映画寸評 2003年

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2003年 私的ベスト3: ラスト・プレゼントホテル・ハイビスカス、 (次点)藍色夏恋


◎=絶賛 ○=よい
2003
タイトル データ 鑑賞日 感想
美しい夏キリシマ 2002日本 (監)黒木和雄 (出)柄本佑、原田芳雄、左時枝、小田エリカ、中島ひろ子、寺島進、 牧瀬里穂、石田えり、香川照之 2003/12/20 岩波ホール ◎ 1945年の夏、霧島連山を望む宮崎の農村。 動員先で空襲下に見殺しにした級友のことを気に病む少年と、 その家族それぞれにとっての、戦時下の日々。 爆撃など直接の被害には遭わなかった農村であっても、 戦争の暗い影は確実に人々の生活を覆っていたことや、 そこで暮らす普通の人々にとって、戦争というものがどういうものであったのか など、劇的な場面は一切なくても切実に伝わって来る。 ホームページ
精霊流し 2003日本 (監)田中光敏 (出)内田朝陽、池内博之、酒井美紀、高島礼子、松坂慶子、田中邦衛、 椎名桔平、山本太郎、仁科亜季子、蟹江敬三 2003/12/20 テアトルタイムズスクエア ○ 長崎を舞台にした、気丈な母と奔放な叔母が秘めた哀しみの物語。 さだまさしの自伝的小説の映画化だが、 原作とは人物設定がまるで変えられてしまっていて頭が混乱させられ、 その割に原作のエピソードを盛り込み過ぎていて消化不良気味の感はあるものの、 それでも間違いなく感動作には仕上がっていて、 最後の精霊流しの場面には涙を抑えられない。 ホームページ
幸福の鐘 2002日本 (監)SABU (出)寺島進、西田尚美、篠原涼子、益岡徹、塩見三省、鈴木清順、板尾創路、 白川和子、手塚とおる、滝沢涼子、田山涼成 2003/12/05 シネ・アミューズ ○ 会社を解雇されらた(らしい)男が、ひたすら黙々と歩きながら、 人々の様々な不幸の姿を次々と目の当たりにし、 やがて自身の戻るべき所に戻ってゆく。 ただ行って帰ってくる、それだけの物語で、 しかもいかにも出来過ぎの展開とは思いつつも、こんなにも面白く、 最後は(ちょっとずるい気もするが)ほんわかと幸せな気分になったのは確か。 切り詰めた音も効果的。 ホームページ
8人の女たち 2002フランス (監)フランソワ・オゾン (出)カトリーヌ・ドヌーヴ、エマニュエル・ベアール、イザベル・ユペール、 ファニー・アルダン、ヴィルジニー・ルドワイヤン、リュディヴィーヌ・サニエ、 ダニエル・ダリュー、フィルミーヌ・リシャール 2003/11/24 深谷シネマ ○ クリスマスの朝、大雪に閉ざされた豪邸の寝室で、主人が刺殺されていた。 その場に居合わせた8人の女たちの中に、犯人は必ずいる。 食い違う互いの言い分に、次々と明らかになってゆく意外な秘密と事実。 場面設定は「木曜組曲」を想起させる。 所々でミュージカル風のシーンに移行するのが面白い。 終幕は全く予想外で、しかしあまりに悲しい。 ホームページ
2002日本 (監)西谷真一 (出)大沢たかお、柄本明、西田尚美、牧瀬里穂、加瀬亮、南果歩、椎名桔平、 仲村トオル、樋口可南子、藤村志保 2003/11/21 テアトル新宿 ◎ いつ死ぬかも分からない動脈瘤を患い呆然と過ごす若者が、 別れた妻の遺品を受け取りに行くと言う老いた弁護士と共に、 東京から鹿児島まで、国道1〜2〜3号線と辿って旅してゆく。 忘れていた妻の顔、脳手術への不安、 二人の男それぞれが「記憶」について思いを巡らしつつ進む道程が、 切なく温かく、じわじわと心に沁みてくる感動作。 静かに寄り添う村治佳織のギターもよい。 ホームページ
