映画寸評 2004年

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2004年 私的ベスト3: ラブストーリーきょうのできごと誰も知らない、 (次点) 解夏深呼吸の必要


◎=絶賛 ○=よい
2004
タイトル データ 鑑賞日 感想
死ぬまでにしたい10のこと (my life without me) 2002スペイン=カナダ (監)イザベル・コヘット (出)サラ・ポーリー、スコット・スピードマン、マーク・ラファロ、 レオノール・ワトリング、デボラ・ハリー 2004/12/28 深谷シネマ ◎ 腹痛で医師の診察を受けた結果、余命数ヶ月と診断された若い女性。 冷静さを取り戻した彼女は、自分が今したいことをリストアップし、 夫や幼い娘にも病状を隠したまま、それらを一つずつ遂行してゆく。 最後に、彼女の残した道筋の行方が描かれた後、 浮かび上がる原題「my life without me」の何と意味深いことか。 この主題にも関わらず、重苦しくなく、むしろ軽快に仕上げてあるのもよいところ。 ホームページ
ラブストーリー (The Classic) 2003韓国 (監)クァク・ジェヨン (出)ソン・イェジン、チョ・スンウ、チョ・インソン、イ・ギウ 2004/12/23 深谷シネマ 2004/02/072004/06/30 に続いて、3度も劇場で見てしまった映画はこれが初めて。 しかも、1度目よりも2度目の方が、2度目よりも3度目の方が、 一層泣けてしまった。今年見た映画の中で、迷わずこれがベスト1。 ホームページ
僕の彼女を紹介します (windstruck) 2004韓国 (監)クァク・ジェヨン (出)チョン・ジヒョン、チャン・ヒョク 2004/12/19 109シネマズ高崎 ◎ 熱血女性警察官と、善良なる高校教師は、 誤認逮捕をきっかけに出会い、いつしか恋に落ちるが、 二人には様々な運命が待ち受けていた。 スリリングな銃撃シーンから泣かせるロマンスまで、とことん楽しませる、 よく練られた物語。感動のラスト、かと思いきやまだ続きがあって、 今度こそ感動のラスト、かと思いきやまだ続きがあって、その度に涙を絞られた。 監督の前作を知る人には分かる、ちょっとした仕掛けもあり。 ホームページ
アフガン零年 (OSAMA) 2003アフガニスタン (監)セディク・バルマク (出)マリナ・ゴルバハーリ、モハマド・アリフ・ヘラーティ、ゾベイダ・サハール 2004/12/19 シネマテークたかさき ○ タリバン圧政下のアフガニスタン。 父や兄を戦で失った少女は、祖母や母との生活を支えるために、 髪を切り男と偽って仕事を得るが、タリバンの宗教学校に捕らえられた挙句、 女であることがばれてしまう。少女の感じる恐怖と緊張感がひしひしと感じられ、 しかも残酷な結末は非常につらいものだが、 こう言う現実を見て知っておくことは大切なことと思う。 ホームページ
恋文日和 2004日本 (監)大森美香、須賀大観、永田琴恵、高成麻畝子 (出)村川絵梨、弓削智久、玉山鉄二、塚本高史、小松彩夏、田中圭、中越典子、大倉孝二 2004/12/12 アミューズCQN ◎ 恋文にまつわる4つの物語。 拾った手紙の純情さに打たれて無記名で返事を出す『あたしをしらないキミへ』、 死を仄めかす同級生からの手紙に困惑する『雪に咲く花』、 遺されたビデオレターから亡き兄の未知の一面を知る『イカルスの恋人たち』、 便箋店主と従業員それぞれの秘めた恋心の行方『便せん日和』、 全く違う傾向の作品それぞれがよく出来ていて、1度で4回分楽しめる感じ。 元々手紙好きな私には、ほんのり心が温まる佳作。 大倉さんが実にいい味を出している。 ホームページ
雨鱒の川 2004日本 (監)磯村一路 (出)玉木宏、綾瀬はるか、中谷美紀、阿部寛、松岡俊介、柄本明 2004/12/12 アミューズCQN ○ 北海道の田舎町。口の利けない少女と、絵を描くのが好きな少年。 少年だけは少女の「言葉」を聞くことができた。 やがて成年になって、男は画家として上京するが、 その間に女への結婚話が進められてしまう。 物語は繊細に描かれていてよろしいのだが、 どうも私は、主人公よりも報われなかった男の方に同情が向いてしまって、 物悲しい印象で終わってしまった。 ホームページ
オアシス (OASIS) 2002韓国 (監)イ・チャンドン (出)ソル・ギョング、ムン・ソリ 2004/12/11 深谷シネマ ◎ 重度の脳性麻痺で身体や発声の自由が利かない女性と、 やや知能障害のある前科者の男とが、出会い、互いに愛し合うようになるが、 家族を含め周囲の目はあまりに冷たく、二人の本当の関係を理解しようとしない。 主演二人の真に迫る演技がとにかく強烈で、 同じ二人の主演による先日の「ペパーミント・キャンディー」 からの変貌ぶりも含めて、本当に物凄い俳優たちだ。 終盤の二人の壮絶な愛の表現には、頭をガツンとやられた気分。 ホームページ
ペパーミント・キャンディー (peppermint candy) 1999韓国 (監)イ・チャンドン (出)ソル・ギョング、ムン・ソリ 2004/12/08 深谷シネマ 2000/10/28以来4年振りの鑑賞。 自暴自棄になって鉄道自殺しようとする男。 その人生のいくつかの重要な瞬間を、時間を遡りながら回想してゆく。 辿り着いた先には、20年前の初々しく幸せな初恋の頃があった。 逆の時系列で、次第に明らかになる過去の出来事によって、 後から彼の生き様の理由が判ってくる、絶妙の構成。 しかし、全てが後の祭なのが、見ていて辛いところ。 ホームページ
イルマーレ (Il Mare) 2000韓国 (監)イ・ヒョンスン (出)イ・ジョンジェ、チョン・ジヒョン 2004/12/04 深谷シネマ 2001/09/24から3年振りの鑑賞。 1997年に生きている男と、1999年に生きている女、 不思議な郵便受けのせいで、2年だけ時間のずれた手紙を交し合うことになった二人。 互いに会いたくても会うことのできない二人は、2年後に会う約束をする。 イルマーレと名付けられた海辺の家やクリスマスツリーなど、映像は洗練の極みだが、 二人の交わす手紙の詩的な美しさも格別で、 電話や電子メールのスピード感ではあり得ないもの。 参考ページ
