映画寸評 2005年

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2005年 私的ベスト3: 大統領の理髪師サマリア親切なクムジャさん (次点) 氷雨彼女を信じないでください


◎=絶賛 ○=よい
2005
タイトル データ 鑑賞日 感想
アメノナカノ青空 (...ing) 2003韓国 (監)イ・オニ (出)イム・スジョン、キム・レウォン、イ・ミスク 2005/12/17 シネクイント ◎ 一言で言えば病魔モノ。しかし、もう一つの物語の伏線があって、 それが主人公たちの悲しみを増幅して、特に後半はじわじわと泣かされ通し。 ああ、海亀を見せてあげたかったなとか、 私もあの傘を欲しいなとか、帰る道すがらずっと考えてしまった。 主演の二人は好印象で、しかしちょっと驚いたのは、 彼(キム・レウォン)よりも少女(イム・スジョン)の方が、実年齢が上だと言うこと。 唯一の難点は、エンディングのテーマ曲が、 日本の歌手の日本語の歌へと差し替えられていたこと。かなり興冷め。 ホームページ
風の前奏曲 (THE OVERTURE) 2004タイ (監)イッティスーントーン・ウィチャイラック (出)アヌチット・サパンポン、アドゥン・ドゥンヤラット 2005/12/17 銀座テアトルシネマ ◎ 実在の偉大なラナート(木琴のようなタイの伝統楽器)奏者の生き方を描く。 天才奏者の演奏を目の当たりにして自信喪失に陥りつつも、 やがて自身の音楽世界を見い出してゆく青年時代。 「近代化」の名の下に伝統音楽が抑圧される中で、 恐れることなく反骨を貫いた最晩年。 二つの年代を交替させながら物語は展開し、そのどちらも感動的。 音楽の本質について観客に問い掛けているようだ。 演奏場面も多く、聴き応えがあり、見事な腕さばきもしっかり見せてもらえる。 しかも、吹き替えの筈なのに、非常にリアル。 ホームページ
パープル・バタフライ (紫蝴喋) 2003中国 (監)ロウ・イエ (出)チャン・ツィイー、仲村トオル、リィウ・イェ、フェン・ヤンチェン、リー・ビンビン 2005/12/04 新宿武蔵野館 1930年代の上海を舞台に、かつて愛していた男を殺さなければならなくなった女を 中心として、いくつかの人間関係が悲劇的に絡まってゆく。 出演者は豪華で期待大だったのだが、 登場人物の心境の切実さが今ひとつ伝わって来ず、 何となく納得性のない物語に思え、私にしては珍しく涙腺は全然緩まなかった。 しかも、最後に戦時中の虐殺場面の記録フィルムが延々と流れて、 後味がよろしくない。 ただ、どんよりとした映像の中に、当時の上海の空気感がよく表されてはいた。 ホームページ
トンケの蒼い空 (MUTT BOY) 2003韓国 (監)クァク・キョンテク (出)チョン・ウソン、キム・カブス、オム・ジウォン、キム・テウク 2005/12/02 新宿K's cinema ○ 高校を中退し家でぶらぶらと暮らしている若者 (今時の言葉で言えばNEETか?)が、いくつかの身近な事件をきっかけに、 親子の情や友情や恋心を意識してゆく。 チョン・ウソンは、『私の頭の中の消しゴム』とはガラリと変わって、 いかにも冴えない人間像をよく出していたが、 年齢的にこの役柄には不釣り合いな気も少々。 決闘場面がかなり念入りな割に、恋愛の展開がほんのりとし過ぎているが、 最後はちょっと嬉しい予感で終わるのがよい。 ホームページ
ALWAYS 三丁目の夕日 2005日本 (監)山崎貴 (出)吉岡秀隆、堤真一、小雪、堀北真希、三浦友和 2005/11/27 熊谷シネティアラ21 ◎ 昭和30年代の東京の下町を舞台にした人情物語。 いくつかの家族のささやかなエピソードに、心温まると共に、大いに泣かされた。 当時の町並みの雰囲気がリアルに再現されていて (こんなにも嫌味のないCGの使用法は見事)、 当時を知らない私でも、何とも言えない懐かしさを感じる。 貧しい時代だったのに、どうしてあんなに夢と希望に溢れていたのだろう。 それから半世紀を経て、どうしてこんなに夢も希望もない時代になって しまったのだろう。 ホームページ
ヒトラー 最期の12日間 (DER UNTERGANG) 2004ドイツ (監)オリバー・ヒルシュビーゲル (出)ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ララ、ユリアーナ・ケーラー 2005/11/26 深谷シネマ ◎ 1945年、ナチスドイツの滅亡の前後の党幹部たちの姿を、 ヒトラーに仕えた女性秘書の視点から描き出す。 あくまでも平凡な市民としての立場から見た、ありのままの有様を描いたことで、 美化することなく、彼の不可解な多面性がよく伝わって来る。 彼を取り巻く人々の様子も見もので、特に彼を妄信する人々の姿は、 こういう時代だからこそ皆に見て欲しいところ。 但し、この邦題はどう考えても不適切。 原題の「Untergang」は「没落、滅亡、破滅」の意味の由。 ホームページ
大停電の夜に (UNTIL THE LIGHTS COME BACK) 2005日本 (監)源孝志 (出)豊川悦司、田畑智子、田口トモロヲ、原田知世、吉川晃司、寺島しのぶ、 井川遥、阿部力、本郷奏多、香椎由宇、淡島千景、宇津井健 2005/11/20 シネマ ◎ 首都圏全域が停電という異常事態の中で、 さまざまな事情を抱えた人々が過ごした、ほんの一夜の物語。 明かりも音もない世界の中で、誰もが否応なしに自分を振り返り、 相手を思い遣り、徐々にやさしい気持ちになってゆく。 登場人物はすこぶる多く、互いにちょっと関係があったりなかったり、 何れも豪華キャスト。話はちょっと都合良過ぎるところもあるが、 えも言われぬ温かな気持ちで満たされたので、大いに満足。 ホームページ
