映画寸評 2002年

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2002年 私的ベスト3: ハッシュ!とらばいゆ光の雨、 (次点)tokyo.sora


◎=絶賛 ○=よい
2002
タイトル データ 鑑賞日 感想
ラヴソング (甜蜜蜜) 1996香港 (監)ピーター・チャン (出)レオン・ライ、マギー・チャン、エリック・ツァン、 クリスティ・ヤン、クリストファー・ドイル 2002/12/25 5年前に感動した大傑作が 地元で再映。 中国大陸から香港へ、そして米国へ、 互いを想いながらもすれ違いを重ねる男女に、寄り添うテレサ・テンの甘い歌声。 「車」と鼻歌、英会話教室、雨の露店、寒い日の上着、ホテルの扉、 別れ際の「同志」、2つのブレスレット、2度の背中のミッキーマウス、 …忘れられない場面ばかりの、切なくも洗練されたラヴストーリー。
海は見ていた 2002日本 (監)熊井啓 (出)遠野凪子、清水美砂、永瀬正敏、吉岡秀隆、つみきみほ、河合美智子、石橋蓮司、奥田瑛二 2002/12/15 江戸の河岸にある遊郭街。 客を好いてはいけないと分かってはいても客に恋してしまう若い遊女と、 それをいとおしくも見守る同僚たちと、訪れるさまざまな客たちの人間模様。 恋のぎこちなさがよく伝わる反面、物語の流れにもぎこちなさがあり、 特に盛り上がりで出てくる音楽のラッパはあまりに間抜け。 地元での鑑賞。 ホームページ
フラワー・アイランド 2001韓国 (監)ソン・イルゴン (出)ソ・ジュヒ、イム・ユジン、キム・ヘナ 2002/12/07 そこに行けば、あらゆる悲しみを忘れさせてくれるという南海の「花の島」。 絶望の極みにある世代も異なる女性3人が、ふとした成り行きで、 共にそこを目指して旅をしてゆく。 どこまでも救いのない旅の果てに不思議な解放が訪れるが、 惨めで暗い後味は如何ともし難い。 以下3篇は、「彩の国さいたま韓国映画祭2002」にて鑑賞。好企画。
達磨よ、遊ぼう 2001韓国 (監)パク・チョルグァン (出)パク・シニャン、パク・サンミョン 2002/12/07 ◎ 身を追われ、人里離れた山奥の寺に強引に居座ってしまった、ヤクザの一味。 連中の傍若無人の不品行に、修行僧たちのイライラは募るばかりで、 何故かヤクザの肩を持つ住職の目を他所に、 やがて双方は決闘の時を迎えるが、その結果、双方に奇妙な友情が芽生え始める。 場面は大都会から山奥へ、アクションあり人情物語ありの、爽快なコメディ。
手紙 1997韓国 (監)イ・ジョングク (出)パク・シニャン、チェ・ジンシル 2002/12/07 ○ 駅での落し物をきっかけに知り合った研究員の男性と大学院生の女性は、 互いに惹かれあい結ばれるが、幸せな日々の中に突然、 夫は不治の病魔に見出され、あっけなく先立ってしまう。 絶望する妻のもとに、ある日、亡き夫からの手紙が届けられる。 前半が幸せ過ぎる分だけ後半の悲しみがグッと胸に迫り、 最後に悲しみを突き抜けた女性の姿にまた泣かされてしまった。
至福のとき (幸福時光) 2002中国 (監)チャン・イーモウ (出)ドン・ジエ、チャオ・ベンシャン、フー・ピアオ、 リー・シュエチエン、ニウ・ベン 2002/12/01 ○ 見合いのなりゆき上、 継母から虐げられる盲目の娘の世話をすることになった失業中の中年男が、 同僚の力も借りて、身を削ってまで娘のための仕事を取り繕うことになる。 娘のために躍起になる男や同僚たちの必死な姿に、笑わされつつも心は温まる。 ただ、非常に気掛かりな状態のまま物語が閉じてしまったせいか、 前作前々作 のようには泣けなかった。 ホームページ
白い犬とワルツを 2002日本 (監)月野木隆 (出)仲代達矢、若村麻由美、南果歩、藤村志保、豊原功補 2002/11/16 ○ 最愛の妻に突然先立たれ、呆然と立ち尽くす樹木医の所に、 まるで妻からの使者のように現れた真白な犬。 やがて男は妻との約束を果たすべく、娘たちの心配を振り切り、 犬を伴って山奥へと分け入ってゆく。 「在日」の問題も絡めてあるが、物語の軸は夫婦愛と親子愛。 初めて訪れた深谷市の生活街ミニシアター チネ・フェリーチェ にて鑑賞。 ホームページ