ロード88 出会い路、四国へ 2004日本 (監)中村幻児 (出)村川絵梨、小倉久寛、須藤理彩、津田寛治、黒田福美、長谷川初範 2004/11/30 シネアミューズ ○ 白血病で余命が長くないことを知って四国88ヶ所巡りに挑む16歳の少女、 TVの企画で自転車でのお遍路を強いられる落ち目のお笑い芸人、 少女に自分の亡き娘の面影を重ねる訳アリの中年男、 それぞれの道中と心の変化。 成し遂げれば何かが変わる、と本気で願う少女の姿を見ていて、 そうあってくれ、頑張れ、と心の中で本気で祈ってしまう。 いつか自分もあの道程を巡ってみたいし、そうでなくても四国に行ってみたい。 ホームページ
オーバー・ザ・レインボー (OVER THE RAINBOW) 2003韓国 (監)アン・ジヌ (出)イ・ジョンジェ、チャン・ジニョン、コン・ヒョンジン、オム・ジウォン 2004/11/30 キネカ大森 ○ 交通事故で最近の記憶を失った男が、 それまでずっと愛し続けていた「誰か」の記憶の痕跡を求めて、 学生時代の女友達に協力を願うが、 少しずつ「誰か」への手掛かりが得られてゆく一方で、 親身な女友達に男の心は引かれてゆく。 交通事故で記憶喪失と言う設定自体がちょっと都合良過ぎる気もするが、 現在と過去とを往き来しながら、二人の心の揺らぎが繊細に描かれるために、 最後には爽やかな感動あり。 ホームページ
八月のクリスマス 1998韓国 (監)ホ・ジノ (出)ハン・ソッキュ、シム・ウナ 2004/11/29 深谷シネマ 1999/06/05から約5年振りに見た、 不滅の大傑作。 夏から冬への移ろいの中で、二人で過ごした大切な時間が、 繊細極まりなく綴られてゆく。 主人公2人の穏やかな微笑の中に、想いの表出が抑制されているからこそ、 内から湧き起る感動は計り知れない。 悲しすぎる程に切ない結末なのに、どうしてこんなに心が温まるのだろう。 深谷シネマ「韓国映画特集」(私自身も少々関与している)での上映。 ホームページ
お父さんのバックドロップ (Backdrop del mio PaPa) 2004日本 (監)李闘士男 (出)宇梶剛士、神木隆之介、南方英二、南果歩、生瀬勝久 2004/11/27 名演小劇場 ◎ 関西の古アパートに祖父と住む、男やもめの中年プロレスラーと、 生真面目な小学生の息子。 しかし息子はプロレスも父も大嫌いで、級友にも父のことをに隠している程。 息子からの信頼を回復したい一心で、父は世界チャンピオン相手に、 無謀としか思えない闘いへと挑む。 父と子の配役がぴったりはまっているだけに、試合の場面はでは滂沱の涙。 原作の故・中島らもさん(端役で出演)も「涙で顔がグシャグシャだった」そうで、 今となっては素晴らしい追悼になったと思う。 ホームページ
みなさん、さようなら (Les invasions barbares) 2003年カナダ=フランス (監)ドゥニ・アルカン (出)レミ・ジラール、ステファン・ルソー、マリー=ジョゼ・クローズ、ドロテ・ベリマン 2004/11/19 深谷シネマ ○ 余命幾許もない父親の許に、母に乞われて呼び戻された、 証券マンとして成功した息子。 奔放な生き方をしてきた父を、息子は毛嫌いしてきたが、 母の願いに応じて、父の最期を楽しく演出することに精魂を傾ける。 息子がどうして父を許せるに至ったのか理解しづらかったし、 父親が選んだ最期についても正直言って是非の判断が付け難いが、 その単純でないところがフランス映画的なのかも。 ホームページ
機関車先生 2004日本 (監)廣木隆一 (出)坂口憲二、倍賞美津子、大塚寧々、伊武雅刀、堺正章 2004/11/14 深谷シネマ ○ 瀬戸内海の離島に臨時教員として赴任した、口の利けない青年教師。 島の権力者たちは「よそ者」に冷酷だが、子供たちとは徐々に打ち解けてゆく。 いかにも紋切型の人物造形など恐らく原作に起因する難点はあるし、 主演の坂口さんの表現の幅がやや乏しい気もするが、 それでも涙涙の感動作になっているのは、子供たちの熱演のお蔭と思う。 最後の主題歌はいかにも場に合わない気が。 ホームページPRページ
父と暮らせば 2004日本 (監)黒木和雄 (出)宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信 2004/11/13 岩波ホール ◎ ヒロシマで父を失ってから3年、「生き残った」ことへの自責の念を抱える娘のもとへ、 父(の亡霊)がひょっこりと帰って来て、 幸せになることを自ら拒む娘の心を和らげようとし始める。 ほぼ主役2人の対話から構成。ちょっと微笑ましい場面なども挟んであるが、 戦時の回想とその後の苦悩にはずっしりとした重みがある。 特に宮沢りえの演技はまさに迫真で、被爆者として揺らぐ心模様に、 こみ上げる感動あり。 ホームページ
ターンレフト ターンライト (向左走・向右走) 2003香港 (監)ジョニー・トー、ワイ・カーファイ (出)金城武、ジジ・リョン、エドマンド・チェン、テリー・クワン 2004/11/03 新宿シネマミラノ ○ 互いに気付かないだけで、実はいつもすれ違っていた二人。 台北の公園で偶然知り合ったヴァイオリン奏者と翻訳家は、 子供の頃互いに憧れていた相手だった。 折角交換した電話番号のメモが、雨に滲んで判読できなくなり、 連絡手段を見出せない二人の焦燥と切なさが切実。 いかにも出来過ぎの話だが、 最初からロマンティックなおとぎ話と分かるので、安心して楽しめる。 久し振りに王道と言う感じの香港映画に会えて嬉しい。 ホームページ
春夏秋冬そして春 2003韓国 (監)キム・ギドク (出)オ・ヨンス、キム・ジョンホ、キム・ヨンミン、キム・ギドク 2004/11/03 ル・シネマ ◎ 人里離れた湖の水上に浮かぶ寺、そこで暮らす老僧と幼い小僧。 この小僧の人生の節目節目を、四季のうつろいになぞらえて詩的に描いてゆく。 同監督の「魚と寝る女(→20041010)」 と舞台設定(や一部の人物設定)が酷似しているが、 今回は残虐な場面がない一方で、やはり全体として台詞は抑えられていて、 静寂の中に情念を押し殺したような緊張感が漂う。 キム・ギドク監督ご本人も後半に主役として登場。 ホームページ
