勿論、 あまり期待していなかったチャイコフスキーさえも、聴いていて燃えるよう。 一方で、共演した合唱団は、アマチュアなので仕方がないことではあるが、 演奏はやはり素人レベル。折角のモーツァルトも、 あまりに平板な演奏になってしまって、どうしても物足りない。 客席はほぼ満席の大入りで、これは地元合唱団の威力か。

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(紺野裕幸)

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