親切なクムジャさん (SYMPATHY FOR LADY VENGEANCE) 2005韓国 (監)パク・チャヌク (出)イ・ヨンエ、チェ・ミンシク、クォン・イェヨン、キム・シフ、ナム・イル、 キム・ビョンオク、オ・ダルス、イ・スンシン 2005/11/20 熊谷シネティアラ21 ◎ 無実の罪を着せられ13年もの間服役させられた女が、 出所後、練りに練った復讐計画を遂行してゆく。 物凄い映画で、個人的には『オールド・ボーイ』をも上回る傑作と思う。 特に、男を捕まえてからの長い時間をかけた「共同作業」の過程は、 一刻一刻がじわじわと強烈で、次第に自分の頭の中まで変になってきて、 バロック調の異様に美しい音楽に煽られて、何故か涙まで出てきてしまって、 自分でも何が何だか訳が分からない精神状態に陥ってしまった。 イ・ヨンエの凄みは半端でない。 ホームページ
恋する地下鉄 (開往春天的地鉄/SPRING SUBWAY) 2002中国 (監)チャン・イーバイ (出)シュー・ジンレイ、ゴン・ロー、ファン・ウェイ 2005/11/13 熊谷さくらめいと ○ 第5回彩の国さいたま中国映画祭の3本目。 倦怠期の夫婦のすれ違いを軸に、現代の都会生活の悲哀を描く。 結婚して7年、失業したことを妻に隠して地下鉄で時間を潰す夫と、 知り合った喫茶店のマスターに言い寄られる妻は、 互いの内面を見て見ぬ振りをしながら、表向きには平穏な生活を維持しているが、 やがてじりじりと破綻が訪れる。 登場人物たちが内なる声をそのままカメラに向かって語りかけたり、 空想の場面と現実の場面を自在に交錯させたり、 映画としてはかなり凝った斬新な作りになっている。 ホームページ
学校へいきたい! (上学路上/A UNIQUE SCHOOLING) 2004中国 (監)ファン・ガンリアン (出)ヤン・シューリン、ウー・シュ、アイ・リーヤー 2005/11/13 熊谷さくらめいと 第5回彩の国さいたま中国映画祭の2本目。 砂漠地帯の極貧の村で、学校に納めなければならないお金を稼ぐために奮闘する 女の子の話。家の鶏が産んだ玉子を市場に持ち込んで売ったお金を元手に、 紆余曲折の末に子ヤギを買い、育てて売ればしっかり儲かる予定が、 そう簡単には問屋が卸さない。 貧しい村の雰囲気が傑作『あの子を探して』を思い起こさせるが、 金稼ぎに絡む話と言うこともあって、残念ながら感動度は及ばない。 上映前に二胡奏者・馬高彦さんのミニコンサートがあって、たいへん得をした気分。 ホームページ
花嫁大旋風 [雲南の花嫁] (花腰新娘/HUAYAO BRIDE IN SHANGRI-LA) 2004中国 (監)チァン・ジアールイ (出)イン・シャオティエン、チャン・ジンチュー、チャオ・ジアージー 2005/11/13 熊谷さくらめいと ○ 第5回彩の国さいたま中国映画祭の1本目。 雲南省の山村の結婚して3年間は一緒になってはならないという掟を巡って、 無邪気を通り越して無鉄砲な新婦と、それに振り回され憔悴する新郎とが繰り広げる ラヴ・コメディ。何と言っても見ものは、鮮やかで豪華で美しい民族衣装。 結婚式や女子龍舞隊の場面は勿論、農作業を含めた日常生活でさえ、 あんなにも装飾的な衣装を身に纏っていることには驚かされる。 物語はちょっと馬鹿馬鹿しいものの、テンポよく楽しめる爽やかなもの。 ホームページ
なお、この映画は2008年になって『雲南の花嫁』の邦題で一般公開された。映画祭では「痛快コメディ」として宣伝していたのに対し、今回はむしろ切ない愛情物語として宣伝していて、確かにどちらの要素もあるものの、力点の置き方が違うのが面白い。 ホームページ
誰がために 2005日本 (監)日向寺太郎 (出)浅野忠信、エリカ、池脇千鶴、小池徹平 2005/11/05 シアター・イメージフォーラム ◎ 新婚間もない妻を未成年の少年に殺された男が、 少年法の庇護の下で平然と暮らす加害者の存在に苦悩する物語。 どうして未成年というだけで罪を問われないのか。 どうして加害者が保護されて、被害者はどうすることも出来ないのか。 やり場のない怒りをひたすら蓄積させてゆく主人公を見ながら、 何だか他人事でなく考えさせられてしまった。 結論を出さないまま映画は終わり、ずっしりと重いものが心にのしかかる。 無駄のない音楽もよく合っていた。 ホームページ
世界 (The World) 2004日本=フランス=中国 (監)ジャ・ジャンクー (出)チャオ・タオ、チェン・タイシェン、ワン・ホンウェイ 2005/11/05 銀座テアトルシネマ 北京郊外のテーマパークで働く娘たちを中心に、急速な近代化に翻弄されつつも 懸命に生きようとする人々の姿。言いたいことは分からなくもないのだが、 正直言って映画としては、だらだらと散漫で、よろしくない出来と思う。 ただただ退屈で、しかも長過ぎ。 無機質な音楽や唐突なアニメーションの挿入も、取って付けたような印象。 日頃評価の甘い私でも、この作品は流石にちょっといただけなかった。 ホームページ