菊花の香り〜この世でいちばん愛されたひと〜 (Scent of Love) 2003韓国 (監)イ・ジョンウク (出)チャン・ジニョン、パク・ヘイル、ソン・ソンミ 2004/11/03 池袋シネマロサ ○ 学生時代の先輩女性に恋をした後輩の青年。 いくつかの不幸を乗り越えて結ばれた二人だが、 女性は妊娠と同時に不治の病になり、しかしそのことを男に隠し通そうとする。 展開があまりにも読めてしまう気はするものの、悲しいほどの純情さが心に沁みる。 母親がほんの一瞬でも子供の顔を見ることが出来て本当によかったと思い、 ラストが悲しいけれども希望的に美しく終わるので救いがある。 ホームページ
グッバイ、レーニン! (GOOD BYE, LENIN!) 2003ドイツ (監)ヴォルフガング・ベッカー (出)ダニエル・ブリュール、カトリーン・サーズ、チュルバン・ハマートヴァ、マリア・シモン 2004/11/01 深谷シネマ ◎ 1988年の東ベルリン。民主化デモに加わる息子の姿を見て卒倒し、 昏睡状態に陥った母は、数ヶ月後に奇跡的に回復するが、 その間にベルリンの壁は崩壊し、社会は一転していた。 母へのショックを抑えるため、息子はあたかも旧体制が続いているかように 必死の演出を試みる。 一般市民の視点から見て東西ドイツの統一がどんなものだったのか実感できる と共に、息子と母の懸命の「嘘」は感動的でもある。 落ち着かない音楽も効果大。 ホームページ
深呼吸の必要 2004日本 (監)篠原哲雄 (出)香里奈、谷原章介、成宮寛貴、金子さやか、久遠さやか、長澤まさみ、大森南朋、 北村三郎、吉田妙子 2004/10/28 深谷シネマ 2004/06/12以来2度目の鑑賞。 沖縄の広大なさとうきび畑の刈り取りアルバイトに応募した、若者たちの35日間。 捗捗しくない作業状況にも、「なんくるないさ」 「ならんあれぇ、はじめからしぃなおしぇしむさ」と宣う、オジイとオバアの勁さ。 それに応えるように変わってゆく若者たちの表情。 もともと「共同作業」モノに弱い私は、終盤ほとんどじわじわ泣き通し。 ノベライズ版もご一読あれ。 ホームページ
海猿 2004日本 (監)羽住英一郎 (出)伊藤英明、加藤あい、海東健、香里奈、伊藤淳史 2004/10/23 深谷シネマ ○ 海上保安庁の「潜水士」を目指す若者たちの、厳しい訓練の日々。 円満には行かない人間関係の中、いくつかの試練を乗り越えて、 男たちの謳う「人命救助」が建前から本音へと変化してゆく。 潜水映像や巡視船など、海の場面は迫力満点で、 少々格好付け過ぎの印象もあるが、なかなかの感動作ではある。 最後の最後に「続編」が仄めかされる。 ホームページ
白神の夢 −森と海に生きる− 2003日本 (監)小池征人 2004/10/16 深谷市民文化会館 世界自然遺産に選定された秋田県・白神山地の、森と海と 全体としての生態系の再生に取り組む人々の姿を捉えた、記録映画。 言いたいことは分かるのだが、 如何せん3時間20分という上映時間はだらだらと散漫で長過ぎ。 映画として料金を取って客に見せようとするつもりなら、 もう少し構成を工夫すべきではないか。 ホームページ
誰も知らない 2004日本 (監)是枝裕和 (出)柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子、韓英恵、YOU 2004/10/16 深谷市民文化会館 ◎ 父親の違う4人の幼い兄妹を置き去りにしたまま、ついに母親は帰って来ない。 子供たちは、わずかな現金を頼りに、狭いアパートの中で 閉じた生活を余儀なくされる。主題は非常に重く悲劇的だが、 子供たちそれぞれの生きている姿を見ながら、どうしようもないほど心が揺さぶられ、 空港に向かう場面の辺りからは何故だか体が震えて止まらなかった。 タテタカコさんの挿入歌もあまりにも絶妙で忘れ難い。 ホームページ
心の羽根 (Des plumes dans la tete) 2003ベルギー (監)トマ・ドゥティエール (出)ソフィー・ミュズール、フランシス・ルノー、ユリッス・ドゥスワーフ 2004/10/14 深谷シネマ ○ 第1回花の街ふかや映画祭 のベルギー映画特集。 夫との情事に耽り気味でつい目を離した隙に、幼い息子は失踪し、 やがて死が確認されるが、それを受け入れられない母親は、 ついに気が変になり、息子の幻影と共に過ごすようになる。 非常に重い物語で、特に再生への心境の変遷は理解しづらいが、 詩的で時にグロテスクな映像には緊張感が漂い、特にラスト(スーパー店内)は印象的。 ホームページ
ぷりてぃ・ウーマン 2002日本 (監)渡邊孝好 (出)淡路恵子、風見章子、正司照枝、草村礼子、絵沢萠子、西田尚美 2004/10/11 深谷シネマ ○ 市民祭の出し物として、大胆にも舞台演劇に取り組むことにした、 お年寄りクラブのおばあさんたち。 シナリオライター志望の孫娘を強引に巻き込んで、 盛り上がっている彼女らに、周囲の目は少々冷たいが、もう勢いは止まらない。 楽しくてしかもちょっと泣かせるこの物語は、実話に基づいているとのこと。 音楽がちょっと通俗的で安っぽいのが難点。 ホームページ
ワンダフルライフ 1999日本 (監)是枝裕和 (出)ARATA、小田エリカ、寺島進、内藤剛志、谷啓、伊勢谷友介 2004/10/09 深谷シネマ ○ 人は死んだ後、自身の人生の中で最も大切な思い出を一つだけ選んで、 その記憶だけを胸に旅立つことになるという。 その「ひとつ」を選ぶことに迷い、一生を振り返る、さまざまな人々の姿。 前回見た時(→1999/05/04) もそうだったが、自分だったらどうするだろう、と考えてしまい、長く後を引く物語。 「死」がテーマなのに、心に残るこの温かい気持ちは何なのだろう。 ホームページ
スウィングガールズ 2004日本 (監)矢口史靖 (出)上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、豊島由佳梨、平岡祐太、竹中直人、白石美帆 2004/10/03 WMC熊谷 ◎ ブラスバンドの代役に駆り出された音楽ド素人の女子高生たちが、 ビッグバンドジャズの演奏にのめり込んでゆく。 楽器や歳が違っても、かつてやはり音楽に夢中だった私は、 当時の高揚感が心の蘇ってきて、見せ場のコンサート場面には震える程に感動。 女優たち本人が本当に(吹き替えなしで)演奏しているのも凄い。 話は少々無茶だし、連発するギャグはかなりバカバカしいが、 演奏のカッコよさですべて許せてしまう。 ホームページ
