コンサート寸評 2008年

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2008
タイトル 日付 会場 データ、感想
さだまさし 35周年記念コンサート 2008/11/27 大宮ソニックシティ ♪ 今回のツアーの最大の特長は、強力なバンド布陣。 岡沢(e-bass)、松原(e-guitar)、島村(drums)、宅間(percussions)、 木村(percussions)、石川(guitar)、倉田(piano)の常連の最強メンバーに、 木管楽器2名(名前を失念)も参加。 各奏者の腕の見せ場も多く、バンドの演奏としてだけでも最高度に楽しめるもの。 演目は、グレープ時代の曲から最近のものまで揃っていた、 どちらかと言えば初期の作品が多かったのは、 長年支え続けているファンへの感謝の意であろう。 定番と言うべき曲目も含まれていて、現時点での集大成的な内容になっていた。 気になったのは舞台演出の「光」の使い方。 客席に向けて光線を照射するような使い方が多く、 直撃されると舞台を直視できないどころか目に残像が焼き付いてしまい、 凝り過ぎた演出がむしろ音楽を鑑賞する妨げに。 一方で、音響的には改善が見られ、以前は音が割れるような極端な大音量で 聞き苦しいことがよくあったが、今回は適度に抑えられていて、聴き易くてよかった。 このツアーは終盤間近と言うこともあり完成度の高いステージで、 約3時間たっぷりと歌を聞けて大いに満足。
エルヴェ・ニケ/ル・コンセール・スピリテュエル 2008/10/28 東京オペラシティ [演奏]エルヴェ・ニケ(指揮) ル・コンセール・スピリテュエル(フランス・バロック・オーケストラ) [曲]ダンドリュー: 戦争の描写、G.F.ヘンデル: 合奏協奏曲Op.6 HWV315-316より抜粋、 組曲「水上の音楽」HWV348-350、組曲「王宮の花火」HWV351
♪ 総勢約80名、しかもオーボエ18人、ファゴット+コントラファゴット10人、 ナチュラル・トランペット9人、ナチュラル・ホルン9人、ティンパニ2人、 と言うとんでもない大編成。 これによって、「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」他の音響を、 当時のあるがままのスタイルに再現した。 この演奏そのものは数年前にCDを聴いてぶっ飛ぶ程に衝撃を受けていたが、 やはり生で聴くと強烈そのもので、迫力云々を通りこして、音の塊に圧倒される感覚。 ホルンもトランペットも、指穴やハンド・ストップを用いない 当時のスタイルのままなので、自然倍音による音程のズレも強烈だが、 しかしそれが不自然に聞こえることはなく、 むしろ豪快で野性的な響きとして迫って来る。 オーボエもこれだけの人数がまとまると 今までに聴いたことのない生々しい響きになり、 ファゴットの集合音に至ってはこんな音になるとは想像の範囲を越えていた。 弦楽器群も、強力な管楽器群に負けじと、豊かな響きを放っていた。 何れにせよ、こんな響きは今まで聴いたことがなく、 明らかに新しい体験をさせてもらった感じ。 ニケは細身で長身の人で、指揮台に上がるや否や即座に演奏を始め、 全身を使った大きな身振りで曲の表情を劇的に指示していた。
折々の会 第36回サロンコンサート 「ベートーヴェン ピアノソナタ&ホルンソナタ」 2008/10/25 東松山市平野市民活動センター [演奏]江黒真弓(フォルテピアノ)、ヒルケ・ローゼマ(ナチュラルホルン) [曲]L.v.ベートーヴェン: ピアノソナタOp.31-2「テンペスト」、ホルンソナタOp.17、他