再見<ツァイツェン>〜また逢う日まで 2001中国 (監)ユイ・チョン (出)ジジ・リョン、ツイ・ジェン、シア・ユイ、ジャン・ウー 2003/11/21 新宿文化シネマ ○ 貧しくとも幸せだった子供時代、しかし突然の父母の事故死で、 バラバラの環境に引き離されていった4人の兄姉弟妹。 20年を経て、アメリカで指揮者として成功した姉は、 中国への凱旋公演を機に、兄弟妹の所在を探し始める。 別れの場面の子供たちの泣き顔に涙を誘われ、 最後の再会の場面でも(ちょっと出来過ぎとは思いつつも)また涙、涙。 ホームページ
スパイ・ゾルゲ 2003日本 (監)篠田正浩 (出)イアン・グレン、本木雅弘、椎名桔平、上川隆也、永澤俊矢、 葉月里緒菜、小雪、夏川結衣 2003/11/01 深谷シネマ 第二次大戦中、日本やドイツの機密情報をソヴィエトに送り、 歴史の流れを変えたスパイ、ゾルゲの暗躍とその最期。 戦時中の市街の様子など時代の空気をリアルに体験できる一方で、 主要人物たちの心境の変化が伝わって来ないのが惜しい。 モスクワでもベルリンでも会話が英語なのは甚だ違和感があり、 最後に付された現代の場面は余分と思う。 ホームページ
ナビィの恋 1999日本 (監)中江裕司 (出)西田尚美、村上淳、平良とみ、登川誠仁 2003/10/25 深谷シネマ ◎ 沖縄の小さな島に降り立った謎の老人は、 実は、若き日に仲を引き裂かれた恋人との再会を果たすため 六十年振りに帰郷したのだった。 大らかな沖縄の空気に浸れる傑作を、約3年ぶり (→2000/06/24) に改めて見て、劇中での音楽場面の多さを改めて実感。 島唄からオペラまで何でもありで、 ここまで三線の音色が生活に溶け込んでいる沖縄の文化を羨ましく思う。 ホームページ
蕨野行 2003日本 (監)恩地日出夫 (出)市原悦子、清水美那、石橋蓮司、瀬川哲也、 中原ひとみ、李麗仙、樋田慶子、原知佐子、左時枝 2003/10/24 新宿東映パラス2 ◎ 貧しき農村の掟に従い、蕨野と呼ばれる山奥の原に隔離され、 集団生活する老人たちの生き様とその最期を、若い嫁との心の対話として描く。 ともすれば醜くさえある惨めな生き様を延々と見せつけられる分だけ、 ついに「生」から解放された老人たちの軽やかな喜びが、 羨ましいほどに際立って感じられる。 村田喜代子の原作(→1999/08/07) に見る死生観が、的確に表現されていたように思う。 ホームページ
きれいなおかあさん (漂亮媽媽) 1999中国 (監)スン・ジョウ (出)コン・リー、カオ・シン 2003/10/17 深谷シネマ ○ 聴覚障害の息子を持つシングル・マザーの奮闘。 息子を普通学校に入学させるべく必死で言葉を教え込み、 先生や友人に支えられながら、苦しい家計や様々な苦難を乗り越えてゆく。 苦悩をあからさまに表にしながらも、なおも気丈に生きる母親に、 なり切ったコン・リーの存在感があるからこそ、 「きれいなおかあさん」と言う表題が意味深く感じられる。 ホームページ
喜びも悲しみも幾歳月 1957日本 (監)木下恵介 (出)佐田啓二、高峰秀子 2003/10/11 深谷シネマ ○ 灯台守を職とし、北海道から九州まで転々と転任する夫婦の、戦前から戦後。 誠実に時代を生き抜く夫婦の姿はしみじみと感動的で、 とりわけ最後に旅立つ娘夫婦との間で霧笛と汽笛とで呼び交わす場面には涙。 戦時中、兵役逃れ呼ばわりされたことや、 標的とされ多くの灯台守が殉職したことなどは知らなかった。 古い映画だが、意外にもカラー映像で、勢いのある空撮にもびっくり。