珈琲時光 2003日本 (監)侯孝賢 (出)一青窈、浅野忠信、萩原聖人、余貴美子、小林稔侍 2004/09/17 テアトルタイムズスクエア シングルマザーになることを決めた娘と、 それでも彼女に想いを寄せる男友達、そして気を揉む両親。 周囲の人々の心配をよそに、当の主人公があまりに のほほんと捉えどころがなく、心の揺らぎがまるで伝わらず、 私はどうにも共感できなかった。 東京の街の風景が折角よい感じで写されているのに、 ただそれだけになってしまっていて、いささか残念。 ホームページ
風音 2004日本 (監)東陽一 (出)上間宗男、加藤治子、つみきみほ、光石研、北村三郎、吉田妙子 2004/09/17 ユーロスペース ○ 沖縄の風葬場に祀られる、海からの風によって不思議な音を出す頭蓋骨。 最近音がしなくなったと地元の人がいぶかしむ中、 本土から一人の老婦人がある特攻兵の面影を求めて訪ねてくる。 どうして万年筆を見せなかったのか、どうして手紙を千切ってしまったのか、 どうして事件を隠蔽してしまったのか等々、 意外な展開に色々と考えさせられ、深い余韻が残る。 所謂「沖縄音楽」が全く排されているのも斬新。 ホームページ
きょうのできごと a day on the planet 2003日本 (監)行定勲 (出)田中麗奈、妻夫木聡、伊藤歩、柏原収史、三浦誠己、石野敦士、松尾敏伸、池脇千鶴、 山本太郎、椎名英姫、北村一輝、派谷恵美、佐藤仁美、大倉孝二、津田寛治 2004/08/21 深谷シネマ 2004/03/21に続き2度目の鑑賞。 何と言うこともないささやかな日常と、 たまたま時を同じくして起こっているいくつかの出来事とが、 実は何となくつながりがあって、 しかもそのことに当人たちは気付いていなくて、 そしてそのまま時が過ぎてゆく。 ささやかな日常を見つめる暖かい視線に、関西弁の柔らかな響きも相俟って、 えも言われぬ幸福感が心を満たしてくれる大傑作。 ホームページ
ジョゼと虎と魚たち 2003日本 (監)犬童一心 (出)妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新井浩文、江口徳子、藤沢大悟 2004/08/16 深谷シネマ 2004/04/09に続き2度目の鑑賞で、 1度目よりもずっと深く心に刻まれた。 足が不自由で家から出られない勝気な女の子と、奔放な学生生活を楽しむ男とが、 出会いの日から別れの日まで積み重ねてきた、 今となっては切なく懐かしい大切な日々。 最後に街角でうずくまって号泣する男と、電動車椅子で軽快に街を走る女と、 その対照も印象的。音楽もよろしい。 ホームページ
69 sixty nine 2004日本 (監)李相日 (出)妻夫木聡、安藤政信、金井勇太、太田莉菜、岸部一徳、柴田恭兵 2004/08/04 WMC熊谷 ○ 1969年、佐世保の進学校。 思想云々より、ただ女の子にもてたいばかりに、勢い余って 学校のバリケード封鎖を敢行した男子生徒たち。 遊び半分のつもりが警察沙汰になり、自宅謹慎になるものの、 そう簡単におとなしくなる筈もない。 かなり下品な個所も多々あるが、恋も闘争も何でもただ楽しんでしまっている 高校生の漲るエネルギーが、勢いよく描かれていて、愉快で痛快で気分爽快。 ホームページ
ホテルビーナス 2004日本 (監)タカハタ秀太 (出)草なぎ剛、中谷美紀、香川照之、市村正親、パク・ジョンウ 2004/07/27 深谷シネマ ○ 場末の町の古びた長期滞在用ホテル。 そこで共に暮らしつつも、互いに心を開かない人々それぞれの、悲しい過去と現在。 全編韓国語(日本語字幕付き)だが、舞台は韓国風では全くなく、 むしろ徹底して無国籍という感じに仕立てられている。 刻々と切り替わる脱色映像や音声は、かなり気取っていて気障の一歩手前だが、 属する所を見出せない主人公たちの印象にはふさわしい。 ホームページ
死に花 2004日本 (監)犬童一心 (出)山崎努、青島幸男、谷啓、宇津井健、長門勇、藤岡琢也、松原智惠子、星野真里 2004/07/24 高崎市文化会館 ○ 郊外の高級老人ホームに住む老人たち。 亡き友人の遺した手記には、銀行の地下金庫から現金を奪取すると言う 奇想天外な計画が書かれていた。乗り気になった老人たちは、 老体に鞭打って銀行ビル横の川原から横穴を掘りまくる。 かなり無茶な話なのだが、想像を上回る大胆な展開と、 すっかり楽しんでいる老人たちの表情に、実に晴れ晴れした気分。 高崎映画祭による企画上映。 ホームページ
アイデン&ティティ 2003日本 (監)田口トモロヲ (出)峯田和伸、中村獅童、大森南朋、マギー、麻生久美子 2004/07/24 高崎市文化会館 ◎ バンドブーム全盛期、時流に乗ってメジャーデビューしたロックバンドの4人組。 本物のロックを追求する理想と、売れ筋の曲を求められる現実との間で、 思い悩むそんな時、ふとロックの神様「デュラン」の幻が、 ハーモニカの音で語りかけてくる。 傾向は全然違うが、やはり音楽に打ち込んでいた時期があった自分には、共鳴度高し。 恋人役の麻生さんの明晰さが何とも頼もしい。 高崎映画祭による企画上映。 ホームページ
ブラザーフッド 2004韓国 (監)カン・ジェギュ (出)チャン・ドンゴン、ウォンビン、イ・ウンジュ、チェ・ミンスク 2004/07/23 WMC熊谷 ○ 朝鮮戦争に兵士として徴用された兄弟。 弟を生還させるために兄はあらゆる手を尽くすが、 その自己犠牲的な振る舞いに弟は反発し、兄弟は決裂してしまう。 兵士の視線で見た壮絶な戦闘場面は、迫力を通り越して恐怖を実感させ、 直視に耐えないその惨状に、戦争とは「殺し合い」であることを再認識させらせる。 人間同士が憎み合わなければならないことの、悲しさと愚かさを思う。 ホームページ
永遠の片想い (恋愛小説 Lover's Concerto) 2003韓国 (監)イ・ハン (出)チャ・テヒョン、ソン・イェジン、イ・ウンジュ 2004/07/19 シネ・リーブル池袋 ○ アルバイト先の喫茶店にやってきた2人の女の子と親しくなった大学生の男。 3人は友人として楽しい日々を過ごすが、 友情と恋愛感情のバランスが揺らぎ始めた頃、3人の絶妙な関係に終わりが訪れ、 それから5年を経てようやく、男は彼女たちの消息と意外な事実を知る。 期待した程には泣けなかったが、 若くて純粋でやさしくて臆病だったあの頃の記憶が、切なく蘇る。 ホームページ
