コンサート寸評 2009年

prev2008年←  index索引  →next2010年


2009
タイトル 日付 会場 データ、感想
ピエール・アンタイ チェンバロ・リサイタル 2009/11/30 武蔵野市民文化会館 小ホール [曲]バード、フローベルガー、L.クープラン、F.クープラン、スカルラッティ、J.S.バッハの作品
♪ フランスのクラヴサン奏者、ピエール・アンタイのソロ・リサイタル。 イギリス、イタリア、フランス、スペイン、ドイツなど、 チェンバロ音楽の全貌を網羅するようなプログラム。 当初予定から当日までに曲目変更があり、 しかも本番になって、第1部の冒頭にフレスコバルディ他の曲目追加があり、 第2部にもバッハのの曲目追加がありと、結構気ままに演奏する人らしい。 アンタイは、席に着くや否や、即座に演奏を始める。 演奏はどこか求心的で、良く言えば豪快な、悪く言えば勢い任せ気味の印象あり。 しかし、聞き手の集中力を一切削ぐことはなく、最後まで通してしまう力量はさすが。 アンコールにも3回も応じ(但し元々のプログラム曲の再演)、たっぷり2時間半も楽しませてもらった。
Georg Philipp Telemann III/パリ四重奏曲 2009/11/23 近江楽堂 [出演]菅きよみ(flauto traverso)、ディミトリー・バディアロフ(violin)、 福沢宏(viola da gamba)、竹澤秀平(viola da gamba, violoncello)、 福間彩(cembalo)
♪ テレマンの傑作・パリ四重奏曲の演奏会。 「6つの四重奏曲」(1730)から4曲と、「新しい四重奏曲」(1738)から2曲を演奏。 何と言うか、世にも美しい音楽であった。 テレマンの自信作だけあって、バロック(ロココ)室内楽の優美の極みと言う感じ。 特に、最後に演奏された新しい四重奏曲第6番には、何か崇高ささえ漂っていて、 演奏が終わった後、拍手をするのも忘れて暫し呆然としてしまった程。 この時この空間を満たしていた特別な空気感は、忘れ難いものになりそう。 福沢さんと竹澤さんは、ガンバと通奏低音のパートを交替で担当。 ガンバの見せ場が比較的多い曲で、 両人の実に溌剌とした素晴らしい弓さばき・指さばきには、 当時パリで初演した「フォルクレ氏(息子の方)」のイメージが思い浮かぶよう。
マルク・ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊 2009/11/05 東京オペラシティ [曲]ラモー(ミンコフスキ編):もう一つの空想のシンフォニー、 モーツァルト:セレナード第9番 K.320《ポストホルン》、行進曲 K.335/1(K.320a/1)
♪ ミンコフスキ率いるルーヴル宮音楽隊の初来日公演。 開演時に、ミンコフスキご本人が登場して、挨拶と共に、 プログラムの前半・後半を入れ替える旨を伝えた。 前半は、ラモーの舞台作品から管弦楽曲15曲を抜粋したもの。 ラモーらしい高密度かつ変化に富んだ曲が並び、 寄せ集めとは思えない面白さがあった。 後半は、モーツァルトの「ポストホルン」。 表題通り郵便馬車のラッパを模した旋律が出るが、 その箇所になって、郵便配達夫の帽子を被った金管楽器奏者が、 赤い自転車に乗って舞台袖から出て来たのにはびっくり。 しかも、バルブのないポストホルンを実際に演奏している。 粋な演出に、客席も大いに沸いた。 ミンコフスキはどちらかと言えば小柄で太めの人で、溌剌とした指揮振り。 にこやかな表情で、客席に向けて何度か曲の説明(?)を行ったのが印象的。 ルーヴル宮音楽隊は、50人を越える(古楽としては)大編成で、 特に勢いのある曲での豪快な疾走感がたまらない。
折々の会 第38回サロンコンサート「カプリッチョ⇒気分のままに」 2009/10/24 東松山市平野市民活動センター [演奏]寺村朋子(チェンバロ、オッタヴィーノ、アンデス、歌)、飯塚直子(各種リコーダー、古楽パーカッション、歌、語り)