火星のカノン 2001日本 (監)風間志織 (出)久野真紀子、中村麻美、小日向文世、KEE、はやさかえり 2002/11/07 ○ 傍から見れば不倫、しかしそう簡単に論理では片付けられない恋愛感情。 妻子ある中年男と付かず離れずの関係を続けている三十路間近の女性に、 接近しては「不倫」を咎める若い女性の秘めた想い。 この不安定な三角関係が、そのまま続いてゆく筈がなく、ようやく 新たな第一歩に踏み出しそうな気配の中、あのラストの夢の悲しさが迫る。 ホームページ
tokyo.sora 2001日本 (監)石川寛 (出)板谷由夏、井川遥、仲村綾乃、高木郁乃、孫正華、本上まなみ 2002/11/07 ◎ 東京で一人暮らす若い女性たち6人の、ささやかな生活風景を、 細やかな視線で見つめる。 6人それぞれの間に相互の関わりは生じないまま物語は展開し、 劇的な事も(特に前半には)起こらないが、 その代わりに日常の感情の起伏が繊細に捉えられていて、 一人一人の悲しみ、悩み、孤独感、淋しさ、ささやかな喜びが、 詩的な映像を通じて、じわじわと静かに心に沁みてくる。 喫茶店マスターの語る心境にはことさら共感。 ホームページ
群青の夜の羽毛布 2001日本 (監)磯村一路 (出)本上まなみ、玉木宏、藤真利子、野波麻帆、小日向文世 2002/10/27 ○ 憧れの女性の病気がちな振る舞いの背景に、 あまりに厳格な母親による抑圧があることを知り、 男は女性を解放すべく働きかけるが、その家族には他人には言えない秘密があった。 家庭という束縛に、ジリジリと追い詰められた女性の心模様が あまりに痛々しいだけに、後半で見せる反抗の壮絶さが際立ち、 最後の再生の兆しには救いがある。 ホームページ
木曜組曲 2001日本 (監)篠原哲雄 (出)浅丘ルリ子、加藤登紀子、原田美枝子、鈴木京香、富田靖子、西田尚美、竹中直人 2002/10/27 ○ 大女流作家の毒死から4年、故人と親しい関係にあった女流作家たち5人は、 命日に集った席で、故人の死の謎について改めて検証し始める。 二転三転どころか何度でも覆される推理、渦巻く疑心暗鬼。 旧家の妖しい雰囲気も相俟って、最後の最後まで息の抜けない展開。 6人の主演女優のクールなぶつかり合いが強烈。 ホームページ
阿弥陀堂だより 2002日本 (監)小泉堯史 (出)寺尾聰、樋口可南子、北林谷栄、小西真奈美、田村高廣、香川京子、井川比佐志、吉岡秀隆 2002/10/05 ○ 都会生活から逃れて信州の山村に移り住んだ、 心を病んだ医師である妻と、作品が書けない作家である夫が、 自然の移ろいや人々との付き合いの中で立ち直ってゆく物語。 愛読する小説の映画化で、過剰の期待を持って臨んだが、期待は裏切られず。 しっとりとした原作の味わいは映画によく受け継がれていて、 随所で訳もなく目が潤んで仕方なかった。 ホームページ
ピカレスク 人間失格 2002日本 (監)伊藤秀裕 (出)河村隆一、朱門みず穂、さとう珠緒、裕木奈江、緒川たまき、とよた真帆 2002/08/18 ○ 太宰治の後半生を、関わった女性たちを軸に描く。 無理矢理2時間半に押し込んだ印象がある、 原作の強引さが残存する、 中途半端な仮名の使用も含め 史実に拘る個所とそうでない個所との混在が気になる等々、 太宰の読者から見ると難点だらけだが、 具体的に映像化された数々の場面は、見ておいても損はない。 ホームページ
白い船 2001日本 (監)錦織良成 (出)中村麻美、濱田岳、大滝秀治、中村嘉葎雄、尾美としのり、竜雷太、山口美也子 2002/07/29 ◎ 島根の全校児童17人の小さな小学校に赴任した、若き女性教師。 教室の窓から見える海の遠くに白い船が行くのを見つけた子供たちは、 船長に手紙を出すことにするが、やがて船長から届いた返事に子供たちは驚喜する。 子供たちや先生たちの真っ直ぐな思いに、何度も泣かされてしまったが、 特に船上から手を振る場面では、主人公たちと一緒に涙が止まらなかった。 ホームページ