住井すゑ 百歳の人間宣言 2002日本 (監)橘祐典 2003/10/05 小川町民会館 ◎ 作家・住井すゑさん(1902-1997)の生涯と思想について、 生前の映像と、関係者のインタビューからなるドキュメンタリー映画。 言うべきことを臆せず言う姿勢、「たたかい続ける」姿勢には、 ひたすら頭が下がる思い。 差別問題の根底に天皇制の存在を見る指摘には、まさに目から鱗。 上映後に増田れい子さん(次女でジャーナリスト)の講演があり、 母として作家としての住井さんについて、 制限時間一杯まで大いに語ってくださった。 ホームページ
AIKI 2002日本 (監)天願大介 (出)加藤晴彦、石橋凌、ともさかりえ、原千晶、木内晶子、桑名正博、火野正平 2003/09/26 深谷シネマ ◎ 交通事故で下半身付随になり、自暴自棄に陥った若者が、 合気柔術との出会いによって立ち直ってゆくまで。 いかにもの物語なので正直あまり期待していなかったのだが、これは傑作。 主人公の苦悩の重さが切実に伝わる分だけ、 師範の穏やかな人柄と強さに信頼を寄せてゆく様があまりに感動的で、 彼を支える一人一人の個性が魅力的。 単純にメデタシメデタシと展開しないのがよい。 ホームページ
わたしのグランパ 2003日本 (監)東陽一 (出)菅原文太、石原さとみ、平田満、宮崎美子、波乃久里子、浅野忠信 2003/09/20 深谷シネマ ○ 刑務所に入っていた祖父が十数年振りに家に戻って来て、 最初は戸惑っていた中学生の孫だが、 次第に祖父の実直な生き方に親しみを覚えてゆく。 ワルたちがあまりにあっけなく改心し過ぎる気がしないでもないが、 祖父の真直ぐな正義感はさすがに見ていて気持ちがよい。 なお、随所に古楽系の音が聴こえると思ったら、 タブラトゥーラの演奏だった。 ホームページ
蛇イチゴ 2003日本 (監)西川美和 (出)宮迫博之、つみきみほ、平泉成、大谷直子、笑福亭松之助 2003/09/19 シネ・アミューズ ◎ 平凡ながら一見平穏な家庭を維持していた家族4(+1)人。 しかし祖父の葬儀をきっかけに、父の失職と借金が暴露されたり、 勘当息子がふいに戻って来たり、家族は救いようもなくボロボロに崩壊してしまう。 チャランポランな兄と生真面目な妹の衝突が冷ややかに面白く、 何一つ問題が解決していないまま迎える絶妙のラストでも、妙にさっぱりした気分。 ホームページ
太陽の雫 1999カナダ=ハンガリー (監)イシュトヴァーン・サボー (出)レイフ・ファインズ、ローズマリー・ハリス、レイチェル・ワイズ、 ジェニファー・エール、モリー・パーカー、デボラ・カーラ・アンガー、 ジェームス・フレイン、ジョン・ネヴィル、ウィリアム・ハート 2003/09/13 深谷シネマ ○ 薬草酒で財を成したユダヤ系ハンガリー人一家の、親子3代以上に渡る激動の20世紀。 王制、ファシズム、共産主義、民主主義と目まぐるしく変わる国の体制に翻弄され、 親子や兄弟の間でさえ立場を違えて反目に至ることの悲しさ。 3時間の壮大な大作で、主演俳優は一人三役(3世代)。 自国の誇りの大切さを説きつつも会話が何故か英語なのが難点。 ホームページ
藍色夏恋 (藍色大門) 2002台湾 (監)イー・ツーイェン (出)チェン・ボーリン、グイ・ルンメイ、リャン・シューホイ 2003/09/12 シャンテ・シネ ◎ 友人に頼まれて恋文を渡した相手は、実は自分を好いていた。 友情と恋愛感情との間で戸惑う17歳の高校生の男女3人の切ない一夏。 自転車で走りながら何年か先の自分たちのことに思いを馳せるラストシーンでは、 えも言われぬ感動あり。 自分にもそんな若き日々があったこと、数年前に訪れた台北の街路の風景など、 忘れかけていたことを色々と思い出させてくれる。 音楽の古典派風なピアノも爽やか。 ホームページ