子猫をお願い (Take care of my cat) 2001韓国 (監)チョン・ジェウン (出)ペ・ドゥナ、イ・ヨウォン、オク・チヨン、イ・ウンシル、イ・ウンジュ 2004/07/19 ユーロスペース ◎ 高校時代に大の仲良しだった5人の女の子だが、 卒業後のそれぞれの職によって生活水準に開きが出てしまい、 久し振りに合っても、もうあの頃のようには一緒にはしゃげない。 馴れ合いの友情が終わってゆく様子が、残酷な程に真っ直ぐに描かれる。 青春映画風でありながら、社会生活の「現実」の重さが身に沁みて、 最後のGood Byeには複雑な心境。 画面上に打たれる携帯やタイプライターの文字が斬新。 ホームページ
赤い月 2004日本 (監)降旗康男 (出)常盤貴子、伊勢谷友介、香川照之、布袋寅泰 2004/07/10 深谷シネマ 満州で財を成し、敗戦で全てを失った日本人家族の流転を描いた、 なかにし礼の原作の映画化。 長大な原作では登場人物の心模様や時代背景がじっくりと描写されていたのに対し、 映画では話の粗筋をひたすら追うことに終始していて、 しかも大袈裟な場面ばかりを急いで詰め込んだ結果、 特に主人公の行動など唐突でただの身勝手にさえ思えてしまい、甚だ残念。 ホームページ
ラブストーリー (The Classic) 2003韓国 (監)クァク・ジェヨン (出)ソン・イェジン、チョ・スンウ、チョ・インソン、イ・ギウ 2004/06/30 深谷シネマ ◎ 35年前の母の悲恋と、現在の娘の恋。 2世代に渡る、運命的な恋愛の物語。 2004/02/07に続いて2度目の鑑賞で、 話の展開はすっかり分かっているにも関わらず、 エピソードの一つ一つがとても大切なものに思えて、 喜びと悲しみとが入り混じった涙が溢れて溢れて仕方なかった。 この美しい物語を、原題で「The Classic」と言い切っているのが嬉しい。 ホームページ
チベットの女/イシの生涯 (益西卓瑪) 2000中国 (監)シエ・フェイ (出)テンジン・ドカー、ラクチュン、オンドゥ、リンチェン・トゥンドゥプ、 ツェリン・ドジェ、パサン、チュンペー・ロサン、チョウ・ティエ 2004/06/26 深谷シネマ ○ チベットの農村。歌声の美しい村娘は、荘園の若旦那からの寵愛を受けるが、 ある日、放浪の行商人に略奪同然で連れ去られ、夫婦となることを余儀なくされる。 夫の放蕩、奪われた実の息子、幼馴染みの僧侶との再会、 波乱の年月を経て年老いた今、過去の全てを許容した女の、 慈愛の境地に感服させられる。 荒野や平原や湖、寺院や宮殿や街路などの風景も見もの。 ホームページ
恋愛小説 2004日本 (監)森淳一 (出)玉木宏、小西真奈美、池内博之、平山あや 2004/06/24 渋谷シネ・ラ・セット ○ 両親や親戚も同級生も、自分と深く関わった人が皆死んでしったことから、 以来自分を「死神」と思い、心を閉ざして生きてきた男。 しかし、ふと出会った女性と恋に落ち、 運命が変わるかのように思えたのも束の間、 突然彼女も病魔に侵されてしまう。 舞台の古風な洋館の印象もあって、ややミステリアスな展開だが、 これは(表題の通り)切ない恋愛の物語。 最後に見える希望の予感が嬉しい。 ホームページ
思い出の夏 (王首先的夏天) 2001中国 (監)リー・チーシアン (出)ウェイ・チーリン、チョン・タイション、リウ・シーカイ、リー・ワンチュアン 2004/06/24 新宿K's cinema ○ 中国の僻地の農村にやってきた映画撮影隊。 映画に出たくて仕方ない落第少年は、 熱烈なアプローチの甲斐あって助演の座を射止めるが、 本心とは逆の「都会に行きたくない」という台詞をどうしても言えず、 ついに役を降ろされてしまう。 ほのぼのとした雰囲気に仕立てつつ、 農村の老若男女誰もが都会に憧れている実態をしっかり描いていて、 牧歌的中国映画を皮肉っているようでもある。 ホームページ
HERO (英雄) 2002中国 (監)チャン・イーモウ (出)ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー、 チャン・ダオミン、ドニー・イェン 2004/06/18 深谷シネマ ○ 紀元前二百年、秦の王(始皇帝)に謁見した剣豪の語る、刺客たちとの決闘場面。 興味津々で聞き入っていた王だが、やがて男の語る嘘を見抜き、 物語は虚と実を交えて二転三転。 ストーリーはともかく、時間の大半を占めるアクションシーンでの、 華麗に宙を舞う刺客の動きや、CGを多用した豪勢な戦闘場面は、 壮絶でありながら、非現実的なまでの美しさを湛えている。 ホームページ
深呼吸の必要 2004日本 (監)篠原哲雄 (出)香里奈、谷原章介、成宮寛貴、金子さやか、久遠さやか、長澤まさみ、大森南朋、 北村三郎、吉田妙子 2004/06/12 WMC熊谷 ◎ 沖縄のさとうきび畑の収穫作業に雇われた、 それぞれ事情のありそうな若い男女たち。 ぎこちない人間関係の中、過酷な作業はなかなか捗らないが、 オジイとオバアの温厚さに包まれながら、 次第に若者たちの意識が変わり始める。 沖縄の大らかな風土の下、同じ目標に向かって一心不乱に作業する 若者たちの面差しに、グッと涙が込み上げてきた。 控え目に同伴する伸びやかな音楽もぴったり。 ホームページ
ほたるの星 2003日本 (監)菅原浩志 (出)小澤正悦、山本未來、菅谷梨沙子、八名信夫、樹木希林、余貴美子、役所広司 2004/06/11 新宿武蔵野館 ○ 山口の古い小学校に赴任した新任教師は、 ふとしたきっかけで、児童たちと共に蛍を育てることに。 同僚教師たちの冷ややかな視線を背に、 教師は児童たちと共に飼育に専心する。 飛び交う蛍はいくら何でも多過ぎとは思いつつも、 「再会」の喜びにどうしようもなく涙が溢れた。 子供たちを決して見捨てない、 こんな真直ぐな教師にめぐり合えた児童たちは何と幸せなことだろう。 ホームページ
天国の本屋〜恋火 2004日本 (監)篠原哲雄 (出)竹内結子、玉山鉄二、香里奈、新井浩文、香川照之、原田芳雄 2004/06/10 上野セントラル ○ 天上界では、何故か天国の本屋の店員になってしまっていた青年が、 かつて憧れていたピアニストの女性に出会う。 一方地上界では、若者たちが花火大会の開催に奮闘中、 幻の花火を作っていた職人を探し出す。 かつて恋人同士だった職人とピアニスト、二人が位置する別々の世界の物語が、 最後に呼応し合い、花火とピアノの相乗効果で圧倒的感動あり。 有り得ない設定とは思いつつも、ほんのり心が軽くなるよう。 ホームページ