灯台守の恋 (L'EQUIPIER) 2004フランス (監)フィリップ・リオレ (出)サンドリーヌ・ボネール、フィリップ・トレトン、グレゴリ・デランジェール 2005/11/05 シャンテ・シネ ○ 波も荒い海岸の最果ての町で黙々と暮らす、灯台守の夫とその妻。 新たに灯台守として派遣されてきた帰還兵の若い男を、 町の保守的な面々は敵視するが、夫は男を仲間として受け入れ擁護さえする。 しかし妻は、いつしか男と恋に落ちてしまっていた。 妻の行動は性急過ぎて納得が行かない気もするが、 全てを知っていながらも黙って受け入れた夫の心境を思うと涙が出てきた。 両親の過去の物語を娘が後になって知る、という枠組みもよい。 ホームページ
春の雪 2005日本 (監)行定勲 (出)妻夫木聡、竹内結子、高岡蒼佑 2005/10/29 シネティアラ21 ○ 大正時代の貴族層。幼馴染として育った男女は、互いに恋心を抱いているものの、 男は自身の想いに素直になれず屈折した行動に。 ついに女には別の縁談がまとまってしまうが、そうなってから二人は ようやく互いの愛を求め合うようになる。 三島由紀夫らしい、耽美主義的な、ちょっと病んだ感じの美感が、 美しい映像からも音楽からもよく表されていた。 ただ、最後はあまりにもあっさりしていて、 もうちょっと何か印象付けるものが欲しい気も少々。 ホームページ
タッチ 2005日本 (監)犬童一心 (出)長澤まさみ、斉藤翔太、斉藤慶太、風吹ジュン、小日向文世、宅麻伸 2005/10/23 熊谷シネティアラ21 ◎ 双子の兄弟と幼馴染の女の子、いつも一緒だった3人。 女の子を甲子園に連れて行ってやると言う夢に向けて、 野球部のエースとして奮闘していた弟が決勝戦を前に事故死。 それまで何かと中途半端だった兄は、 弟の(そして3人の)夢を叶えるべく自身が立ち上がる決心を固める。 ストーリーは予告編だけでも読めていたが、彼らの純粋さと真剣さに胸が熱くなり、 試合場面を見守りながら本当にドキドキさせられ、大いに泣かされてしまった。 ホームページ
Dear フランキー (Dear Frankie) 2004イギリス (監)ショーナ・オーバック (出)ジェラルド・バトラー、エミリー・モーティマー、ジャック・マケルホーン 2005/10/15 シネマテークたかさき ◎ 少年が心待ちにしている、海外渡航中の父から届く手紙。 だが本当は、夫と縁を切った母がこっそり代筆していたのだった。 しかし、父が乗っていると言うことにしてあった船が近所の港に寄航することになり、 母は迷った末、一日だけ父親役になってくれる男を探すことに。 はらはらさせられる物語展開の後、特に後半では何度も泣かされ、しかも後味は爽やか。 俳優も物語も音楽も文句なしに素晴らしい大傑作。 ホームページ
ベルリン・フィルと子どもたち (RHYTHM IS IT!) 2004ドイツ (監)トマス・グルベ、エンリケ・サンチェス・ランチ (振付)ロイストン・マルドゥーム (共同振付)スザンナ・ブロウトン (指揮)サー・サイモン・ラトル (演奏)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2005/10/07 深谷シネマ ◎ サイモン・ラトル率いるベルリン・フィルが、 素人の青少年たち250人のダンスと共に、 ストラヴィンスキー『春の祭典』を演じるプロジェクトを敢行。 柔軟に発想する指揮者、厳しいダンス指導者、猛特訓に悩み苦しむ生徒たち、 それぞれの発言から、 生きることや芸術観など、本質に迫った思想が引き出されている。 オーケストラのリハーサル場面をじっくり見せてもらえたことも嬉しく、 本番で演じられる舞台の感動は圧倒的に迫って来る。 ホームページ
亀も空を飛ぶ (Turtles can fly) 2004イラク=イラン (監)バフマン・ゴバディ (出)ソラン・エブラヒム、ヒラシュ・ファシル・ラーマン、アワズ・ラティフ 2005/10/05 岩波ホール ○ アメリカの侵攻を目前にした、イラクの田舎町の子供たちの姿。 親や兄弟を亡くした孤児、手や足や視力を失った子供たち、 掘り起こした地雷を売ったお金で銃を買う子供たち。 何とも残酷な現実をしっかりと見せ付ける。 そんな中でも強かに生きている「サテライト」少年を頼もしく思う一方で、 対照的に絶望の底にある「腕のない子」やその「妹」の悲しみはあまりに深く、 見ていて大変辛いものがあった。 ずっしりと重苦しい気分で映画館を出ながら、 何はともあれ日本は平和だな、と思った。 ホームページ
蝉しぐれ 2005日本 (監)黒土三男 (出)市川染五郎、木村佳乃、今田耕司、ふかわりょう、石田卓也、佐津川愛、原田美枝子、緒形拳、加藤武、大滝秀治 2005/09/29 ワーナーマイカルシネマズ熊谷 ○ 試写会で鑑賞。 主君の命運次第ですべてが決まってしまう時代。 不条理にも切腹させられた父親の信念を守りまっすぐに生き抜く下級武士と、 その幼馴染で奇しくも殿様の寵愛を受けるに至った女性との、 悲運の縁の物語。 拡大公開系作品の割にかなり地味な作りだが、風景が綺麗で、 音楽も程よく、丁寧で好感の持てる作品。 ただ、決闘場面の緊迫感や、ロマンスの泣かせ度合いは、 『たそがれ』や『隠し剣』の方が上だったと思う。 ホームページ