♪ 事前に、実演を交えた楽器の解説あり。 ナチュラルホルンは、ただ管を巻いただけのもので、 吹き方とラッパの出口に手を差し込む度合いによって音程を変える。 音程によって、牧歌的だったり炸裂音っぽかったり、音色が全然違うのが面白い。 フォルテピアノは、横田ハープシコード工房の製作による、お馴染みの楽器。 前半は、F.クーラウおよびF.ダンツィの短い曲と、 耳なじみの唱歌のホルンによる演奏。 唱歌は曲によってはやや無理な感じがあり、お蔭でこの楽器の特性がよく分かった。 後半はベートーヴェンを2曲。「テンペスト」は劇的で見事な演奏で、 強弱緩急の極端な変化はライヴならでは、かつ時代楽器ならでははのもの。 ホルンソナタは、この楽器のために書かれたものだけあって、 朗々とした所も速い動きの所もあり、フォルテピアノとの掛け合いも含めて さすがによい曲。 何れにせよ、当時の楽器と演奏スタイルだからこそ万全に表現できる音楽。 折々の会江黒真弓
東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ 演奏会vol.4 2008/10/04 東京芸術劇場 大ホール [指揮]有田正広 [独奏]寺神戸亮(ヴァイオリン)、フランソワ・フェルナンデス(ヴィオラ) [曲]W.A.モーツァルト: セレナータK.250、協奏交響曲K.364、交響曲第41番「ジュピター」
♪ フラウト・トラヴェルソ奏者の有田正広が主宰する古楽器オーケストラ。 メンバーは30人程度で、バッハ・コレギウム・ジャパンで見慣れた人も多いものの、 全体的に若手中心。管楽器がやや不安定な箇所もありましたが、 それでも演奏レベルはかなり高い。 ただ、この編成にしては、この大ホールはやや広すぎる気はした。 演奏は、調和の取れた響きが美しく、全体に快適な速度で勢いがあり、 これらは時代楽器のオーケストラでなければ味わえないもの。 特に協奏交響曲の第2楽章の哀切の響きや、 交響曲第41番の第4楽章の一気呵成に畳み掛けるようなコーダには、 否応なしに目が潤んでしまった程。 しばらく前までモーツァルトが苦手だった私にとって、 どの曲も生で聴くのは初めてだったが、本当に心が沸き立つような喜びを感じた。
プレステージ フラメンコ・ライブ 2008/09/27 レンタルスタジオ プレステージ [ギター]金田豊、片桐勝彦 [歌]石塚隆充、阿部真 [踊り]AMI、松丸百合、伊集院史朗
♪ フラメンコのライヴを初鑑賞。私には何もかもが新鮮で、非常に面白かった。 会場は、客席が百にも満たない、しかも客席とステージが密着した、小さな空間。 響きの点では絶好とは思えなかったものの、至近距離で(時にはPAなしで) 生々しい音を聴けるのが大いに魅力。 基本的に、曲毎に踊り手が一人ずつステージに登場し、ギターと歌を伴奏に、 熱っぽい舞踊を披露する。 踊り手が足で床を踏み鳴らす(更には手拍子や口で鳴らす)音が、 事実上の打楽器パートを兼ねている。 しかも、単にリズムを刻むだけでなく、強弱やcresc.さえも巧みに表現。 更に、激しく足を打ち鳴らしている場面であっても、 それとは独立して上半身ではキリリとした所作を決めているのが、 とにかくカッコイイ。 この踊りが、生演奏と相互作用しながら緩急自在に展開するのだから、 面白くない訳がなく、音楽の様式が全然分からないどころか知っている 曲さえ皆無の私でも、全く退屈することなくステージ上のパフォーマンスに 引き付けられ続けていた。 どんなにステージ上が熱くなっても客席は手拍子などせずに冷静に聴いていることや、 舞台上で交わされる挙手の挨拶など、この分野独特の習慣も興味深いもの。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第82回定期演奏会 2008/09/23 東京オペラシティ J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズVol.53 ライプツィヒ1726年のカンタータ2 [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]レイチェル・ニコルズ(ソプラノ)、ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)、ゲルト・テュルク(テノール)、ペーター・コーイ(バス) [曲]J.S.バッハ: カンタータNr.43, 88, 146