山の郵便配達 (那山 那人 那狗) 1999中国 (監)フォ・ジェンチィ (出)トン・ルゥジェン、リィウ・イェ、ジャオ・シィウリ 2003/09/03 深谷シネマ ◎ 何十年も郵便物を背負い山奥深い村を巡回し続けた配達夫が、 その仕事を引き継ぐ若い息子と一緒に出発した、最後の配達の旅。 2年前(→2001/10/27)以来2度目の鑑賞だが、 先日読んだ原作本(→2003/05/27) の素っ気無さに比べて、つくづくよくできた映画だと改めて思う。 陰の主役と言うべき犬の「次男坊」や家で待ちつづける母親も、 しみじみといい味を出していて、1度目を上回る深い感動があった。 ホームページ
猟奇的な彼女 2001韓国 (監)クァク・チェヨン (出)チョン・ジヒョン、チャ・テヒョン 2003/08/23 深谷シネマ ◎ 凶暴なまでに暴力的な彼女と付き合うことになった優柔不断男の、恋の顛末。 彼女のやっていることは無茶苦茶のようでいながら正義感には溢れていて、 それに振り回され痛い目に遭いつつも離れられない男の姿が哀れで楽しい。 そうして前半戦・後半戦と軽快なコメディのように展開するが、 延長戦に至ってロマンティックな様相を呈し、最後はホロリ感動的。 ホームページ
運動靴と赤い金魚 1997イラン (監)マジッド・マジディ (出)ミル=ファロク・ハシェミアン、バハレ・セッデキ、アミル・ナージ 2003/08/23 深谷シネマ ◎ 妹の靴を無くしてしまい、やむなく兄妹は、 一つしかない靴を交替で履いて、学校への路地を疾走する。 そのことを親に言い出せない中、マラソン大会の3等賞品が運動靴だと知った兄は、 妹のために必死で走るのだった。 子役二人の表情(特に泣き顔)が微笑ましく、 嬉しい予感だけで終わらせるラストも素晴らしい。 4年前(→1999/10/11)以来の2度目の鑑賞。 ホームページ
黄泉がえり 2003日本 (監)塩田明彦 (出)草なぎ剛、竹内結子、石田ゆり子、哀川翔、山本圭壱、伊東美咲、田中邦衛 2003/07/26 深谷シネマ ○ 阿蘇の一地帯で、死者が当時のままに蘇る現象が連続。 蘇った人々とそれに喜び戸惑う人々とが過ごした短い時間の物語は、 荒唐無稽とは思いつつも、なかなか切ない恋愛ファンタジーになっていて、 結構感動させられてしまう。 ほんのひと時でも、大切な人と過ごせた時間があったから、今を生きてゆける。 最後のメッセージは胸に沁みた。 ホームページ
壬生義士伝 2002日本 (監)滝田洋二郎 (出)中井貴一、佐藤浩市、夏川結衣、中谷美紀、三宅裕司、村田雄浩、塩見三省 2003/07/19 深谷シネマ 偶然にも連続して浅田次郎原作もの。 幕末から明治維新の時代、 家族の生活を守るために、故郷を捨てて新選組(新撰組?)に入った貧しい武士の生涯。 義を貫くために、いつの間にか家族を捨てることになっているのが、 何となく釈然としないところで、決戦後の物語が蛇足な気もしたが、 主人公たちが決してカッコいいばかりではないのがよい。 ホームページ
パイラン 2001韓国 (監)ソン・ヘソン (出)チェ・ミンシク、セシリア・チャン、ソン・ビョンホ、コン・ヒョンジン 2003/07/15 新宿武蔵野館 ○ 浅田次郎の短篇「ラブレター」の、 韓国映画版。 偽装結婚した妻の死を知らされたヤクザの男は、 やむなく遺体を引き取りに海辺の寒村に向かうが、 そこで初めて女が自分に寄せていた想いを知る。 場面設定等はそれなりに変更してあるが、むしろよい効果を生んでいて、 しかも泣きの場面が意外に押し付けがましくなく、じっくりと感動的。 残念な出来だった日本映画版 よりも、遥かによい出来。 ホームページ