♪ 「カプリッチョ」をテーマに、 中世から20世紀までの音楽を「気分のままに」演奏する企画。 前半はチェンバロ独奏を中心に、バロックのカプリッチョ。 G.フレスコバルディの3種類のカプリッチョは、演奏者の解説の通り、 同じ作曲家の同類の曲にしては全く異なるタイプの曲。 また、J.S.バッハのBWV992では、場面の語りによって、情景が目に浮かぶよう。 個人的に大収穫だったのは、J.J.フックスのカプリッチョとフーガで、 バッハのような密度の濃い、極めて美しい音楽であった。 後半は、チェンバロにリコーダーや打楽器が自由自在に絡み合いながら、 中世からバルトークまで各種の音楽が演じられた。 大小さまざまなリコーダーも、鍋からおもちゃまで何でもありの打楽器も まさに縦横無尽の展開で、チェンバロの音楽としては 今までに聴いたことのない愉悦感に満ちていた。 最後のバルトーク「子供のために」「ルーマニア民族舞曲」では、 鍵盤としてオッタヴィーノやアンデス(リコーダー鍵盤)も登場し、 曲毎に大いに趣向を変えた編成で、実に楽しかった。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第86回定期演奏会 2009/10/16 東京オペラシティ J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズVol.54 ライプツィヒ1726年のカンタータ4 [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]ハナ・ブラシコヴァ(ソプラノ)、ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)、ゲルト・テュルク(テノール)、ペーター・コーイ(バス) [曲]J.S.バッハ: カンタータNr.45,17,102,19
♪ 半年振りの通常カンタータ公演。 BWV102については資料(手稿譜)的に問題点が多いそうで、 その詳細がプログラム冊子で論じられ、極めて興味深いもの。 こうした音楽学の最先端に触れさせてもらえるのも、BCJの魅力。 特にテノールのアリアのオブリガート楽器は、トラヴェルソか ピッコロ・ヴァイオリンか不確定とのことで、今回の演奏では後者が用いられていた。 トランペット3本とティンパニを伴う堂々たる曲もあれば、 トラヴェルソやオーボエのオブリガートが泣かせる曲もあり。 独唱は常連組で、 ブラシコヴァは抑揚が大き過ぎて歌詞が聞き取りづらい所もあったが、 皆が概ね絶好調。勿論、合唱団も管弦楽もいつも通り極上の出来。
普天間かおり&下地勇 スペシャル・イベント 2009/10/13 山野楽器銀座本店 イベントスペースJamSpot [出演]下地勇、普天間かおり、紺野紗衣(ピアノ)
♪ 沖縄系シンガーソングライター二人のミニ・コンサートの入場券を、 下地さんの新CDを購入して獲得。 まず下地勇さんが登場。ギター一本の弾き語りで、 新アルバム『民衆の躍動』の収録曲を中心に歌った。 特に表題曲である「民衆の躍動」は、CDと全く違うアレンジで、非常に新鮮。 曲も、お姿も、本当にカッコイイ。 次に普天間かおりさん(とピアノ伴奏の紺野紗衣さん)が登場。 アルバム『Precious』の収録曲や、新曲「ハレルヤ」などを歌った。 力強い歌声で、まさに絶唱と言う感じ。 曲間のお話にも、穏やかな人柄が滲み出ている。 最後に、全員が一緒に登場して、英語の歌(私は知らないが有名曲らしい)を歌った。 両人はデビュー頃の合同キャンペーンで一緒に行動していたこともあり、 元々仲がよいそうで、話も弾んでいた。 更に握手会が開催され、私もしっかり両人と握手をしてもらった。
琉球フェスティバル2009 2009/09/20 日比谷野外大音楽堂 [出演(登場順)]ガレッジセール(司会)、大工哲弘(&大工苗子)、 我如古より子&吉川忠英、かりゆし58、よなは徹(&バンド)、 古謝美佐子&佐原一哉、パーシャクラブ、登川誠仁(&仲宗根創)