♪ 今回は、やや規模の大きなカンタータが3曲で、 通常のカンタータ楽章とやや趣の異なる曲がいくつも含まれていた。 例えばBWV146の第1〜2曲はチェンバロ協奏曲BWV1052の音楽を転用した 事実上のオルガン協奏曲で、耳慣れた音楽が拡大された響きは新鮮。 また、第7曲のテノールとバスの二重唱や、 BWV43の第7曲の通奏低音とトランペット独奏も、珍しい組み合わせのような気がする。 全体に、トランペットやコルノ、トラヴェルソ、オーボエやターユなど管楽器系の 聴かせ所が多く用意されていた。 独唱陣はまさに最強メンバーで、特に敬愛するテュルクの語りかけるような歌は、 やはり至高のもの。 ここ最近調子が悪かったブレイズも、今回は好調を取り戻していた。 なお、会場で、本拠地である神戸松蔭女子大学チャペルとBCJの歩みについての 小冊子が配布された。いつか私も、この「天から降り注ぐごとく美しい響き」 の空間に身を置いてみたい。
琉球フェスティバル'08 2008/09/21 日比谷野外音楽堂 (出演)大工哲弘、金城実&山里ユキ、坪山豊、パーシャクラブ、平安隆、 桑江知子、下地勇、よなは徹、池田卓 (司会)ガレッジセール
♪ 恒例の沖縄音楽イベント、私はこれで3年連続の来場。 今年はほぼ雨が降り通しで、時には土砂降り状態、しかしそれでも大いに盛り上がった。 司会は、ガレッジセールの二人と、TV朝日の女性アナウンサー。 ガレッジセールは、最前列の観客から振舞われたビールや泡盛でかなり酔っていたが、 それでもきちんと進行を仕切っていたのはさすが。 池田卓(西表島)は、ギターとキーボードと共演。新曲を含むオリジナル曲を熱演。 桑江知子(沖縄)は、ギターとヴァイオリンと共演。新曲を含むポップス系。晴れ女を自称していたが、確かに結局雨が止んでいたのは彼女の間だけだった。 平安隆(沖縄)は、パーカッションと共演で、超絶技巧によるセッションも見もの。予定では4曲の筈が、乗った勢いで6曲も演奏してしまった。 下地勇(宮古島)は、ギター1本での弾き語り。この頃は物凄い雨だったが、それを打ち負かすような凄い熱演。 よなは徹(沖縄)は、コーラスを含むバンド構成。歌声は端正だが、音楽はゴージャスで、観客も大興奮。 金城実&山里ユキ(沖縄)は、太鼓と笛が共演。沖縄の原風景を思わせる正統派の沖縄民謡を淡々と。 坪山豊(奄美大島)は、お弟子さんと太鼓が共演。奄美三線の固い響きと軽やかな奏法も、裏声との間を自在に行き来する唄い方も、存分に堪能。 パーシャクラブ(石垣島)は、例によって最初から観客総立ちで、大雨とは無関係に会場は熱狂状態。 大工哲弘(石垣島)は、大工苗子さんの琉琴と、太鼓と笛が共演。真っ当な八重山民謡でこれだけ観客を引き付けてしまう力量はさすが。 最後に新良幸人を呼び込んで大いに盛り上げ、そのまま出演者全員を巻き込んで、最後のお祭りモードに突入。 こうして盛り沢山の4時間弱、長時間の大雨を雨合羽くらいでは防ぎようもなく、 結局は頭から足先までずぶ濡れになってしまったが、 それを差し引いてもあまりにも楽しいイベントであった。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第81回定期演奏会 2008/07/30 東京オペラシティ J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズVol.52 ライプツィヒ1725年のカンタータ8 [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]ハナ・ブラシコヴァ(ソプラノ)、ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)、ゲルト・テュルク(テノール)、ペーター・コーイ(バス) [曲]J.S.バッハ: カンタータNr.151, 57, 158, 110