世界の中心で、愛をさけぶ 2004日本 (監)行定勲 (出)大沢たかお、柴咲コウ、長澤まさみ、森山未來、山崎努 2004/06/08 WMC熊谷 ○ 結婚を目前にふいに失踪してしまった婚約者の女性を追って、 郷里の四国の町に戻った男はそこで、 十数年前の高校時代、愛し合いながらも早世した恋人との思い出に遭遇する。 カセットテープでの声の交換日記を通じて、 亡き恋人が時を越えて二人の未来を結び付けてくれたことが有り難くて、 主人公たちの実世代が自分と近いこともあって、涙腺は緩みっ放し。 ホームページ
上海家族 (假装没感覚) 2002中国 (監)ポン・シャオレン (出)チョウ・ウェンチン、リュイ・リーピン、チェン・チェンヤオ 2004/06/04 岩波ホール ○ 愛人との関係を切らない夫を見限って、娘と共に実家に戻った母親。 しかし狭い実家での冷遇に疲れ、ついに再婚に踏み切ったものの、 新しい夫の守銭奴ぶりに消耗し、再び実家に戻ることに。 やがて母は娘と共に誰も頼らずに生きてゆくことを決意する (その辺の心境が急転し過ぎる気もするが)。 現代上海の住宅事情や家族風景の、日本との共通点と相違点も分かる。 ホームページ
半落ち 2003日本 (監)佐々部清 (出)寺尾聡、原田美枝子、柴田恭兵、吉岡秀隆、樹木希林、鶴田真由、伊原剛志、 國村隼、高島礼子、石橋蓮司 2004/05/29 深谷シネマ アルツハイマー病の妻を殺したと自首してきた元刑事。 しかし本人は殺害から自首までの2日間の行動について固く口を閉ざし、 それを騒ぎ立てるマスコミに対して、警察内部では隠蔽を画策する。 警察内の薄汚い実態を告発する方向性はよいが、 件の「空白の二日間」を大袈裟に持ち上げて物語を作っている感あり。 原作を読んでいれば印象が違うのかも。 ホームページ
リアリズムの宿 2003日本 (監)山下敦弘 (出)長塚圭史、山本浩司、尾野真千子 2004/05/21 シブヤ・シネマ・ソサエティ ○ 共通の友人が遅刻したせいで、殆ど面識もないのに共に旅行することになった男二人。 目指していた宿は潰れていて、代わりに見つけた宿はどこか胡散臭く、 翌日は海辺で遭遇した謎めいた女と同行することに。 いかにも馬が合わない男二人の、間の抜けた気まずい受け答えが妙に面白く、 鳥取のうらぶれた町の風景も相俟って、独特の世界が展開する。 ホームページ
ヴァイブレータ 2003日本 (監)廣木隆一 (出)寺島しのぶ、大森南朋 2004/05/21 シアター・イメージフォーラム ◎ 不眠に悩み食べ吐きを繰り返すルポライターの女は、 たまたまコンビニで出会ったトラック運転手とゆきずりの関係を持ち、 そのままトラックの助手席に乗って東京から新潟まで便乗する中で、 いつしか自分の何かが変わってゆく。 狭い車内での密接感が、現代の人間関係の希薄さの裏返しのよう。 最後のコンビニのレジでの寺島さんのえも言われぬ表情に、 何だか目が潤んでしまった。 ホームページ
東京物語 1953日本 (監)小津安二郎 (出)笠智衆、東山千栄子、原節子、杉村春子、山村聰、三宅邦子、香川京子、東野英治郎 2004/04/15 深谷シネマ ◎ 東京で暮らす長男や長女を訪ねて、尾道からはるばる出て来た老夫婦。 それぞれ自分の生活に忙しい長男や長女は両親をやや冷遇し、 結局は戦死した次男の嫁だけが親身に義父母の世話をするが、 帰路に体調を崩した老母は間もなく急逝する。 淡々とした情景の中に、家族像の崩壊と「現実」の重みを 残酷なまでに冷静に描き出す。 原節子さんの美しさは、何だかこの世の人ではないかのようだ。 ホームページ
晩春 1949日本 (監)小津安二郎 (出)笠智衆、原節子、月丘夢路、杉村春子、 青木放屁、宇佐美淳、三宅邦子、 三島雅夫、坪内美子、桂木洋子、清水一郎 2004/05/09 深谷シネマ ○ 年頃の娘の結婚を気に掛ける男やもめの父親と、 父を置いたまま家を出ては行けないと思う娘。 二人が互いを思い遣る気持ちが、しみじみと胸に沁みる。 原節子さんの端正な佇まいも、笠智衆さんの絶妙の存在感も、 本当に得がたいものだ。 モノクロで、最初のうちは音の悪さを残念に思っていたのだが、 見ている内にいつの間にか気にならなくなるのが不思議。 ホームページ
チルソクの夏 2003日本 (監)佐々部清 (出)水谷妃里、上野樹里、桂亜沙美、三村恭代、夏木マリ、谷川真理、 山本譲二、高樹澪 2004/05/02 大宮シネマリゾート ○ 1977年夏、親善陸上競技大会で出逢った、釜山の男子高生と下関の女子高生。 二人は来年夏の大会での再会を約束するが、 日韓関係が良くない時代、文通さえもままならず思い悩む。 それから数十年を経て、再開された大会で一つの奇跡が起こる (が、この最後の場面はいかにも蛇足と思う)。 現在、日韓の関係がここまで良好になって嬉しい一方で、 北との関係が依然としたままなのが悲しい。 ホームページ
解夏 2003日本 (監)磯村一路 (出)大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、田辺誠一、渡辺えり子、 柄本明、林隆三、松村達雄 2004/05/01 深谷シネマ 2004/01/29に続き2度目の鑑賞なのだが、 前回以上に泣けて泣けて困った。 やがて来る失明の瞬間への恐怖をリアルに実感させる大沢さんと、 それでも彼を愛し支え続ける石田さんの芯の強さ。 もし自分がどちらかのような立場になったとしたら、 こうして筋を通せるだろうかと思うと、一層涙が止まらなかった。 渡辺俊幸さんによる音楽も催涙的。 ホームページ
赤目四十八瀧心中未遂 2003日本 (監)荒戸源次郎 (出)大西滝次郎、寺島しのぶ、大楠道代、内田裕也、新井浩文、大楽源太、大森南朋 2004/04/21 ユーロスペース ○ 過去から逃れて尼崎へと流れ着いた若い男。 居場所を得た古アパートには、入墨師や売春婦などの他、 獄中の兄を持つ若い女が住んでいた。 「この世の外へ」と誘う女と共に、男は赤目滝へと死出の旅に出る。 いかにも場末と言う感じの、どんよりと重い雰囲気に、 見ていてひどく気疲れを感じたが、場に漂う独特の濃厚な空気は類を見ない。 ちなみに読みは「あかめしじゅうやたき〜」。 ホームページ