青空のゆくえ 2005日本 (監)長澤雅彦 (出)森田彩華、中山卓也、黒川芽以、佐々木和徳、多部未華子、三船力也、悠城早矢、橋爪遼、西原亜希 2005/09/25 シネ・リーブル池袋 ◎ 中学3年生の夏休み、転校することになった男子生徒が友人たちと過ごした 最後の1ヶ月程の物語。 もう日にちがないからこそ、それぞれの想いがほんの少しだけ表に出てきて、 その波紋が少しずつ干渉し合ってゆく。 あの頃から、自分はもう10年どころか倍以上も歳を取ってしまったけれども、 純粋で真っ直ぐだった頃の感覚が蘇って来るようで、 キュンと切ない気持ちにさせられ、 校庭での花火に込められた悲しみと喜びには涙を抑えられなかった。 最後の屋上の場面で、このタイトルの意味がジワリと味わい深く、 爽やかな余韻を残す。 主題曲も印象的。 ホームページ
8月のクリスマス 2005日本 (監)長崎俊一 (出)山崎まさよし、関めぐみ、大蔵孝二、戸田菜穂、井川比佐志、西田尚美 2005/09/25 シネスイッチ銀座 ○ 韓国映画の大傑作の、日本でのリメイク版は、なかなかの健闘と思う。 原作にかなり忠実に丁寧に作ってあり、 時々ちょっとした変更が入っている所もなかなか悪くない。 山崎まさよしは、ハン・ソッキュに匹敵するような、実にいい感じを出していた。 一方の関めぐみは、さすがにシム・ウナには遠く及ばないが、 それなりによくやっていたと思う。 話の筋は分かっているのに、ラストシーンにはしっかり泣かされてしまった。 富山の風景が雰囲気よく撮られていて、日本映画的な情緒も醸し出されていた。 ホームページ
アバウト・ラブ/関於愛 (about love) 2004日本=中国 (監)下山天、易智言、張一白 (出)伊東美咲、チェン・ボーリン、加瀬亮、メイビス・ファン、塚本高史、リー・シャオルー 2005/09/23 太田コロナシネマワールド ○ 東京・台北・上海、それぞれを舞台にした3つの恋愛物語から構成。 3つの物語は互いに殆ど関係ないが、 何れも東アジア的な慎みのある恋愛感が描かれていた。 とりわけ、言葉の違いのもどかしさが巧みに織り込まれた台北編、 更には言葉の不通が積極的に組み込まれた上海編は、特に良かった。 東アジアの文化的な共通点が感じられるのも嬉しい。 東京編は『藍色夏恋』の俳優、 上海編は『シュウシュウの季節』の女優が出演。 ホームページ
四月の雪 (外出 / April Snow) 2005韓国 (監)ホ・ジノ (出)ぺ・ヨンジュン、ソン・イェジン 2005/09/18 熊谷シネティアラ21 ◎ 不倫旅行中に事故で重体となった男女、そのことを知ったそれぞれの妻と夫は、 大きな衝撃を受けつつも、やがて互いを想う気持ちが生じてしまう。 どうにもならない現実に巻き込まれた中で、 主人公二人が抱えたやり場のない感情が、息苦しいほど伝わって来る。 大袈裟な感情表現が抑えられているのが、この監督の持ち味で、私には好みの傾向。 但し映画の内容的には、どう見ても大衆向けではなく、単館上映系の作品。 ホームページ
いつか読書する日 2004日本 (監)緒方明 (出)田中裕子、岸部一徳、仁科亜季子 2005/09/17 SAMPLEビデオ ○ 長崎の町。 牛乳配達とレジ打ちに黙々と勤しむ中年の独身女性と、 妻が末期の病床にある市役所勤めの男、 幼馴染なのによそよそしい二人の、秘めた想い。 クライマックスでの「したかったこと」を含め、 主人公たち三人が何を考えているのか、今ひとつ共感に至らず。 しかも話の脈絡があまりに唐突な印象あり。 石段の多い長崎の風景は雰囲気よく撮れていて、 池辺晋一郎の軽妙な音楽がよいだけに、何だか勿体無い。 ホームページ
せかいのおわり (world's end & girl friend) 2004日本 (監)風間志織 (出)中村麻美、渋川清彦、長塚圭史 2005/09/15 シネ・アミューズ ◎ 恋人に振られたばかりのワガママな女、 ナンパを繰り返しつつも本当は彼女が好きな店員、 男も女もOKで実はその店員が好きな店長、 この3人の、奇妙な均衡の上にある、ぬるま湯のような、しかし心地よい共同生活。 どこにでもいそうな等身大の主人公たちの、何と言うこともない、 まさに「微妙」な心境が、時に滑稽に、時に切なく映し出される。 「世界の終わり」などと大袈裟な空想が楽しく、終わり方も絶妙。 ホームページ
自由戀愛 2005日本 (監)原田眞人 (出)長谷川京子、木村佳乃、豊川悦司、瀬戸カトリーヌ、香川京子、國村隼 2005/09/15 新宿K's cinema ◎ 女性の自由は闘い取らなければ得られないものだった大正時代。 裕福な商家に嫁いだ女性は、女学校時代の友人の不遇に同情し、 彼女を夫の会社の事務員に斡旋するが、 夫はいつしか彼女へと気が傾いてゆき、彼女が妊娠するに至って、 ついに女性は本妻の座を追われてしまう。 衣装や風景、明晰な言葉の発し方や交わされる思想風潮に、 大正時代の雰囲気がしっかりと醸し出されいて、 その中で主演女優二人が凛々しく映えている。 ホームページ
海を飛ぶ夢 (MAR ADENTRO / THE SEA INSIDE) 2004スペイン=フランス (監)アレハンドロ・アメナーバル (出)ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス 2005/09/10 深谷シネマ ○ 海の事故で全身不随になって26年、 家族や友人たちに囲まれ静かに生きて来た男性だが、 その微笑の裏で、自分の生きる意味を自己に問い続け、ついに自ら死を決断するが、 体の自由が利かない彼には、自殺することさえできない。 彼を真に理解すれば彼の自殺を幇助することになると言う、友人たちのジレンマ。 尊厳死という重い主題を扱っているが、 かと言って決して暗い物語にはなっていなくて、彼の死の場面さえ、 羨むべき「開放」に思える。 ホームページ