♪ いつも通りオープニングは今井奈緒子のオルガン (コラールBWV609、前奏曲とフーガBWV550)で、コラールにはソプラノ二人が随唱。 メインは、1725年のクリスマスシーズンに作曲・演奏されたカンタータ3曲 (BWV110, 57, 151)と、短いカンタータBWV158の計4曲。 ブラシコヴァは確か2度目で、合奏体と溶け合うような非常に魅力的な声。 前回登場時にはちょっと不調だったブレイズは、今回はまずます。 コーイはいつもながら風格と安定感そのもの。 そして、敬愛するテュルクの語りかけるような歌はやはり最高。 今回のカンタータでは、ソプラノとバスの聴かせどころが多いことと、 トラヴェルソやヴァイオリンのオブリガートを伴うアリアが多いことが印象的。 BWV110の第1曲は、管弦楽組曲第4番BWV1069の序曲のパロディで、 トランペット3本とティンパニを伴う盛大な曲。 一方でBWV158は小さな曲で、器楽・声楽ともに各パート1人の最小編成で演奏された。 しみじみと泣かせるアリアがある一方で、歓喜溢れる盛大な序曲もあり、 何と満ち足りた気分にさせてくれることだろう。
琉球島唄巡りコンサート 2008/07/19 所沢市民文化センター ミューズ マーキーホール [出演]知名定男(沖縄)、仲宗根豊・下地勇(宮古)、宮良康正・大島保克・池田卓・鳩間可奈子・サンデー(八重山)、藤木勇人(司会)
♪ 沖縄、宮古、八重山、それぞれの方面から豪華に実力派歌手を集めた、 ジョイント・コンサート。 それぞれの歌手が3曲ずつの出番。 宮良康正は与那国島ご出身の大御所。風格と余裕の感じられる民謡を聞かせてくれた。 鳩間可奈子を生で聞くのは久し振り。張りのある声は、沖縄民謡のために生まれてきたような、まさに天性のもの。 下地勇は、先々月のソロコンサート以来。サラリーマン時代に近くの入間にお住まいだったとか。叙情系の大好きな3曲に泣かされた。 仲宗根豊は、気さくな感じの人。宮古民謡はあまり聞いたことがなかったが、実はよい曲があるものと認識。 池田卓は約1年振り。いかにも好青年で相変わらず好感度大。民謡とオリジナルのどちらもよい。 大島保克も約1年振り。代表曲と言うべきオリジナルを披露。この人の声の、特に高音域はやはり格別。 知名定男は、一見怖そうな顔ですが、実はお茶目な人かも。自由自在に唄も三線もこなしていた。三線の超絶技巧には、師・登川誠仁の面影も見た。 藤木勇人のゆんたくも楽しく、更には太鼓のサンデーの談話を聞けたのも貴重。 最後に全員が出演して、宮古・八重山・沖縄の民謡によるエイサー時間となり、 客席も巻き込んで大いに盛り上がった。
東京ハルモニア室内オーケストラ 2008/07/05 熊谷市立文化センター [曲]ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」より春Op.8-1・夏Op.8-2、 J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV1043、 エルガー:弦楽セレナーデOp.20、モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジークK.525、他
♪ 地元の有志の企画による、モダン楽器の弦楽合奏団のコンサートに、 協賛の横田ハープシコード工房さんからご招待を頂いた。 前半がバロック、後半がその他の、人気曲からなるプログラム。 個人的には、やはりバロックとモーツァルトが楽しめた一方で、 チャイコフスキーやエルガーは内容の薄い音楽に思えた。 やはり私は19世紀の音楽が苦手。 合奏団の演奏水準はかなり高く、非常に安定した、安心して聴いていられるもの。 指揮者なしでもアンサンブルが乱れることはなく、 しかも演奏にはかなりの気迫がこもっていた。 但し、古楽演奏に染まりすぎた私の耳は、時代様式を考慮しない演奏スタイルに 絶えず違和感を感じてしまい、どうも素直に楽しめなかった。
バッハ・コレギウム・ジャパン J.S.バッハ「ブランデンブルク協奏曲」全曲演奏会 2008/06/14 彩の国さいたま芸術劇場 [音楽監督]鈴木雅明 [曲]J.S.バッハ: ブランデンブルク協奏曲BWV1046-51(全曲)