♪ 恒例の沖縄音楽イヴェント、私はこれで4度目の参加。 去年は土砂降りの大雨に見舞われたので気を揉んでいたが、今年はあっぱれ快晴。 ガレッジセールは、去年に引き続き司会を担当。 例によって客席からの泡盛の差し入れ攻撃に遭い、 最後にはついに川田さんはダウンしてしまったが、 それでも全体進行を恙無くこなしていたところに、プロ根性を感じた。 大工夫妻は、意外にもトップに登場。 古典とオリジナル曲で、最初からかなり盛り上げていた。 この人の音楽の力みのなさは得難いものです。 我如古&吉川を生で聴くのは初めて。 我如古さんの滑らかな美しい声に、吉川さんのギターと歌が絶妙に絡む。 かりゆし58は、見た目には近付き難い印象ながら、 力強く真剣なメッセージを込めた歌とトークには、不覚にも目頭が熱くなった。 よなは徹は、髪型を変えて着帽で登場。 バンド編成の賑やかな曲もあれば、一転して民謡もあり、 他の演奏者への共演も含めてとにかく多才な人。 最後に客席に三線を放り投げたのには、一同唖然。 古謝&佐原は、オリジナル曲で。 古謝さんの、場を包み込むような存在感と、圧倒的な声の力はさすが。 夫妻の何とも暢気なトークもよい。 パーシャクラブは、最初から最高潮の盛り上がり。 この素晴らしいバンドがいなければ、もはや琉フェスとは言えない気さえする。 登川誠仁は、愛弟子の仲宗根創さんを従えて登場。 相変わらず思い付くまま気ままに歌っている感じ。 仲宗根さんの師匠そっくりの感じが面白い。 最後は、何人かの登場者が組み合わせて出てきて歌った後、 全員総出で盛大にカチャーシーモードに突入。物凄い充実感のある一夜。
原田勇雅 バリトン名曲選 2009/09/13 花和楽の湯 [出演]原田勇雅さん(バリトン)、小山里巴(ピアノ)
♪ 埼玉・小川町の温泉施設「花和楽の湯」内のカフェで時々に行われている ミニ・コンサート「湯上りクラシック」。 日本歌曲(瀧廉太郎、山田耕作、他)から始めて、 何曲かピアノの独奏曲(ショパン、マスカーに)を挟んで、 最後にはオペラの曲(モーツァルト、ヴェルディ)まで、盛り沢山のメニュー。 原田さんは、安定した技量で、しかも発音がはっきりしていて聞き取り易く、 よい歌手だと思った。 小山さんも、備え付けの決して上等とは思えない 弾きづらそうなアップライトピアノから、見事な音楽を引き出していた。 1時間足らずの短い時間でしたが、何だか大いに得をした気分。 実は原田さんは私の高校の後輩でもある。
村松健ふらっとライヴvol.6「My spiritual HEART」 2009/09/13 熊谷文化創造館さくらめいと・月のホール [出演]村松健(ピアノ、三線、笛) [ゲスト]折笠満(チェロ)&折笠美知子(ヴァイオリン)、安藤浩司(コントラバス、ウクレレ)
♪ 村松健さん、熊谷でのリサイタルは久し振り。 いつも通り全曲が自作自演だが、今回はソロの魅力は勿論、 打ち解けたアンサンブルとしての魅力も楽しむことができた。 叙情的な曲もあれば軽快な曲もあり、たとえ初めて聴く曲であっても、 何れもすんなりと心に溶け込んで来る。 これもいつも通り、曲間にちょっとしたお話が入り、 ここからもロマンティストで真面目な人柄が伝わって来る。 主に現在お住まいの奄美大島の話題が多かった。 村松さんの三線は今回初めて聴いたが、ピアノでの演奏と同等の表現が、 自由自在に繰り出されていた。 ステージ正面奥の扉が全部開かれていて、 ガラス越しに芝生越しの外の風景が見えていて、実によい雰囲気でした。 使用ピアノは当館所蔵のベーゼンドルファーで、茶色の装飾も美しい楽器でした。 終演後にサイン会では、新CD「My Spiritual Home」にサインを頂戴した上に、 少しお話をさせて頂き、更に握手までしてもらって、幸運な一日。
さだまさしコンサート「美しい朝」 2009/08/25 さいたま市文化センター [出演]さだまさし(vocal/guitar/violin)、倉田信雄(piano/keyboard)、石川鷹彦(guitar)、木村誠(percussions)、宅間久善(percussions)、松原正樹(E-guitar)、岡沢章(E-bass)、、島村英二(drums)
♪ 新アルバムリリース記念のコンサートツアー。 バンドはいつもの最強メンバー編成で、演奏は極上。 松原さんは、ツアー先の福岡にて交通事故で足を骨折したそうで、 椅子に座ったままだったが、演奏は健在。 新曲も多く演奏されたが、意外に多くの定番曲が採り上げられていた。 今回は席が悪く(1階席の最後方列)、ステージがやや遠かったものの、 その分だけステージを全体として楽しむことが出来た気も。 ただ、あえて一つ苦言を書く。 照明の演出で、客席に向けてスポット光を照射するのはやめて欲しい。 眩しくてステージを見ていられないだけでなく、目に残像が焼き付いてしまう。 私は、この凄腕揃いの音楽家たちの生演奏をじっくりと見て聴いていたいのだ。 舞台演出は音楽を楽しむ阻害要因にならない程度にして欲しい。