たそがれ清兵衛 2002日本 (監)山田洋次 (出)真田広之、宮沢りえ、田中泯、小林稔侍、丹波哲郎、吹越満、 岸惠子、神戸浩、大杉漣、深浦加奈子 2003/06/29 深谷シネマ ◎ 江戸末期。妻を失い、幼い娘二人と老母と共に暮らす貧しい侍。 同僚の嘲りも意に介さず、地道な暮らしを守る清兵衛に、 剣豪との果たし合いの藩命が下されてしまう。 うらぶれた容姿ながら、いざ真剣勝負での緊迫感は凄まじくまさに命懸けで、 だからこそやつれて戻った清兵衛を迎える場面で、湧き上がる感動は絶大。 生きてゆくことの悲しみの中に、人それぞれが見出す幸福のあり方がある。 ホームページ
ラスト・プレゼント 2001韓国 (監)オ・ギファン (出)イ・ヨンエ、イ・ジョンジェ、クォン・ヘヒョ、イ・ムヒョン 2003/06/21 深谷シネマ ◎ どうしてこんなに泣けてしまうのだろう。 2度目の鑑賞なのだが (一度目は2003/01/18を参照)、 話が分かっている分だけ、展開の予感だけで既に涙が出ている始末。 主演のイ・ヨンエさんは見とれるほど綺麗で、 気持ちをなかなか素直に出せないところに共感させられ、 憎めない詐欺師コンビはいい味を出していて、 最後の最後まで感動的な場面の連続で、 悲しい物語なのに心は温まる。 ホームページ
ホテル・ハイビスカス 2002日本 (監)中江裕司 (出)蔵下穂波、余貴美子、照屋政雄、平良とみ、ネスミス、和田聡宏、 亀島奈津樹、登川誠仁、大城美佐子 2003/06/17 シネマライズ ◎ 沖縄本島、客室が1つしかない安宿「ホテル・ハイビスカス」を営む家族の姿を、 天真爛漫で腕白な小学生の娘を中心に描く。 米軍基地からの轟音や銃声が絶えない沖縄の現実をしっかり見据えつつも、 それら全てをおおらかに包み込むような沖縄の空気と太陽の下、 替歌を口ずさみながらパワフルに大冒険へと乗り出す主人公の姿には、 心から元気付けられる。 前作「ナビィの恋」と肩を並べる大傑作。 ホームページ
カンダハール 2001イラン=フランス (監)モフセン・マフマルバフ (出)ニルファー・パズイラ、ハッサン・タンタイ、サドユー・ティモリー、ハヤトラ・ハキミ 2003/06/08 深谷シネマ ○ 戦下のアフガニスタン。 自殺を仄めかす妹の残るカンダハールへと急ぐ女性の困難な旅程と、 そこで見る祖国の極限状況。 ブルカを強いられた女性たち、地雷と義足、飢えと病、人間不信。 あまりに絶望的な状況下に、「希望」を見出すことの意味。 重い映画だが、こう言う世界を認識できるだけでも貴重なもの。 上映後、アフガニスタン出身の 江藤セデカさん のトークあり。現在の実情は随分よくなっているようだ。
キューポラのある街 1962日本 (監)浦山桐郎 (出)吉永小百合、浜田光夫、北林谷栄、菅井きん、吉行和子、東野英治郎、杉山徳子、鈴木光子、加藤武 2003/05/24 深谷シネマ ◎ 鋳物の町・川口(埼玉)の貧しき職人一家。 失職し荒れる父親を前に、非行寸前の弟たちと、高校進学を控え思い悩む長女。 新国家・北鮮に帰国してゆく朝鮮人家族との交友、 所得倍増のスローガン、労働組合・労働歌、 その時代を体感させる場面が続き、希望的な終幕は感動的。 以後40年を経た現在、貧しさからは確かに逃れたけれども、 何と希望の持てない時代になってしまったことか。
愛と死をみつめて 1964日本 (監)斉藤武市 (出)吉永小百合、浜田光夫、笠智衆、原恵子、内藤武敏、宇野重吉 2003/05/24 深谷シネマ ○ 顔面軟骨肉腫に侵された若い女性と、 彼女を見守り励まし続ける大学生との、悲しき純愛の物語。 意を決して受けた手術の甲斐もなく病状は悪化、 しかし電話口で苦痛を必死で隠す女性の姿は痛々しい。そしてついに訪れる最期。 登場人物たちの端正な言葉遣いの美しさも印象的。 上映前には吉永さんご本人から深谷シネマに贈られたメッセージの放送もあって、 何だか凄いことだ。