♪ まず音楽監督の鈴木雅明さんによる解説があり、今回の試みのポイントは二点。 第一に、ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ(肩掛けチェロ)を計4曲で採用すること (当時このような楽器があったことは時代資料からも分かる、この曲ではチェロが通奏低音と別に記譜されている、等)。 第二に、第3番の第2楽章に、3台のチェンバロ協奏曲BWV1064の緩徐楽章を転用したこと (この曲は3種類の楽器が各3台ずつ使われることから、他に3つの部分から構成された バッハ作品を探し、この曲が合理的に収まった旨)。 鈴木さんは、専門的な話を分かり易く噛み砕いて説明してくれて、 ますます期待が膨らんでしまった訳だが、実際の演奏は、 この過剰の期待をも遥かに上回る、極めて面白いものだった。 ヴィオロンチェロ・ダ・スパラについては、視覚的にも新鮮で、 特に第3番で横並びになった3×3台の楽器は、見ているだけで嬉しくなってしまう。 この楽器による低音は、時々やや弱く感じられたが、 チェロで聴き慣れているからそう思うだけで、これが本来のバランスなのだろう。 第3番の第2楽章の編曲は、各チェンバロのパートが3種類の楽器に割り振られ、 それにより掛け合いの効果が生まれて、原曲以上に面白い曲になっていた。 第2番での、島田俊雄さんのトランペットは、前回(2000年)の時の丸い形状 (ライヒェ肖像画タイプ)と違って、今回は長い形のもの。 前回の強烈な視覚的インパクトは薄れたが、演奏そのものは前回よりも安定していた。 どの曲も、つい身を乗り出してしまう程の躍動感に溢れた演奏で、愉悦の極み。
アンドルー・マンゼ&リチャード・エガー 2008/06/11 トッパンホール [出演] アンドルー・マンゼ(バロック・ヴァイオリン)、 リチャード・エガー(チェンバロ) [曲] J.S.バッハ: ソナタA BWV1015、コレッリ: ソナタd Op.5-7、 ビーバー: ロザリオのソナタNo.1、ソナタNo.3 F、他
♪ 現代のイギリス古楽界をリードする二人のデュオ・リサイタル、この日はバロック・プログラム。 いつもなら生真面目な曲調に思えるコレッリが、この二人の手に掛かると、 遊び心さえ伺えるような鮮烈な音楽になっていて、ちょっと驚き。 また、名前さえ初めて聞いたパンドルフィ・メアリなる作曲家のソナタが、 緩急強弱が急変する、まさに当時の前衛を感じさせるような音楽で、予想外の収穫。 マンゼのヴァイオリンは、CDで聴くと硬質の音色の印象だったが、 生で聴いてみる潤いのある豊かな響き。 エガーは、1995年にロンドン・バロックの一員としての来日時に聴いて以来 好きな奏者だが、今回も絶えずマンゼの方に顔を向けながら、 何とも楽しそうに弾いていた。 アンコールには、ヘンデルやJ.S.バッハのソナタを披露。この上ない至福の一夜。
折々の会 第35回サロンコンサート「空飛ぶ笛」 2008/05/31 東松山市平野市民活動センター [出演] 江崎浩司(オーボエ、リコーダー)、長久真実子(チェンバロ)
♪ 横田ハープシコード工房主宰によるサロンコンサート「折々の会」、 今回はマルチ木管楽器奏者の江崎浩司のリサイタル。 自由自在に編曲された古今東西の名曲が、各種のリコーダーとオーボエを駆使して 縦横無尽に演奏された。江崎のステージの運びは、 師匠つのだたかしの芸風を受け継いだ、トークも音楽も大変に面白いもの。 勿論、その裏付けとして、演奏者の高度な音楽性がある。 江崎は、初めて見るような超絶技巧や裏技奏法を連発し、 長久も、バロック調からジャズ調まであらゆるスタイルの音楽を 違和感なくチェンバロに乗せていた。 ただ、あまりにもready-madeな演奏会で、 手作りにこだわる「折々の会」の理念からは外れていた気がした。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第80回定期演奏会 2008/05/30 東京オペラシティ バッハからメンデルスゾーンへ 〜受け継がれる祈りの音楽〜 [音楽監督]鈴木雅明 [曲]J.S.バッハ: カンタータNr.106(メンデルスゾーン編曲版)、F.メンデルスゾーン・バルトルディ: プレリュードとフーガd Op.73-3、コラールカンタータ2曲、詩篇2曲