春の日は過ぎゆく (One Fine Spring Day) 2001韓国 (監)ホ・ジノ (出)ユ・ジテ、イ・ソンエ 2002/07/29 ○ 録音技師の若い男性は、年上のラジオ局DJの女性と仕事で出会い、 やがて恋に落ちるが、舞い上がる男の心境に反して、女の心は揺らぎ始める。 幸せの場面描写が幸せすぎる分だけ、別れを切り出す女性が身勝手にも思えたが、 振り返って見れば心変わりとはそういうものなのかも知れない。 静かで淡々と切なく美しく悲しい恋愛物語。 主演のイ・ソンエの凛々しさも忘れ難い。 ホームページ
笑う蛙 2002日本 (監)平山秀幸 (出)長塚京三、大塚寧々、ミッキー・カーチス、國村隼、きたろう、 三田村周三、金久美子、南果歩、雪村いづみ 2002/07/19 ○ 横領罪で指名手配され逃亡していた元夫を、なりゆきで匿うことになってしまった妻。 それとは知らずにやってくる妻の新しい恋人や親族の様子を、 夫は幽閉された物置の節穴から覗き見ることになる。 登場する女性たちのふてぶてしいほどのたくましさと、 それとは対照的にどうも冴えない男たち。 最後までクールな笑いに満ちたコメディ。 ホームページ
少林サッカー (少林足球) 2001香港 (監)チャウ・シンチー (出)チャウ・シンチー、ヴィッキー・チャオ、ン・マンタ、パトリック・ツェー 2002/06/29 ○ 少林拳を普及させたい一心の主人公が、かつて共に鍛えた兄弟たちや、 落ちぶれた元サッカー選手らと共に、拳法を駆使したサッカーチームを編成、 全国大会に挑む。 CGもフル活用した大袈裟なアクションはバカバカしい限りだが、 ひたすら面白おかしく、しかも変に感動させられてしまう。 カレン・モクとセシリア・チャンの登場にもびっくり。 ホームページ
ノー・マンズ・ランド (NO MAN'S LAND) 2001フランス=イタリア=ベルギー=イギリス=スロヴェニア (監)ダニス・タノヴィッチ (出)ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ、フィリプ・ショヴァゴヴィッチ 2002/06/08 ○ ボスニアとセルビアの戦争中、中間地帯の塹壕に取り残された両軍の兵士。 両者の逼迫した関係に、介入してくる国連軍や報道陣の、当事者と部外者との軋轢、 そして何ともやりきれないラストシーン。 戦争の本質の愚かしさをイヤと言うほど教えてくれる、皮肉な反戦映画。 国連がこの程度のものでしかないこともよく分かり、 アメリカがさっぱり登場しないのも小気味よい。 ホームページ
ハッシュ! 2001日本 (監)橋口亮輔 (出)田辺誠一、高橋和也、片岡礼子 2002/05/17 ◎ 同棲中のゲイのカップルと、たまたま関わりを持った一人の女性。 彼女が一方の男の「子供が生みたい」と言い出したことから、 他方の男をはじめ、職場の同僚や親兄弟までも巻き込んだ騒動になってしまう。 河岸の場面の距離感はグッと来て、あっけらかんとしたラストシーンも最高。 とにかく主演3人の存在感の濃さは半端でない。 ホームページ
ドリアン ドリアン (榴[木漣]飄飄) 2000香港 (監)フルーツ・チャン (出)チン・ハイルー、マク・ワイファン、ウォン・ミン、ヤン・メイカム 2002/04/27 ○ 香港に出稼ぎに来て体を売って稼ぎまくった女性が、 渡航期限とともに中国東北の寒村に帰郷。 お金はあっても目的を見出せず苦悩しながらも、やがて毅然と歩き始める。 臭気すら感じさせる熱気の香港市街と、凍てつく大陸の風景が、 あまりに対照的で、それに合わせた主人公の別人のような変貌ぶりも鮮やか。 ホームページ
アメリ 2001フランス (監)ジャン=ピエール・ジュネ (出)オドレイ・トトゥ、マチュー・カソヴィッツ 2002/04/22 ○ 子供の頃から空想癖のある女性が、 ちょっとしたいたずらで周囲の人々に幸せをもたらしながら、 ついに自身の不器用な恋も成就させてしまう、かなり風変わりな物語。 グロテスクな場面も多いが、遊び心は満載で、ウキウキした気分にさせられる。 戯画的な場面に合わせた早口のナレーションも面白い。 ホームページ
Stereo Future 2000日本 (監)中野裕之 (出)永瀬正敏、桃生亜希子、竹中直人、麻生久美子、緒川たまき 2002/04/06 第16回高崎映画祭での上映。 売れない役者、失恋ショックで声を失った女性、 環境問題を取材するTVディレクター、偽ブランド家電を売る男、 などいくつかのエピソードが絡み合う。 豪華出演陣で、特に竹中さんの怪演には笑わされるが、 全体としては甚だ焦点ボケ。 ホームページ