息子のまなざし (Le Fils) 2002ベルギー=フランス (監)ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ (出)オリヴィエ・グルメ、モルガン・マリンヌ、イザベラ・スパール、レミー・ルノー、 ナッシム・ハッサイーニ、クヴァン・ルロワ、フェリシャン・ピッツェール 2004/04/11 高崎映画祭 ○ 職業訓練所で大工仕事を教える男の教室に、新たに少年院から入ってきた少年。 少年本人は気付いていないが、男にとってその少年は、 決して忘れてはならない人物だった。 最初から最後まで音楽は一切使われず、 ただ主人公たちの身近を落ち着きなく追いかける映像に、 前半は正直言って眠気を誘われたが、 後半に至って静けさの裏に秘められた緊迫感が徐々に増してゆき、 突然の終わりにはびっくり。 ホームページ
ほえる犬は噛まない (BARKING DOGS NEVER BITE) 2000韓国 (監)ポン・ジュノ (出)ペ・ドゥナ、イ・ソンジェ、コ・スヒ、キム・ホジョン、ピョン・ヒボン、 キム・ジング、キム・ルェハ 2004/04/11 高崎映画祭 ◎ とあるマンションで起こった飼犬の連続失踪(!?)事件。 犯人をたまたま見掛けてしまったマンション管理室の女の子と、 犬を誘拐した当事者(複数!?)との、追いつ追われつの物語。 韓国ならではの設定を背景に、被害者と加害者が交錯する物語は、 練りに練られていて面白く、当人たちの真剣さがまた滑稽で、 笑うに笑えない状況下でもニヤリとさせられてしまう感じで、 しかも何故か感動的だったりもする。 ホームページ
ジョゼと虎と魚たち 2003日本 (監)犬童一心 (出)妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新井浩文、江口徳子、藤沢大悟 2004/04/09 シネクイント ○ 祖母と共に世間から隠れて暮らす足が不自由な娘と、 気ままな生活を謳歌する大学生。 たまたま出逢った二人は、祖母の死を機に同棲するようになるが、 やがて男は娘の身勝手さに辟易し始める。 身体障碍を結構あからさまに扱っていながら、それに引きずられない、 軽快でしかも痛切な恋愛物語になっている。 あまりにあっけない別れの後の、二人それぞれの展開の予感もまたよい。 ホームページ
星砂の島、私の島〜アイランド・ドリーミン〜 2003日本 (監)喜多一郎 (出)大多月乃、津田寛治、勝野洋、櫻井淳子、麻宮美果、 塩屋俊、筧利夫、谷啓 2004/04/09 テアトル池袋 就職口が見付からない都会娘が、沖縄の離島・竹富島での教職を得て赴任。 あまりに何もない島に当初は幻滅するが、やがて自分の居場所を見出してゆく。 島の、のどかだが決して楽ではない生活風景が伝わるのはよいが、 若手役者さんたちの演技があまりにぎこちなく、 音楽も(BEGINによる主題歌以外は)貧相で、残念ながら少々期待外れ。 ホームページ
名もなきアフリカの地で (NOWHERE IN AFRICA) 2001ドイツ (監)カロリーヌ・リンク (出)ユリアーネ・ケーラー、メラーブ・ニニッゼ、レア・クルカ、 カロリーネ・エケルツ、マティアス・ハービッヒ、ジデーデ・オンユーロ 2004/03/28 シネマサークルおがわ ナチスの迫害を目前に、ケニアの荒野へと亡命したユダヤ人一家の苦難。 厳しい生活の中で、夫婦は望郷の念に駆られ諍いを繰り返す一方で、 娘はその土地での暮らしを受け入れつつ成長してゆく。 何となく型通りの人物設定や展開なのが惜しい処で、 夫婦の心境の変遷が唐突でしっくり来ないが、 娘と現地料理人との信頼関係は感動的で、 このような事実があったことを教えてくれる点でも貴重。 ホームページ
きょうのできごと a day on the planet 2003日本 (監)行定勲 (出)田中麗奈、妻夫木聡、伊藤歩、柏原収史、三浦誠己、石野敦士、松尾敏伸、池脇千鶴、 山本太郎、椎名英姫、北村一輝、派谷恵美、佐藤仁美、大倉孝二、津田寛治 2004/03/21 シネ・アミューズ ◎ 何でもないような日々の出来事と、ほんの少しつながっている、 ちょっと非日常的な出来事。 友人の転居祝いに集まった学生たち、ビルの隙間に転落した男と救助員、 座礁した鯨に集まる人々、時と同じくしながら無関係な三つの場が、 さりげなく交錯する。 こんな風に、自分の知らないうちに、どこかでいろいろなことが起こって、 それらが少しずつ互いに関係しているのかな、などと心地よい余韻が続いている。 こういう映画に出会えて、本当に幸せ。 ホームページ
永遠のマリア・カラス (CALLAS FOREVER) 2002イタリア=フランス=イギリス他 (監)フランコ・ゼフィレッリ (出)ファニー・アルダン、ジェレミー・アイアンズ、ジョーン・プローライト 2004/03/07 深谷シネマ ○ 最盛期の声を失った不世出のオペラ歌手の、 最晩年の苦悩に焦点を当てたフィクション。 失意の内に厭世的な生活を送る天才歌手が、 自身の全盛期の録音を使った映画「カルメン」の企画に参画することで、 生きる力を取り戻してゆくが、やがてその虚構性に違和感を抱く。 日頃この種の音楽をhystericと毛嫌いしていた私だが、 本物の歌の持つ力に圧倒され、ただただ猛省。 ホームページ
阿修羅のごとく 2003日本 (監)森田芳光 (出)大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子、八千草薫、仲代達矢、 小林薫、中村獅童、RIKIYA、桃井かおり、坂東三津五郎、木村佳乃、紺野美沙子 2004/02/25 深谷シネマ ○ 向田邦子原作の傑作TVドラマの映画化。 老いた父に愛人がいることを知って動揺する4人の娘たち、 それぞれの男女問題を巡る愛憎と葛藤。 細心かつ大胆に人間の醜さ滑稽さをえぐり出す原作の持ち味が、 無理も無駄もなく凝縮されており、しかも原作とは一風違った軽みが出ていて、 TV版に決して引けを取らない快作と思う。 娘たち(そして母)の、芯を貫くしたたかな強さが痛烈。 ホームページ