♪ メンデルスゾーンの音楽を中心とした企画。 まず驚いたのが合奏団の規模。いつもに比べて、管弦楽も合唱団も ほぼ倍ほどの人数が並び、更には普段は見ないクラリネットも加わっていて、 遠目にみたらBCJには見えない。 音自体も、人数の多さのせいか、楽器のせいか、奏法のせいか、 バロック的な響きとはかなり違った音が聴こえてきた。 興味深かったのは、哀悼行事BWV106のメンデルスゾーンによる蘇演稿による演奏。 リコーダーがフルートで、ヴィオラ・ダ・ガンバがヴィオラで、 それぞれ置き換えられ、原曲の素朴な美しさが失われた半面、 ある種の格調高さが醸し出されていた。 何れにせよ、これは原曲とは別の曲と言ってよい。 他はメンデルスゾーン自身による宗教声楽曲で、どれも比較的小規模な作品。 バロックに馴れた私の耳には、これらはかなり異質な音楽に聴こえ、 正直あまり面白いものではなかったが、 このような貴重な試みに立ち合わせてもらえたこと自体が嬉しいこと。
第23回まさしんぐWORLDカーニバル 2008/05/19 東京厚生年金会館 ♪ さだまさしファンクラブ会員向けの恒例コンサート、この日がツアー初日。 前半はいつも通り、佐田玲子さんとチキンガーリックステーキのステージ。 チキガリは、今回ここで初の試みとして、さだバンドと共演。クールな演出も含めて、 実に格好よかった。 そして最後には、マイクなしでの生声でのハーモニーも聞かせてくれた。 後半は、まず日替わりゲストを迎えての対談。この日は何とコロッケさんがご来場。 物真似のコツや自己分析など、しっかり観客の笑いも取りながら、 しかもこの人の真面目な人柄が伝わって来て、私にとって好感度は急上昇。 最後はいよいよ、さださんのステージ。しかしこのコンサートではやはり、 普通のことはしない。1978年、すなわち丁度30年前のコンサートでやっていた 曲目だけで構成されていた。私はリアルタイムで当時を知っている訳ではないが、 まさに懐かしい名曲のオンパレードに、オールドファンの驚喜が場内に満ちていた。 30年も前の曲であっても古くささが感じられず、むしろアレンジの違いのせいもあって 新鮮でさえあった。そして、30年前から今に至るまで、 さださんの歌の芯が変わっていないことも確認できた。 バンドのメンバーはいつも通り、倉田、石川、宅間、木村、松原、岡沢の、 まさしく最強メンバー。これ以上何を望むことがあろう。 改めて、さださんに今後もずっと付いて行こうとの思いを新たにした一夜。
下地勇 LIVE Tour 2008「3% BAND GO WEST」in Tokyo 2008/05/10 草月ホール ♪ 宮古島方言シンガーソングライター・下地勇さんのライヴ。 ジョイント系コンサートでは何度も聴いている下地さんだが、 ソロのライヴは私には初めて。 最新アルバム「3%」の収録曲を中心に、以前のアルバムの曲も交えて、 実に沢山の歌を歌ってくれた。 メッセージ性の強い曲あり、ノリノリ系の曲あり、叙情的な曲あり、 この持ち幅の広さが下地さんの魅力でもある。 共演の「3% BAND」は、儀保ノーリー(Percussion)、上地gachapin一也(Bass)、當間嗣篤(Drums)、川満睦(Keyboards)、以上の強力布陣。 ノーリーさんは太鼓を持って客席を巡ったり、 川満さんはエレキギターまで弾いてしまったり、驚喜の連続。 下地さんは今回も、手拍子やコーラスを促して、観客を演奏に巻き込んでいた。 この、ステージと客席との一体感がたまらまい。 歌詞は(一部を除いて)宮古方言で、今回はあまり解説がなかったので、 曲の持つ情感は伝わって来るものの、 曲を既知でない人には意味が分かりづかったかも知れない。 広すぎない会場での親密な雰囲気が非常によろしく、休憩なしの2時間45分が、 本当にあっと言う間に過ぎてしまった。