おばあちゃんの家 2002韓国 (監)イ・ジョンヒャン (出)キム・ウルブン、ユ・スンホ 2003/05/10 岩波ホール ○ 傑作「美術館の隣の動物園」の監督の新作。 ド田舎のおばあちゃんの家にしばらく預けられることになった都会の男の子。 貧しく口も利けない文盲の祖母をバカにしてわがままの限りを尽くす孫に、 しかし祖母は黙って愛情を尽くす。 前半での子供の悪ガキぶりが目に余る分だけ、最後のバスの場面には泣かされる。 老人を尊重するはずの韓国の、現代の実情は意外。 ホームページ
なごり雪 2002日本 (監)大林宣彦 (出)須藤温子、三浦友和、ベンガル、宝生舞、細山田隆人、反田孝幸、左時枝 2003/05/04 深谷シネマ ◎ 彼女の寄せる想いを知りながらも、それを踏みにじったあの日。 それから28年、危篤の彼女を前に、男は自分の過ごしてきたあの頃を振り返る。 主人公たち3人それぞれが生きてきた歳月に秘められた悲しみと痛みを思い、 見終わった直後よりも、時間が経った今になってじわじわと重みが増してきている。 舞台となった大分・臼杵の風景を、是非いつか自分の足で歩いてみたい。 ホームページ
星に願いを。 2002日本 (監)冨樫森 (出)竹内結子、吉沢悠、高橋和也、中村麻美、國村隼、牧瀬里穂、伊藤祐子 2003/04/26 WMC熊谷 香港映画 「星願 あなたにもういちど」(1999) のリメイクで、この世に戻された数日間に想いを伝えたい物語は大筋で同じ。 香港版はロマンティックな寓話に仕上がっていたが、 日本版は現実的な物語に仕立てようとしてやや無理があり、 セシリア・チャンの号泣から見ると竹内さんは抑え気味だ、 などと思いつつも結局はしっかりと泣かされてしまっている自分が情けない。 ホームページ
折り梅 2002日本 (監)松井久子 (出)原田美枝子、吉行和子、トミーズ雅、加藤登紀子 2003/04/20 深谷シネマ ○ 同居をはじめた老いた義母に見え始めた痴呆の兆候に、 世話する嫁の忍耐は限界に達し、家族は崩壊寸前。 しかし、義母の描く絵をきっかけに、家族の意識が変容してゆく。 前半の家族の苦悩は痛々しい分だけ、それを乗り越えてゆく姿には救われる。 やや出来過ぎの感もあるが、それでも非常な感動作になっているのは、 実話に基づいているためもあるだろう。 ホームページ
バスを待ちながら 2000キューバ=スペイン=フランス=メキシコ (監)フアン・カルロス・タビオ (出)ウラジミール・クルス、タイミ・アルバリーニョ、ホルヘ・ペルゴリア 2003/04/19 シネマサークルおがわ ○ いつになってもバスが来ない、キューバの片田舎のバスターミナル。 待ちくたびれて苛立つ乗客たちは、やがて協調して壊れたバスの修理を試み、 待合所を居心地よく改修しながら、次第に家族のように打ち解けてゆく。 夢のような暮らしの結末は少々悲しいが、それでも心は温まる。 体制批判をしっかり織り込んであるのもよい。 地元の鑑賞会 シネマサークルおがわでの上映。 ホームページ
パイナップル・ツアーズ 1992日本 (監)真喜屋力、中江裕司、當間早志 (出)平良とみ、兼島麗子、新良幸人、富田めぐみ、 利重剛、宮城祐子、津波信一、仲宗根あいの、藤木勇人、洞口依子 2003/04/18 BOX東中野 ○ 舞台は沖縄のひなびた島。 声が出なくなって島に戻ったオペラ歌手、 沖縄娘との結婚を余儀なくされた本土の男、 観光開発推進の波と眠れる不発弾、 3つの物語からなる(日本映画と言うより)沖縄映画。 ウチナーグチには、標準語字幕付き! 沖縄らしい鷹揚とした気分に浸れる。 ナビィの恋に繋がる場面も散見。 なお、上映館BOX東中野は、 これを最後に閉館とのこと。残念。