シモブクレコード スペシャルイベント 2009/07/26 山野楽器銀座本店 イベントスペースJamSpot [出演]島袋優(BEGIN)×下地勇
♪ BEGINの島袋優と宮古島方言シンガーの下地勇が結成した 新ユニット「シモブクレコード」のミニライヴ。CD『Looking South West』購入者 対象のイベントに応募したところ、幸運にも当選した。 小さな会場に立ち見もびっしりの大盛況の中、両人が アコースティック・ギターを携えての登場。 今回はバックバンドはなしで、基本的に下地さんのヴォーカルと、 島袋さんのコーラスに、二人のギターが絡み合うスタイル。 アルバム収録曲から5曲ほどが演奏された。 二人の歌とギターの掛け合いが素晴らしく、 特に島袋さんのギターテクニックの凄さには驚嘆。 二人の曲間のちょっとしたトークも楽しく、あっと言う間に1時間程が過ぎてしまった。 空間の狭さの割にPAの音量が大き過ぎた気はしたが、 かなりの至近距離で生演奏を聴けた喜びは絶大。 更に終了後、何と握手会が開催され、二人ともにこやかで本当によい人。
沖縄音楽フェスティバル 2009/07/25 新宿文化センター [出演]古謝美佐子、佐原一哉、琉神(エイサー団体)と新宿エイサーチーム、 よなは徹、比嘉久美子、大城友弥with下地暁、普天間かおり、 下地勇、新良幸人withサンデー
♪ 夏の新宿の恒例行事(と言っても私は初めて)の、 沖縄・八重山・宮古から豪華メンバーが参集する、沖縄音楽ジョイント・コンサート。 私の最大の目当ては、新良幸人withサンデーと下地勇で、期待に違わず 彼らのステージはもう最高。新良×下地のユニット「Sakishima meeting」 としての演奏もあり、思わず涙が出まうほど嬉しかった。 よなは徹は、さっぱりした髪型に変身していて一見誰だか分からない感じだが、 歌に三線に笛にいつも通りの才人ぶりを発揮。 普天間かおりは、今回初めて生で聴いたが、変化に富んだ声と、 切々とした歌詞が実によく、俄かにファンになってしまいそう。 古謝美佐子の、揺るぎない底力のある声は、芸能生活60周年の大御所としての貫禄を 見せ付けられた感じ。 それぞれの出演者の組が3〜5曲程度を歌い、最後には出演者が全員揃ってお祭り状態。 舞い上がった観客が、ついに舞台の最上段まで上がってしまったのには驚き。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第85回定期演奏会 2009/06/10 東京オペラシティ [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]野々下由香里・松井 亜希(ソプラノ)、ダミアン・ギヨン(カウンターテナー)、水越啓(テノール)、ドミニク・ヴェルナー(バス) [曲]J.S.バッハ:モテット(全曲)BWV 118,225,226,227,228,229,230,Anh.159
♪ BCJによるモテット公演はこれで確か3度目だが、以前のものよりも格段にパワーアップしていた印象。 何と言っても主役はBCJ合唱団。完璧な調和を持ち、完璧にコントロールされ、 叙情性も迫力もあり、まさに面目躍如と言う感じ。 バロック声楽の究極形を体験させてもらえた。 客演の独唱では、ギヨンは多分初顔で、やや線の細い声ながら安定した歌唱。 常連のヴェルナーは、深みのある声による堂々たる歌。 他の独唱は、BCJ合唱団のメンバーが担っていたが、それぞれ文句なしの出来。 全曲の中には、BWV227のように11曲から構成される長大な作品もあるが、 それ以外は単一楽章ないし数楽章からなる短い曲。 編成も曲によって異なっていて、概ね、合唱は概ね左右二群に分けられ、 通奏低音と、合唱と随伴する弦楽器または管楽器が入る。 曲は、バッハらしい密度の濃さを堪能でき、特にBWV118の叙情的な美しさに感涙し、 BWV225の弾ける躍動感には胸が躍った。