バッハ・コレギウム・ジャパン/マタイ受難曲 2008/03/20 彩の国さいたま芸術劇場 [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]ヤン・コボウ(エヴァンゲリスト)、 マルクス・フライク(イエス)、ハナ・ブラシコヴァ(ソプラノ)、 ダミアン・ギヨン(アルト)、ドミニク・ヴェルナー(バス) [曲]J.S.バッハ: マタイ受難曲 BWV244
♪ BCJによる、恒例の聖金曜日(付近)の受難曲公演、 演奏はいつもながら快速かつ劇的なものだったが、今回は、 まるで事件を見てきた興奮をそのまま伝えるように語るヤン・コボウ の歌のためもあって、今まで以上に劇的な印象。 初登場のバスのマルクス・フライクは、やや線が細めの声だが、 端正かつ知的なイエス像を表していた。同じく初登場組では、 ソプラノのハナ・ブラシコヴァは淀みないよく通る声で抜群の安定感。 カウンターテナーのダミアン・ギヨンは温かみのある声で、 しっとりとErbarme dichを歌ってくれた。 常連の中では、バスのドミニク・ヴェルナーの堂々たる歌はやはりよかった。 器楽はいつもながらハイレベル集団で、時にキビキビと、時に叙情的に、 鈴木雅明の要求する曲の表情を完全に表現していた。 通常よりも装飾音を長めに取っていのは、バッハの晩年の様式に合わせたのか。
オキナワノウタコンサート'08「八重山の風」 2008/03/07 杉並公会堂大ホール [出演] 夏川りみ(唄)、新良幸人(三線、唄)、金城弘美(囃子)、知名勝(ギター)、 真境名陽一(ベース)、サンデー(太鼓)、よなは徹(笛、三線、囃子)
♪ アコースティック・パーシャ×夏川りみ、八重山系歌手の共演。 新良幸人は、例によって気の利いたトークも交えながら、八重山民謡を中心に歌った。 曲目は既出のCDに含まれるものが大半だが、新良幸人の懐の深さを感じさせる 歌声にはいつもながら心底うっとりで、 しかもアコースティック・パーシャの寄り添うように穏やかな伴奏が実に心地よい。 一方、共演の夏川りみも、さすがに見事なもの。今回はポップス色を極力廃し、 沖縄系歌手のイメージで通していて、このスタイルは彼女としては新境地ではないか。 勿論、定番曲は一通り歌ったが、八重山民謡も何曲か披露され、 この編成のためのアレンジのせいもあり、しっとりと聞かせてくれた。 この歌手の実力をつくづく思い知らされた感じ。 ゲストのサンデーは例によって居るのが当たり前のような存在感で、 よなは徹は笛に三線に囃子と例によって縦横無尽の活躍ぶり。 休憩なしの2時間が、本当にあっという間。
アストル・ピアソラ没後15年記念:幻のオラトリオ《若き民衆》日本初演 2008/02/29 東京オペラシティ [演奏] 小松亮太(バンドネオン)、北村聡(バンドネオン)、 喜多直毅(ヴァイオリン)、 カティエ・ビケイラ(女声)、パブロ・シンヘル(ナレーター)、 齊藤一郎(指揮)、特別編成オーケストラ/合唱 [曲] アストル・ピアソラ:プンタ・デル・エステ組曲、オラトリオ《若き民衆》、 小松亮太: バンドネオン、ヴァイオリン、弦楽器のための2楽章、
♪ アストル・ピアソラ没後15年(2007年)記念として、 バンドネオン奏者の小松亮太を中心に企画された演奏会。 ピアソラ「プンタ・デル・エステ組曲」は、鮮明な音で生で聴けただけでも 身震いしてしまうほどの感動。 バンドネオン独奏の北村聡を含めて、力強い演奏でよかった。 小松亮太の新作は、今回のための委嘱作品の初演。流麗な感じの明快で美しい音楽で、 特に1楽章では変拍子もある意欲的な作品。 もう少し力強さが欲しい気もしたが、今後の作品制作にも期待できそうす。 ピアソラ「オラトリオ《若き民衆》」は、今回が日本初演。 冷静さを失った狂気のようなものが曲の随所に噴出し、時には重々しい律動も見られ、 ピアソラの押しの強さが遺憾なく発揮されていた。 