ふたつの時、ふたりの時間 ([(イ尓]那邊幾點) 2001台湾 (監)ツァイ・ミンリャン (出)リー・カンション、チェン・シアンチー、ルー・イーチン 2002/04/06 第16回高崎映画祭での上映。 台北の路上で腕時計を商う若い男を襲う、父親の死と、母親の精神異常。 やがて男は、パリに赴く女性客に時計を売ったことを思い出し、 街のあちこちの時計をパリ時間へと狂わせてゆく。 『』以上に難解だが、 静けさの中に現代の都会生活の孤独感や空虚感や閉塞感が濃密に漂う。
とらばいゆ 2001日本 (監)大谷健太郎 (出)瀬戸朝香、塚本晋也、市川実日子、村上淳、大杉漣 2002/03/29 ◎ 傑作『アベックモンマリ』の監督の新作。 女流棋士の姉妹と、それぞれの夫と恋人の4人の会話を、生き生きとテンポよく描く。 些細な意地の張り合いから泥沼化する4者の関係も、 強気な女性とやや弱気な男性が主人公なことも、よい意味で前作を彷彿とさせ、 やはり最後には心からホッとさせられて、何とも心地よい余韻を残す。 これも傑作。 ホームページ
活きる (活着) 1994中国 (監)チャン・イーモウ (出)グォ・ヨウ、コン・リー 2002/03/29 ○ 共産党の台頭、大躍進、文革と、刻々と変貌する近代中国の社会体制、 その中で数多の苦難に見舞われながらも、必死で生き抜いてゆく夫婦の壮絶な半生。 この時代の不穏な空気に、 先月見た『光の雨』のアジト内の異常な空気が、 ちょうど重なって見えた。 言葉尻で吊し上げ→自己批判を強制→リンチ、の流れもすっかり似ている。 ホームページ
Laundry 2001日本 (監)森淳一 (出)窪塚洋介、小雪、内藤剛志 2002/03/15 ○ コインランドリーで働くやや知恵遅れの青年と、 悲しい過去から心を洗えない若い女性との、純粋な恋の繊細な物語。 窪塚さんの純な仕草と小雪さんの悲しげな表情、対照的に豪快で謎めいた内藤さん、 それぞれがいい味を出していて、かなり感情移入させられてしまう。 印象的なエピソードも多数。 ホームページ
光の雨 2001日本 (監)高橋伴明 (出)山本太郎、裕木奈江、池内万作、萩原聖人、塩見三省、大杉漣 2002/02/09 ◎ 革命を夢見ていた若者たちが何故、同志のリンチ殺人を引き起こすに至ったのか。 '71〜72年の連合赤軍事件を、それを映画化する現在の若手俳優たちの視点を通じて、 他人事でない現代の問題として我々に突き付ける。 特に山本・裕木両氏の迫真の演技は狂気さえ漂い、強烈な印象が長らく持続している。 なお偶然だが、映画の中で映画を撮っている作品を、3本連続で見たことになった。 ホームページ
Video
月光の夏 1993日本 (監)神山征二郎 (出)渡辺美佐子、若村麻由美、滝田裕介、田中実、仲代達矢、石野真子、田村高廣、山本圭 2002/08/24 ◎ 小学校の体育館の片隅に放置された古いグランドピアノ。 半世紀前、特攻基地に発つ直前の2人の特攻兵士が、 最後の思い出にこのピアノで「月光」を弾いたのだった。 やがて、その兵士らしき人の生存が判明するが、 その人はしかし、過去のことを黙して語ろうとしなかった。 最初から最後まで泣けて泣けて仕方なかったが、 単なる悲話にはせず、戦争の虚しさ理不尽さを痛烈に描き出す。 音楽もぴったり寄り添う。
ホタル 2001日本 (監)降旗康男 (出)高倉健、田中裕子、夏八木勲、水橋貴己、小澤征悦、奈良岡朋子、井川比佐志 2002/06/30 ○ 鹿児島でつつましく現在を生きる元特攻兵とその妻にとっての、昭和の終焉。 「蛍になって戻ってくる」と言い残して飛び立った兵士、 日本人の恋人には黙って出撃した朝鮮人の上官、 昭和という時代に殉じるように命を絶った戦友、 清算し切れない悲しみの過去。 特攻隊をテーマとしてはいるが、反戦映画というよりは夫婦愛の物語。 鹿児島の風景も美しく収められている。

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(紺野裕幸)

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