折々の会 第37回サロンコンサート 「興隆期のチェンバロとその音楽」福間彩チェンバロ・リサイタル 2009/05/30 東松山市平野市民活動センター [演奏]福間彩 [曲]J.P.スウェーリンク、J.ブル、W.バード、O.ギボンズ他の作品
♪ ルネッサンス期のチェンバロ音楽で、3種類の楽器の音色の違いを一度に楽しめる、 何とも贅沢なコンサート。 初期フレミッシュ、多角形ヴァージナル、オッタヴィーノ・アルピコルド、 形も大きさも異なる3台のチェンバロが並んだ様子はなかなか壮観で、 楽器博物館の一室のよう。これらは何れも横田誠三氏の製作による楽器。 プログラムは主にイギリスの作曲家のもので、チェンバロ好きの私でも 耳慣れない雰囲気の曲が多かったが、横田さんや福間さんの解説のためもあり、 楽しみ方が分かって来た気がした。 意外にも、理論的かつ複雑に構築された音楽もあり(バッハ晩年の抽象作品を彷彿)、 しかも高度なテクニックを要するものが多くあった。 福間さんの演奏は、万全のテクニックによる安定感と、大きな自由度がある。 楽器によって、音色は勿論のこと、一つ一つの鍵盤の幅さえも大きく異なっていて、 これを難なく弾き切ってしまう技術は見事。
有田正広/ヴィヴァルディ:フルート協奏曲作品10全曲演奏会 2009/05/23 所沢市民文化センター ミューズマーキーホール [演奏]有田正広(フラウト・トラヴェルソ)、本間正史(バロック・オーボエ)、堂坂清高(バロック・ファゴット)、他 [曲]ヴィヴァルディ:フルート協奏曲作品10(オリジナル版)全曲
♪ 今回演奏されたのは、出版された作品10(アムステルダム版)ではなく、 その元となった原曲(ヴェネツィア版)で、木管楽器が多用されているもの。 楽器編成は最小構成の弦楽合奏と木管と通奏低音で、 登場する楽器は曲によって変化していた。 楽器の音色の対照も鮮やかで、緩急強弱の変化にも富んでいて、 ヴィヴァルディの音楽の愉悦感を存分に味わうことができた。 フルートは勿論、実はファゴットもとんでもない技術を要する音楽だと言うことが よく分かる。 休憩時間には、有田さんによるトークあり。 この曲の成立背景、原曲を採り上げた理由、この曲が極めて難曲であること、 非常に疲れるので全曲通すのは年齢的にこれが最後と思うこと、 本間さんや堂坂さんとは20年前にレコーディングした時から一緒にやっていること、 など楽しいお話。
グスタフ・レオンハルト チェンバロ・リサイタル 2009/05/15 第一生命ホール [チェンバロ]グスタフ・レオンハルト [曲]ラインケン、ベーム、ダングルベール、ケルクホーフェン、フィッシャー、D.スカルラッティ、フォルクレの作品
♪ 古典鍵盤楽器の巨匠中の巨匠、レオンハルトの、約2年振りの来日公演。 もう80歳を越えているが、相変わらず毅然とした風貌。 演奏曲目は例によって有名曲は皆無で、特に私の非常に好きなフォルクレ作品で 締め括られたのが嬉しい。 演奏は、柔軟でありながら、力強く重厚で、最初から最後まで引き付けられ続けた。 使用楽器は、以前の公演時と同じジャーマンタイプのもので、 チェンバロとしてはかなり大きな音がする。ホールの音響の良さもあってか、 時に鳴り過ぎるくらい豊かな響きが場内に満ちていた。 盛大な拍手に応えて、アンコールはイギリス組曲第2番のサラバンド。 叙情的で切ない終わり方だった。 なお、氏は左手に指先だけ出したグレーの手袋をはめていた。 演奏上は何も支障はなかった模様だが、怪我か何かあったのだろうか。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第84回定期演奏会 2009/03/10 東京オペラシティ 受難節コンサート2009 [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]ゲルト・テュルク(テノール)、ドミニク・ヴェルナー(バス)、レイチェル・ニコルズ(ソプラノ)、加納悦子(アルト) [曲]J.S.バッハ/F.メンデルスゾーン・バルトルディ: マタイ受難曲(1841年上演稿)