home 2001日本 (監)小林貴裕 2004/02/14 深谷シネマ ◎ 監督自身の家族を刻々と撮影したドキュメンタリー作品。 部屋に「ひきこもり」状態になった兄。そのために鬱病になった母と、逃避する父。 状況を打破するため、弟(監督)は意を決して、カメラを携え兄と立ち向かう。 家族の生々しい葛藤と苦悩、特に兄がチラリ漏らす本音など、 目前で展開される「現実」に立ち会わされることの緊張感は類が無く、 これはもう映画「鑑賞」では済まされない。 関連ページ
ラブストーリー (THE CLASSIC) 2003韓国 (監)クァク・ジェヨン (出)ソン・イェジン、チョ・スンウ、チョ・インソン、イ・ギウ 2004/02/07 109シネマズ高崎 ◎ 押入の奥にしまってあった、若き日の父母の手紙。 そこには、母と父と父の親友との、愛情と友情の悲話が綴られていた。 過去の母の恋愛と現在の娘の恋愛とが並行して物語は進展するが、 ついに判明する運命的な結び付きはまったく予想外。 情景は繊細で美しく、主人公たちはどこまでも清純で、 しかも動乱期の韓国の状況も踏まえてあり、 それらがすべて最後の圧倒的感動へと集結してゆく。 ホームページ
解夏 2003日本 (監)磯村一路 (出)大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、田辺誠一、渡辺えり子、 柄本明、林隆三、松村達雄 2004/01/29 WMC熊谷 ◎ 徐々に視力を失うベーチェット病を患い、郷里の長崎に戻った男と、 彼を支えるために長崎に飛んで来た恋人、そして二人を見守る母親。 失明の恐怖という深刻な物語だが、大袈裟になることなく淡々と物語は展開し、 長崎・外海・明治絵画館など(自分も目にしたことのある)美しい風景と相俟って、 静かな深い感動へと誘われ、ふと涙が零れてしまっていた。 さだまさしの原作の良い所が 映像で増幅されている。 ホームページ
父さんの子は25人 (二十五個孩一個父) 2001中国 (監)ホアン・ホン (出)ホアン・ホン、リー・リン、レイ・コーション、スーチン・カオワ 2004/01/25 深谷シネマ ◎ 養鶏で財を成し故郷の農村へ凱旋した男は、 持ち前の大言壮語癖が災いして、25人もの孤児たちを父親代わりに養う羽目になる。 周囲から嘲笑され、婚約者からも愛想を尽かされ、孤立無援の状況の中、 意地を張って奮闘する男の姿が悲しくも滑稽で、 その分だけ子供たちが少しずつ「父親」に馴染んでゆく様子には心温まる。 以下2作品は第4回彩の国さいたま中国映画祭の協賛企画。 ホームページ
紙飛行機 (紙飛机) 2003中国 (監)リウ・シン、チアン・ピン (出)ナー・レンファ、ニウ・ペン、チョウ・シアオリー 2004/01/25 深谷シネマ 頭痛薬と騙されて麻薬中毒に陥り、収容所に連行された母親。 同居を勧める父親の許を飛び出し、周囲の冷たい視線に耐え、 寒い棲家でただ母親の復帰を待ち続ける息子は、 その思いを伝えるべく、収容所の塀越しに紙飛行機の手紙を投げ入れる。 音楽や回想はやや過剰気味だが、どうしても母親を見捨てない息子が何とも健気で、 麻薬の禁断症状の壮絶さが強烈な印象を残す。 ホームページ
ホテル・ハイビスカス 2002日本 (監)中江裕司 (出)蔵下穂波、余貴美子、照屋政雄、平良とみ、ネスミス、亀島奈津樹、 和田聡宏、登川誠仁、大城美佐子 2004/01/21 深谷シネマ 2003/06/17に続く2度目の鑑賞。 元気爆発な美恵子嬢の姿を、再びスクリーンで見られて嬉しい限り。 話の筋がもう分かっている分だけ、前回より細部までより一層楽しみつつ、 見落としていた「ナビィの恋」お二人(西田尚美さん村上淳さん)の出演場面も 今回はしっかり確認。 上映前に監督の深谷シネマに寄せた肉声メッセージ放送(ウチナーグチ交じり)あり。 ホームページ
さよなら、クロ 2003日本 (監)松岡錠司 (出)妻夫木聡、伊藤歩、新井浩文、佐藤隆太、近藤公園、三輪明日美、金井勇太、 井川比佐志、田辺誠一、塩見三省、余貴美子、渡辺美佐子、柄本明、根岸季衣、りりぃ 2004/01/17 深谷シネマ ◎ 長野県の高校にふらりやって来て、 そのまま校舎に住み着いてしまった黒い犬と、 犬を慈しみつつ慰められてきた歴代生徒や教職員たちの十余年。 犬は皆に見守られつつ天寿を全うして、それだけでも泣かせる物語なのに、 話の主軸となる生徒たちの青春の物語がそれに重なって、更なる催涙へと導く。 最後に絶妙のタイミングで入る財津和夫「青春の影」がまたよい。 ホームページ
ゲロッパ! 2003日本 (監)井筒和幸 (出)西田敏行、常盤貴子、山本太郎、岸部一徳、益岡徹、長塚圭史、 ラサール石井、塩見三省、根岸季衣、寺島しのぶ、藤山直美 2004/01/10 深谷シネマ ○ 刑務所への収監を数日後に控えたヤクザのボスが最後に願う、 James Brownの名古屋公演に行くことを叶えるために、子分たちは強行作戦を企むが、 その裏でボス本人は、何十年も会っていない娘との再会を画策する。 超法規的措置まで駆使する物語はかなり無茶だが、 ギャグの連発で笑わせつつ、最後にはホロリとさせられ、 娯楽映画の王道という感じ。 ホームページ
Video
悪い男 (Bad Guy) 2002韓国 (監)キム・ギドク (出)チョ・ジェヒョン、ソ・ウォン 2004/10/17 DVD Video ○ 街角で出会った女子大生に惹かれたヤクザの男は、 女を陥れて売春宿に売り飛ばし、絶望する女の様子を隠し部屋から覗き見る。 女の男への憎悪が、いつの間にか破滅的な愛情へと変わってゆく。 男女それぞれの心境は、常識的に言って理解不能だが、 それこそがこの映画の凄い所だと思う。 ホームページ
魚と寝る女 (The Isle) 2000韓国 (監)キム・ギドク (出)ソ・ジョン、キム・ヨソク、バク・ソンヒ、チョ・ジェヒョン 2004/10/10 DVD Video ○ 釣り客用の「小屋船」が点々と浮かぶ湖。 死に場所を求めてやって着た若い男に対して、 湖の管理人を務める若い女が寄せる、脅迫的な愛。 この世のものとは思えないほど幻想的な静寂が支配する湖の情景と、 正反対に痛々しく残虐な場面との対比が、強烈に前衛的。 ホームページ

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(紺野裕幸)

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