中国の小さなお針子 2002フランス(中国語) (監)ダイ・シージエ (出)ジョウ・シュン、チュン・コン、リィウ・イエ、ツォン・チーチュン 2003/03/27 ル・シネマ ○ 文化大革命期の中国、下放政策で山奥の寒村に送られた2人の若者。 そこで出会った可憐な村娘に恋した若者は、 その文盲の娘を啓蒙すべく、禁断の西洋書を読み聞かせるが、 そのことは予想外の展開を招くことになる。 いつの間にか若者たちの思惑をも越えて歩み出る娘の力強さと、 むしろ取り残されてしまった若者たちの悲哀。 悲しい時代背景にも関わりなく、牧歌的な中国の風景が美しい。 ホームページ
UNLOVED 2001日本 (監)万田邦敏 (出)森口瑤子、仲村トオル、松岡俊介 2003/03/24 高崎映画祭 ◎ 平凡な今の生活を守る30代半ばの独身女性と、 新進のベンチャー企業を率いる若き社長、 彼女と同じ古アパートの階下に住む冴えない運送会社員、 それぞれの価値観を巡る議論の応酬。 自分らしく生きることが、相手に望みを託すことが、互いを追い詰めてしまう。 交わされる対話はかなり観念的だが、 まさに自分自身にも刃先を突きつけられているようで、強烈な緊張感。 第17回高崎映画祭にて。 ホームページ
水の女 2002日本 (監)杉森秀則 (出)UA、浅野忠信、HIKARU、小川眞由美 2003/03/24 高崎映画祭 何かにつけて雨に見舞われる女。 雨の日に父親と婚約者を一度に亡くし、傷心の旅に出ていた女が家に戻ると、 見知らぬ男が居着いていた。火を見ると落ち着くと言うその男と、 共同で家業の銭湯を再開させ、二人は次第に関係を深めてゆく。 浅野さんの役の雰囲気から言ってヘンな映画だろうと想像していたが、 やはり(よい意味で)ヘンな映画だった。 第17回高崎映画祭にて鑑賞。 ホームページ
アレクセイと泉 2002日本 (監)本橋成一 2003/03/15 深谷シネマ ○ チェルノブイリ事故で放射能に侵された寒村。 不思議に放射能が検出されない泉と、 老人ばかりの村に一人残って働く若者をめぐる、哲学的なドキュメンタリー。 馬・犬・豚・鶏・鴨・猫など動物たちと共にある、自給自足の暮らし。 運命を受け入れて地元で淡々と生きてゆく若者の姿。 我々が失ってしまった大切なものの大きさ。 そしてこの風景もやがて失われてしまうのだ。 ホームページ
宋家の三姉妹 (宋家皇朝) 1997香港=日本 (監)メイビル・チャン (出)マギー・チャン、ミシェール・ヨー、ヴィヴィアン・ウー、ウィンストン・チャオ、ウー・シングォ、チャン・ウェン、エイレン・チン 2003/03/13 深谷シネマ ◎ 数年前に見た傑作(→1998/12/15)を、 地元で再映。 20世紀の中国の激動を、重要な社会的地位を占めた三姉妹を軸に描く、 壮大な歴史物語。 前回見た時には、目くるめく歴史の動きのスケールの大きさに圧倒させられたが、 今回改めて見て、時代の中で流し流され、 互いを思いながらも立場的に反目せざるを得なくなった姉妹の 悲劇の側面がより強く感じされ、前回をも上回る強い感動に襲われた。
戦場のピアニスト 2002ポーランド=フランス (監)ロマン・ポランスキー (出)エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン、フランク・フィンレイ、 モーリーン・リップマン、エミリア・フォックス 2003/02/27 熊谷シネプラザ21 ◎ 1939年、ナチス支配下に置かれたポーランド。 収容所への移送から逃れ、潜伏して生き延びた一人のピアニストの、 奇跡のようで実話に基づく物語。 潜伏場面の緊張感、迫害・虐殺場面のむごさ、廃墟と化した街の無残さ、 どれも強烈で、しかし物語は善悪問わず冷徹に展開するのがよいところ。 音楽もしっかり聴かせる。英語による日常会話が不自然なことだけが難点か。 ホームページ