♪ 恒例の聖金曜日の受難曲、今回はJ.S.バッハのマタイ受難曲のメンデルスゾーン編曲版 (1841年に行った演奏を再現する試み)。 開演前に音楽監督の鈴木雅明さんによる解説があり、 今回の演奏が通常と異なるメンデルスゾーン上演版であること、 この演奏の歴史的な意義について、楽譜の所在のこと、楽器編成のこと、 省略された曲のこと、それらから分かるメンデルスゾーンの考えについて等々、 いつもながら聞き手への配慮に溢れている。 そして実際に聴いてみて、通常の演奏との違いはかなり大かった。 まず通奏低音が、低音弦楽器の合奏体に置き換えられていて、 これがいかにも非バロック的。更に、低音オーボエ類のパートがクラリネット類に 置き換えられているのも、聞き慣れない響き。 また、装飾音の付け方が違っていることに加え、 旋律の捉え方が全体にレガート気味なので、かなり雰囲気が違う。 音楽自体も、原曲から多くの曲がカットされていて、 特にレチタティーヴォの間に挟まれたアリアやコラールが省略された結果、 物語の展開がよりストレートになった。 特に印象深かったのは、アリア「憐れみたまえ、我が神よ」が アルトからソプラノに置き換えられ、 しかも一部の旋律がより大袈裟に変えられていたことや、 イエスが息絶えた直後のコラールが(管弦楽なしの)合唱だけになっていたこと。 音楽が実に効果的に、劇的に変えられていた。 やはりこれは、あくまでも編曲版。しかしそれでも、大いに感動はあった。
池田卓ライヴ@常光寺 2009/04/08 群馬県大泉町・常光寺 [演奏]池田卓(唄、三線)、ドン・久保田(e-bass)、野崎洋一(e-piano)
♪ 群馬県大泉町にある常光寺の「花祭り降誕会(ごうたんえ)」のイベントとして 境内で行われた、西表島出身の唄者・池田卓のミニ・ライヴ。 バンド・メンバーである久保田氏がここ大泉町の出身だったことが縁で、 もうこれで6年連続出演になるとのこと。 「島の人よ」「おばあちゃんのうた」などの定番から最新の曲まで オリジナル曲を中心に、八重山民謡「月ぬ美しゃ」なども交えて、約1時間のステージ。 池田さんの全く飾らない人柄は、相変わらず好感度大。 幸い雨は降らなかったものの、風も強くかなり寒い中だったが、 楽しいひと時を過ごすことが出来て幸せ。
東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ演奏会Vol.5 2009/03/28 東京芸術劇場 大ホール [指揮]有田正広 [ソプラノ]番場ちひろ [フォルテピアノ]ピート・クイケン [曲]
♪ 有田正広率いる古楽オーケストラの演奏会、 今回は「モーツァルトが生きた時代の演奏会」を再現する試みとして、 序曲、アリア、協奏曲、鍵盤独奏、歌曲、交響曲とジャンルを越えたプログラム からなる3部構成で、演奏時間は計3時間超。 第1部は、オペラの序曲(ドン・ジョヴァンニK.527)から始まり、 オペラのアリアの抜粋が3曲と、ピアノ協奏曲第22番K.482。ソプラノ独唱の番場は、 安定感のある歌声。フォルテピアノは1809年製作のオリジナルで、 独奏のピート・クイケンは多彩な音色と軽快さを引き出していた。 続く第2部は、フォルテピアノ独奏が4曲(幻想曲K.397他)と、 ソプラノとフォルテピアノの歌曲が3曲(夕べの想いK.523他)。 フォルテピアノの弱音の幻想的な美しさには、ぞくぞくと引き込まれた。 そして第3部は、(モーツァルトでなく)ベートーヴェンの交響曲第7番。 オーケストラは、やや精度が低くピタリ合わない感じが時々あったが、 漂う気迫は凄まじく、特に終盤での金管楽器の咆哮は圧巻で、 思わず身を乗り出してしまう程の大興奮。
インマゼール&金子陽子 フォルテピアノ連弾とソロの夕べ 2009/03/14 武蔵野市民文化会館 小ホール [フォルテピアノ]ジョス・ファン・インマゼール、金子陽子 [曲]J.C.F.バッハ、M.クレメンティ、W.A.モーツァルト、、L.v.ベートーヴェンの作品