私の頭の中の消しゴム (A MOMENT TO REMEMBER) 2004韓国 (監)イ・ジェハン (出)チョン・ウソン、ソン・イェジン 2005/09/06 ヤクルトホール ◎ 幸運にも試写会に当選。 ようやく得た幸せな結婚生活も束の間、 若年性痴呆と言う残酷な運命を受け入れざるを得なくなった妻と夫。 彼らの苦悩をリアルに伝えつつも、必要以上に重苦しくはせず、 結構あっさりと上品に仕上げていることに好感。 夫役のチョン・ウソンもよかったが、 ソン・イェジンの儚い雰囲気が、この物語の主人公にぴったり合っていた。 最後の出発も、その前のコンビニ場面も、しみじみと余韻が残る。 ホームページ
メゾン・ド・ヒミコ 2005日本 (監)犬童一心 (出)オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯、西島秀俊 2005/09/06 シネマライズ ○ 自分を棄てた憎き父親が開設した、ゲイのための老人ホームで働く羽目になった娘が、 徐々に入所者たちや父を受け入れてゆく物語。 同監督による『ジョゼと虎と魚たち』と同様に、 同性愛者と言う微妙な物語をストレートに描写し、 人間の醜い部分も容赦なく晒け出しつつ、それを超えたところにある 人間的なるものを描き出そうとしていたように思う。 不必要に音楽を重ねず、静けさを静けさとして置いてあるのもよいところ。 ホームページ
南極日誌 (Antarctic Journal) 2005韓国 (監)イム・ピルソン (出)ソン・ガンホ、ユ・ジテ、カン・ヘジョン 2005/09/06 アミューズCQN 「到達不能点」を踏破すべく意気揚々と出発した6人が、 南極という過酷な非日常空間の中で、少しずつおかしくなってゆく。 吹雪の過酷さはよく感じられ、イギリス隊の遺品なども絡めて、 ジリジリと追い詰められる心理的な恐怖感が醸し出されていた。 ただ、映画の規模の割に物語の奥行きがやや乏しいように思われ、 またホラーっぽいフラッシュ映像を多用し過ぎて、 映画の方個性がよく分からなくなっていた気も。 ホームページ
リンダ リンダ リンダ 2005日本 (監)山下敦弘 (出)べ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織 2005/09/05 熊谷シネティアラ21 ◎ 文化祭の出番まで数日間の、にわか仕立て女子高生ロックバンドの奮闘ぶり。 私自身も学生の頃に音楽をやっていたこともあり。 初めて合わせた時の曲にならない感じとか、 あと本番を残すだけとなった時の寂しさとか、 何よりも一緒に弾いている時のどうしようもない楽しさとか、 自分の当時の感覚が脳裏に蘇ってきて、 本番での高揚感には涙さえこぼれてしまった。 一種独特の「間の悪さ」の演出も、この監督の持ち味。 ホームページ
TOMORROW/明日 1988日本 (監)黒木和雄 (出)桃井かおり、南果歩、仙道敦子、黒田アーサー、佐野史郎 2005/08/27 深谷シネマ ◎ 昭和20年8月「8日」の長崎。 ささやかな結婚式を挙げた二人、ようやく赤ん坊を産んだ母親、 想いの揺れる恋人たち、自身の仕事に精を出す人々、友達と水遊びする子供たち。 明日がまさかそんな日になるとは知らずに過ごした、それぞれの大切な一日。 そして迫り来る「明日」、ああ、何というか。 決して声高になることなく、あくまでも静かに淡々と描いているからこそ、 その分だけ強烈に原爆への怒りや戦争の悲しさが伝わる。 この季節にこの映画を採り上げた深谷シネマの英断に敬意を表したい。
マザー・テレサ (MOTHER TERESA) 2003イタリア=イギリス (監)ファブリツィオ・コスタ (出)オリビア・ハッセー、セバスチャーノ・ソマ、ミハエル・メンドル 2005/08/19 シャンテ・シネ ○ インドのスラム街で貧しき人々のために尽くしたマザー・テレサ。 幾多の苦難や障害に直面しながらも、時には頑固に、愚直なまでに 自身の信念を貫き通した彼女の生き方を辿る。 題材がよいのでそれなりに感動的だし、主演女優の好演は確かに見ものだが、 しかし映画としては至って凡庸な出来と思う。 貧民街で交わされる英会話も甚だ違和感あり。 ホームページ
モディリアーニ 真実の愛 (Modigliani) 2004フランス=イギリス=イタリア (監)ミック・デイヴィス (出)アンディ・ガルシア、エルザ・ジルベルスタイン、オミッド・ジャリリ、イポリット・ジラルド 2005/08/19 シャンテ・シネ ◎ 1920年頃のパリ、モンパルナス。 売れない画家モディリアーニの破天荒な晩年と、不遇な彼を心底愛した妻ジャンヌ、 そしてピカソを始めとする同時代の画家たちの自信と対抗心。 錚々たる面々が集う当時のカフェの風景を実写で見られたことに大満足で、 彼らが渾身の力量を振るったサロンでのコンテストの場面では圧倒的な感動あり。 英語劇なのが残念で、どこまでが史実なのかは気になるが、 何れにせよこの時代の画家たちの作品を見る楽しみが倍増しそうだ。 ホームページ