女声歌手のビケイラは、強弱硬軟を自在に操った実に素晴らしい絶唱。 アンコールには、シンヘルのピアノとビケイラの歌で「ロコへのバラード」を披露。 もう完全に感涙モノ。 指揮者の齊藤一郎の颯爽とした統率ぶりも印象深い。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第79回定期演奏会 2008/02/11 東京オペラシティ J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズVol.51 ライプツィヒ1726年のカンタータ1 [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]レイチェル・ニコルズ(ソプラノ)、ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)、ゲルト・テュルク(テノール)、ペーター・コーイ(バス) [曲]J.S.バッハ: カンタータNr.16, 13, 32, 72
♪ オープニングのオルガン独奏は、若き日のバッハが大いに影響を受けた ブクステフーデのプレルーディウムと、バッハのコラールBWV657。 特にブクステフーデの目まぐるしく変わる曲調には、 バッハの若い頃のオルガン作品との類似性を感じた。 メインのカンタータ4曲は有名曲ではないが、 内容的には充実したもので、トラヴェルソ2本、オーボエ2本、 トランペット3本とティンパニ、コルノ2本と、 多様な管楽器の聴かせどころも揃っている。 独唱陣では、いつもながらブレイズが実によく、 特に野々下との二重唱など何度でもリピートして欲しいと思う程。
バッハ家の音楽会 2008/01/26 玉村町文化センター [演奏]鈴木雅明(チェンバロ)、前田りり子(フラウト・トラヴェルソ)、戸田薫(バロック・ヴァイオリン)、山本徹(バロック・チェロ) [曲]J.S.バッハ: トッカータc BWV911、無伴奏フルート・パルティータd BWV1013、 ヴァイオリン・ソナタe BWV1023、無伴奏チェロ組曲c BWV1011、 音楽の捧げものBWV1079よりトリオ・ソナタc
♪ バッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーによる、バッハの室内楽の演奏会。 各メンバーのソロ曲(無伴奏曲を含む)が順次演奏された後に、「音楽の捧げもの」のトリオソナタで締め括られるプログラム。 何よりも嬉しいのは、鈴木雅明さんのお話が付いていたこと。それぞれの曲の前に、曲の解説を交えながら、初心者から通までを満足させるような絶妙なレベルで、実に興味深い話を聞かせてくれた。 演奏はどれもよかったが、特に山本徹さんの無伴奏チェロ組曲第5番(残念ながら抜粋)は極上。『音楽の捧げもの』のトリオ・ソナタも、緊張感のある密度の濃い演奏だった。 こうしてバッハの音楽は、何と満ち足りた、充たされた感じを与えてくれることか。その音楽を、こんなによい演奏で生で聴けるとは、何と幸せなことか。
さだまさしコンサート 2008/01/16 大宮ソニックシティ コンサートツアー「Mist」
♪ 新春恒例の大宮ソニックシティ公演、これが今回のコンサートツアーの初日だった模様。まだ進行中のツアーなので詳しいことを書く訳にはいかないが、最新アルバム『Mist』からの曲を中心に、懐かしい曲も多数織り込まれていた。 今回のバンドには、エレキギターの松原正樹さん、パーカッションのキムチこと木村誠さんが参加している。そのためもあって、各メンバーの演奏の見せ所がしっかり用意されているのが嬉しい。相変わらずさだバンドは実に強力な布陣である。 休憩なし1部構成の3時間が、例によってあっと言う間に過ぎてしまった。

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(紺野裕幸)

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