ラベンダー (薫衣草) 2000香港 (監)イップ・カムハン (出)金城武、ケリー・チャン、イーソン・チャン、チャン・ペイペイ、 ヴィンセント・コク、テレンス・イン 2003/02/21 シネ・リーブル池袋 恋人を喪い悲嘆に暮れるアロマ・セラピストの女性が、 屋根を突き破って天から落ちてきた天使によって、癒されていく物語。 「世界の涯てに」 「アンナ・マデリーナ」に続く 金城武&ケリー・チャン主演映画だったが、 ストーリーはロマンチックではあるもののいささか荒唐無稽で、 二人の主人公の心の動きも何だか不可解で、残念ながら少々期待外れ。 ホームページ
船を降りたら彼女の島 2003日本 (監)磯村一路 (出)木村佳乃、大杉漣、大谷直子、照英、村上淳 2003/02/16 有楽町スバル座 ◎ 愛媛の島に数年ぶりで東京から帰郷した女性が、 故郷の風景や父母に見守られる中で、少女時代の記憶を振り返りながら、 やがて新たに歩み出す力を得てゆく。 穏やかな海辺の情景も、感傷的なほどに懐かしい日々への追憶も、 あまりに慌し過ぎる我々の日常に贈られた清涼剤のようだ。 これを見てから何だか、遠くを見ながらのんびりしたい気がして仕方ない。 ホームページ
この素晴らしき世界 2000チェコ (監)ヤン・フジェベイク (出)ボレスラフ・ポローフカ、アンナ・シィシェコヴァー、 ヤロスラフ・ドゥシェク、チョンゴル・カッシャイ 2003/01/25 シネマサークルおがわ ◎ 第二次大戦中のチェコで、ユダヤ人の旧友を匿った夫婦が、 過酷な状況を必死の思いで乗り切るが、 やがて戦争が終わり、体制の逆転で更なる苦境が訪れる。 異常な時代の中を命懸けで生き抜く人間の、 したたかな力強さを感じる、凄い映画。 この素晴らしき世界、という邦題の、何と意味深長なことか。 地元の鑑賞会 シネマサークルおがわでの上映。 ホームページ
ラスト・プレゼント 2001韓国 (監)オ・ギファン (出)イ・ヨンエ、イ・ジョンジェ、クォン・ヘヒョ、イ・ムヒョン 2003/01/18 シャンテ・シネ ◎ 売れないコメディアンの夫を、陰では応援しつつも、表では素直になれない妻。 しかし夫婦に残された時間はもう長くはなかったのだ。 喜劇や詐欺師たちの笑いの部分と、夫婦が互いを思い遣る悲しい部分との相乗効果で、 特に最後の演じられるパントマイムの場面など、圧倒的な感動が押し寄せて、 もう涙を止められず、しかも余韻は爽やかな傑作。 ホームページ
ニュー・シネマ・パラダイス 1989イタリア=フランス (監)ジュゼッペ・トルナトーレ (出)フィリップ・ノワレ、ジャック・ペラン、サルバトーレ・カシオ 2003/01/05 深谷シネマ 5年前に見た大傑作が、 地元で再映。 但し、前に見た「完全オリジナル版」に比べて、 今回のものは「通常版」で、時間的にも1時間近く短いもの。 そのため、女性と再会する場面などがごっそりカットされていて、 それが非常に切ないシーンだっただけに、あっけなくて物足りない気もしたが、 それでも結局かなりの感動あり。

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(紺野裕幸)

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