ヴェラ・ドレイク (Vera Drake) 2004フランス=イギリス=ニュージーランド (監)マイク・リー (出)イメルダ・スタウントン、フィル・デイヴィス、エイドリアン・スカーボロー、ダニエル・メイズ、アレックス・ケリー 2005/08/14 銀座テアトルシネマ ◎ 堕胎が禁じられていた1950年代のイギリス。 娘たちを助けるために善意で行ってきた堕胎の処置が発覚し、 罪を問われることになった善良なる中年女性と、その家族の苦悩の物語。 前半が朗らかな程に平穏に過ぎ去って行く分だけ、 後半での世の中の不平等さや理不尽さがずっしりと重く心にのし掛かる。 予期せぬ事態に、おどおどと怯える主演女優も、動揺を隠せない家族役も、 まさに迫真の演技で、物凄い緊迫感。 ホームページ
サヨナラCOLOR 2004日本 (監)竹中直人 (出)竹中直人、原田知世、段田安則、雅子、中島唱子、水田芙美子、内村光良、中島みゆき 2005/08/14 ユーロスペース ◎ 独身の中年医師が担当することになった難病の女性は、高校の同級生で、 しかも医師の未だ忘れ得ぬ初恋の人。 なのに悲しいかな、彼女は医師のことをさっぱり覚えていないのだった。 医師は自分を思い出してもらうべく奮闘するが、 あまりのしつこさに彼女は辟易気味、 しかし医師は彼女の治療に全身全霊を捧げるのだった。 シャイで、不器用で、ちょっとおかしくて、ちょっと悲しい、 竹中流の一途な純愛の世界が、私は大好きだ。 切ない物語に似合って映像も細部まで綺麗。 ホームページ
運命じゃない人 2004日本 (監)内田けんじ (出)中村靖日、霧島れいか、山中聡、山下規介、板谷由夏 2005/08/14 ユーロスペース ◎ 失恋したばかりの女と、恋人のことを忘れられない男が、 レストランの席で隣り合ったばかりに偶然に引き合わされ、 よい予感かと思わせておきながら、しかしあれよあれよと言う間に、 物語は思わぬ方向に飛び火してゆく。 一つの時間軸を主観を変えては辿り直すよくあるスタイルだが、 偶然と大きな企みと小さな出来心から引き起こされる予想外の展開の連続で、 しかも最後は嬉しい予感。 ふと気付けば、これらは皆たった一晩の出来事なのであった。 ホームページ
きみに読む物語 (The Notebook) 2004アメリカ (監)ニック・カサヴェテス (出)ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス、ジーナ・ローランズ、ジェームズ・ガーナー 2005/08/06 深谷シネマ ○ 昔々、貧しい若者と、富豪の娘がいました。二人は出会い、恋に落ちますが、 娘の両親によって二人の仲は引き裂かれてしまいます。 十年の時を経て二人が再会した時、娘には別の婚約者がいたのでした… と言う古風な恋物語を読み聞かせる老父。 それを熱心に聴く老婆は、ふと何かに思い当たる。 純愛系とは言っても、アメリカ映画らしくベタベタくっつき過ぎなのが (私には)難点だが、最後の二人の姿はうらやむべき理想像に思えた。 湖や鳥などの風景がとにかく綺麗。 ホームページ
星になった少年 (Shining Boy & Little Randy) 2005日本 (監)河毛俊作 (出)柳楽優弥、常盤貴子、高橋克実、倍賞美津子、蒼井優 2005/07/24 太田イオンシネマ ○ 親の反対を押し切ってタイのゾウ学校に留学し、 日本で初めてのゾウ使いになった少年と、彼を見守る家族をめぐる物語で、 実話とのこと。 動物と子供の話と言うこともあり、話の筋自体は間違いなく感動的。 しかし映画としては、話の流れを押し込み過ぎのような、 感動が押し付けがましいような印象が残った。 加えて音楽も、過剰かつ大袈裟で、安っぽく盛り上げようとし過ぎ。 全体に、もっと淡々と静かに描けばよかったと思う。 ホームページ
恋する神父 (Love, So Divine) 2004韓国 (監)ホ・インム (出)クォン・サンウ、ハ・ジウォン 2005/07/24 太田イオンシネマ ○ 神父になる日を目前に控えた生真面目な神学生。 特別修練先の教会で、教会の親戚筋の娘を洗礼に導く課題を命じられ、 アメリカ帰りの娘の奔放な振る舞いに頭を悩ますが、 いつしか自分に禁じていた筈の恋心が芽生えてしまう。 神学生役のクォン・サンウは 自分でもどうにもならない感情の揺らぎをよく表出していて、 対する娘役のハ・ジウォンも小悪魔的な可愛らしさでうまく神学生を惑わせていた。 カトリック教会という場の張り詰めた雰囲気もよい。 ただ、最後に神学生が選んだ結末は、 私としてはそうなって欲しくなかった気も。 ホームページ
埋もれ木 2005日本 (監)小栗康平 (出)夏蓮、浅野忠信、田中裕子、平田満、岸部一徳 2005/07/10 シネマライズ ◎ 『眠る男』の手法を更に昇華させたような作品で、 前作の時と同様、何でこんなに感動しているのか自分でも分からないような、 不思議な感覚に満たされた。 舞台は片田舎の寂れた町で、仲良し女子高生など登場人物は決まっているものの、 物語らしい物語はあってないようなもの。 美しく時に幻想的な映像の中で、現実と非現実とが静かに交錯してゆく。 難解と言えば難解で、ゆったりと眠気を誘う雰囲気はあり、 人によって好みが分かれる作品だと思うが、私自身はこれを天才の仕事と思う。 ホームページ