♪ 古典鍵盤楽器の天才インマゼールと、愛弟子・金子陽子の連弾リサイタル。 ベートーヴェン、モーツァルト、J.C.F.バッハの連弾作品の外に、 金子(「月光」)、インマゼール(クレメンティ)のソロも演奏された。 二人の連弾は、本当に楽しそうで、完全に一つの合奏体と化していて、 連弾ならではの豊かな響きと密度の濃さを堪能できた。 インマゼールはかなり自由に装飾音を加えていたようで、 それがまた愉悦感を生み出していたと思う。 ソロ曲での、この楽器の弱音の響きの美しさには、本当に心が吸い込まれるような 心地で、この繊細さは、チェンバロでも、現代ピアノでも、決して得られない。 ただ、このホールは残響が豊かなので、楽器の響きがやや鮮明でなくなっていた気も。 使用楽器は故・小島芳子さんの愛器とのことで、夫の福澤宏さんが調律を担当。
SAKISHIMA meeting in 赤坂サカス 2009/03/14 赤坂サカス Sacas広場 [出演]新良幸人(石垣島)×下地勇(宮古島)
♪ この二人、私にとって最も好きな沖縄ミュージシャン(しかも私と同世代)だが、 このユニットとして見て聴いたのは今回が初めて。 それぞれの持ち歌と、(ミニ・アルバムにも収録されている)共作の歌が演奏された。 新良の三線、下地のギター、それぞれが自由度を持って絡み合い、 実に心地良い音楽世界が出来上がっている。 編成から言って、穏やかな曲が多いのも、私の好みに合っている。 二人の歌が絡み合う「SAKISHIMAのテーマ」など、うっとり聞き惚れてしまった。 小雨もぱらつく極寒の中の屋外ステージだったが、熱烈ファンが押し寄せたのか、 用意された椅子席は早々に満席。 早目に到着していた私は、至近距離で見て聴くことができてラッキー。
バッハ・コレギウム・ジャパン第83回定期演奏会 2009/02/26 東京オペラシティ J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズVol.54 ライプツィヒ1726年のカンタータ3 [音楽監督]鈴木雅明 [独唱]野々下由香里(ソプラノ)、ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)、ペーター・コーイ(バス) [曲]J.S.バッハ: カンタータNr.187, 39, 129
♪ オープニングの今井奈緒子によるオルガン独奏は、BWV 1128, 680の2曲で、 特に前者は(BWV番号からも分かる通り)最近になって再発見された曲の由。 カンタータの前に、シンフォニアBWV 1045を演奏。これはヴァイオリン独奏と トランペットやティンパニを含む管弦楽と言う変わった編成で、 独奏が凝っている一方で管弦楽は単純っぽい異色の音楽。 メインのカンタータ3曲は、バッハらしい複雑さと美しさに満ちた傑作揃い。 独唱陣(今回はテノール独唱の出番がないので不在)では、 最近時々不調のブレイズも今日は絶好調。 またコーイの歌声の醸し出す情緒には目頭が熱くなる場面さえあった。 フラウト・トラヴェルソやヴァイオリンやオーボエなど器楽の聴かせ所が多かったのも 印象的。いつものことながら、この楽団を生で聴ける時代と場所に生きていることを、 幸福に思う。
アリアンナの嘆き〜イタリア・バロックの輝き〜 2009/02/11 ハクジュホール [演奏]ロベルタ・マメリ(ソプラノ)、波多野睦美(メゾソプラノ)、つのだたかし(リュート、キタローネ)
♪ イタリア人のソプラノ、ロベルタ・マメリさんのリサイタル。 つのださんが目を付けた人だけあって、さすがに素晴らしい歌であった。 曲目は、S.ディンディア、C.モンテヴェルディ他、イタリア・バロックの歌曲で、 マメリのソロがほぼ半分、残り半分が波多野のソロと、二重唱のプログラム。 マメリは、透明感のある、どちらかと言えば硬質な声で、高音域まで淀みない 完全な安定感があり、力強さも繊細さも喜怒哀楽も全てが声で表現されていた。 一方の波多野は、マメリに勝るとも劣らない表現力と、マメリを上回る声の温かみで、 相変わらず至高の存在。二人の二重唱は、息が合っている云々のレベルを遥かに超えた 極上の演奏で、数年前のエヴリン・タブとの二重唱をも上回るような出来と思う。 言うまでもなく、つのださんの絶妙の伴奏も理想的な存在感を示していた。

back home mail
(紺野裕幸)

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送