敗者復活戦 (Repechage) 1997韓国 (監)イ・グァンフン (出)チャン・ドンゴン、キム・ヒソン 2005/07/10 池袋シネマロサ ○ お互いの彼女と彼氏が付き合っていることを知った男女が、 結託して恋人たちのところに押し掛け、泣き付き、嫌がらせをし、 そうこうする内にいつしか二人は互いに心引かれてゆく。 これが映画デビューのチャン・ドンゴンは格好よく爽やかで、 対する女優さんたちは劇中での性格の悪さと濃い化粧のせいであまり爽やかでない。 上映前に、チャン・ドンゴン出演の日本のCM(焼酎、化粧品)を流していて、 気の利いたサービスだと思う。 ホームページ
マルチュク青春通り (マルチュク通り残酷史/Once Upon a Time in High School) 2004韓国 (監)ユ・ハ (出)クォン・サンウ、ハン・ガイン、イ・ジョンジン、パク・ヒョジュン 2005/07/09 GyaOオンライン試写会 ◎ 1978年、柄の悪さで有名な男子高に転校した高校生。 クラスの番長格の男と仲良くなりつつ、 バスの中で出会った女子高生に恋するものの、そんな彼の密かな想いをよそに、 番長はあっけなく彼女と親しく付き合い始めてしまう。 若き日の初々しさと運命の残酷さに、胸が熱くなる感動作。 その時代の韓国の空気感がよく伝わると共に、どこか普遍的な懐かしさも漂う。 教室を覗き込むメロメロの笑顔から、屋上の決闘での激しいアクションまで、 クォン・サンウの魅力も満載。 ホームページ
大統領の理髪師 (孝子洞の理髪師) 2004韓国 (監)イム・チャンサン (出)ソン・ガンホ、ムン・ソリ、リュ・スンス、イ・ジェウン、チョ・ヨンジン、 ソン・ビョンホ、パク・ヨンス 2005/07/05 深谷シネマ ◎ 深谷シネマ「アジア映画特集」の第4作目で、 私自身は2度目(→2005/02/24)の鑑賞。 学はないけど正義感はある理髪師の言動に笑わされ、 圧政政府の内情の愚かしさに苦笑させられ、 息子と父母の命運に涙させられ、ラストも絶妙。 ソン・ガンホもムン・ソリも子役の少年も、 他に代役が考えられないほどぴったりはまっている。 主流の韓流純愛路線ではないが、 笑い・泣き・皮肉、等々の色々な要素が見事に詰め合わされていて、 韓国映画の底力を堂々と見せ付けるような大傑作。 ホームページ
マラソン (Marathon) 2005韓国 (監)チョン・ユンチョル (出)チョ・スンウ、キム・ミスク、イ・ギヨン 2005/07/03 熊谷シネティアラ21 ◎ 自閉症を持って生まれた20歳の少年、息子のフルマラソン完走を一途に目指す母親、 少年のコーチを厭々ながら引き受けた元ランナーの男、 それぞれの挫折や葛藤に、大いに泣かされた。 あまりにも純真な青年がひたすら走る姿には、 私自身もドキドキしながら「がんばれ!」と本気で心に念じていた。 最後の微笑にはちょっと疑問も残るが、 全てから解き放たれた最後の走りのイメージにまさに滂沱の涙。 主役のチョ・スンウは、期待に違わぬ好演。 室内楽的な音楽も丁寧に感動を増強する。 ホームページ
故郷(ふるさと)の香り (暖) 2003中国 (監)フォ・ジェンチイ (出)グオ・シャオドン、リー・ジア、香川照之 2005/07/01 深谷シネマ ◎ 深谷シネマ「アジア映画特集」第3作目で、 2005/03/02以来の再見。 10年振りに帰郷した村で、初恋の女性に偶然再会した男の脳裏に蘇る、 共にこの村で過ごした日々の記憶と、10年前に交わしたはずの約束のこと。 そしてもう取り戻せない10年の歳月。 絡み合う想いを繊細に演じ切った中国若手俳優たちも勿論だが、 聾唖の夫になり切った香川照之が実に素晴らしく、 彼が最後に下した思いもよらぬ決断がもたらす感動は、何とも圧巻。 ホームページ
四日間の奇蹟 2005日本 (監)佐々部清 (出)吉岡秀隆、石田ゆり子、尾高杏奈、中越典子、松坂慶子、西田敏行 2005/07/01 熊谷シネティアラ21 ○ 不慮の事故で絶命する前の数日間、女性の魂は少女の体に宿り、 やっと再会した初恋の人に思いの丈を告げると共に、 自身に注がれた愛を見つめ直してゆく。 なかなか泣かせる作品には仕上がっているものの、 (この監督の旧作と同様に)何となく表出過剰で、 言いたいことはよく分かるのに今ひとつ気分が乗り切れない感あり。 また、障害の演技やCGの使用について、どう見ても成功しているようには思えず、 いい映画になりそうなのに、もう一歩との印象。 ホームページ
フェーンチャン〜ぼくの恋人 2003タイ (監)365フィルム・プロダクションズ (出)チャーリム・タライラット、フォーカス・ジラクン 2005/06/25 深谷シネマ ○ 深谷シネマ「アジア映画特集」第2作目。 幼馴染の女の子といつも一緒に遊んでばかりいた男の子が、 腕白少年グループの仲間に入れて欲しいばかりに、 女の子の心を傷つけることをしてしまい、後悔しつつも、 そのことをなかなか謝れない内に、女の子は引っ越して行ってしまう。 あまりにもささやかな物語で、ちょっと進展が退屈なところはあるが、 子供たちの純粋な喜びや悲しみがよく伝わって来る、心温まる佳作。 家電や車をはじめ日本製品があまりに多いことにも、つい目を引かれた。 ホームページ
帰郷 2004日本 (監)萩生田宏治 (出)西島秀俊、片岡礼子、守山玲愛 2005/06/24 新宿武蔵野館 ○ 突然再婚した母親の祝祭のために久しぶりに帰郷した男。 偶然再会した昔の恋人は、聞けば、最近離婚して、幼い娘を連れて帰郷した由。 しかし彼女は、娘が男に似ているなどと思わせ振りな言葉を残したまま、 娘を男に託して消息を絶ってしまう。 西島秀俊や片岡礼子など集中度の高い俳優陣はよいと思うものの、 どうもストーリーに納得性が薄い気がするのが残念。 しかし、結論をはっきりさせないまま、 将来への予感を残して終わるところはよい感じで、後味もよい。 ホームページ
彼女を信じないでください (Too Beautiful To Lie) 2004韓国 (監)ペ・ヒョンジュン (出)キム・ハヌル、カン・ドンウォン、ソン・ジェホ、キム・ジヨン、イ・ヨンウン 2005/06/24 VIRGIN TOHO CINEMAS六本木ヒルズ ◎ 刑務所から仮釈放されたばかりの詐欺師の女が、成り行きで、 電車でたまたま出くわした善良なる薬剤師の男の婚約者のふりをする羽目に。 男の家族もすっかり騙され、彼女は更に嘘の上塗りを余儀なくされ、まずい状況に。 しかしそうこうする内に、二人は互いが気になってくる。 ストーリーが隅々まで練りに練られていて、しかも軽快なテンポで、 心憎い程に楽しませる映画。 カン・ドンウォンは気の毒な位に格好悪い役で、 一方、大嘘つき役のキム・ハヌルは持ち前の表情の幅の広さのためもあって、 まさに当たり役。 ホームページ
ファースト・キス (キスしましょうか) 1998韓国 (監)キム・テギュン (出)アン・ジェウク、チェ・ジウ、イ・ギョンヨン、ユ・ヘジョン 2005/06/18 太田イオンシネマ ○ 有能だが奥手の雑誌記者の女と、プレイボーイ風でいて実はウブな カメラマンの男との、なかなか素直になれない恋の物語。 ポスターではいつになく厚化粧のチェ・ジウだが、 実際には逆でまるで化粧っ気のない役。 インタビューされる女優役でイ・ヨンエが出ていたり、 その共演者がチャン・ドンゴンだったり、 映画監督役が「冬ソナ」の担任教師の人だったり、なかなか豪華キャスト。 上出来とは思わないが、楽しい作品ではあった。 ホームページ
天上草原 2001中国 (監)サイフ、マイリース (出)ナーレンホア、ニンツァイ、グアルスーロン 2005/06/17 深谷シネマ ◎ 深谷シネマ「アジア映画特集」の第1作目。 私にとっては東京都写真美術館 (→2005/03/20) に続いて2度目の鑑賞。 壮大に拡がる草原の季節の移ろいの中で 「家族」の結び付きがあってこそもたらされる悲しみが、 物語を分かっている分だけ、一層深く心に刻まれた。 館内で、モンゴルの衣装や装飾品、小物等の展示・販売もあり。 ホームページ
ニライカナイからの手紙 2005日本 (監)熊澤尚人 (出)蒼井優、平良進、南果歩、金井勇太、かわい瞳、比嘉愛未、斎藤歩、前田吟 2005/06/12 109シネマズ高崎 ○ 沖縄・竹富島。 7歳の時に東京に行ったきり、年に一度の手紙以外に全く音沙汰のない母。 寡黙なオジイとの暮らしを捨て、東京に出て来た娘は、 忙しさに振り回されて自分を見失いがち。 やがて、母と再会できるはずの20歳の誕生日がやって来る。 実を言えば話はすぐに読めてしまったし、 手紙の場面は長過ぎて逆効果な気がしたが、 にも関わらず静かな感動がこみ上げて来る。 別に沖縄でなくてもこの物語は成立しそうだが、 もし沖縄の風土が背景になかったら こんなに心に響く物語にはなっていなかったと思う。 ホームページ
ピアノを弾く大統領 (The Romantic President) 2002韓国 (監)チョン・マンベ (出)チェ・ジウ、アン・ソンギ、イム・スジョン 2005/06/11 太田イオンシネマ ○ 新任でやる気満々の女性教師が、反抗的な女生徒を強く戒めたところ、 その生徒は実は大統領の娘で、周囲は大慌て、しかし男やもめの大統領は、 その教師の容赦ない一本気さに心引かれてゆき、 二人の関係は次第に近づいてゆくものの、うっかり新聞にスクープされてしまい…、 というラヴ・コメディー。 庶民派大統領を演じるアン・ソンギがいかにも似合っていたが、 それ以上に、強情なのに臆病だったりもする熱血教師役のチェ・ジウの表情が (「涙の女王」とはかけ離れた役柄でも)実にチャーミング。 ホームページ
同い年の家庭教師 (MY TUTOR FRIEND) 2003韓国 (監)キム・ギョンヒョン (出)クォン・サンウ、キム・ハヌル 2005/06/05 太田イオンシネマ ◎ 喧嘩に強いばかりで学力は最低の留年高校生と、 その家庭教師を引き受けることになってしまった無鉄砲な女子大生との、 激突と紆余曲折の末の恋(?)の物語。 教師と生徒が同じ年と言う設定からしてかなり面白く、 最初から舐めてかかっている相手を、何とか教師面をして手懐けようとする 彼女の奮闘ぶりがコミカルで、最後の最後まで楽しい展開。 キム・ハヌルの、先週の『氷雨』とは打って変わって、 喜怒哀楽丸出しでコロコロと変わる表情がよい。 ホームページ
マイ・ブラザー 2004韓国 (監)アン・クォンテ (出)ウォンビン、シン・ハギュン、キム・ヘスク 2005/06/01 熊谷シネティアラ21 ○ 口蓋裂の障害を持つ秀才タイプの兄と、喧嘩っ早い番長タイプの弟の、正反対な兄弟。 病弱のせいで母から溺愛される兄に対して、弟の心は嫉妬心と優越感の間で揺れる。 高校卒業後、兄は医学生に、弟はチンピラになり、やがて兄弟の蟠りが解けた頃に、 思わぬ悲劇が一家を襲う。ちょっと安易な展開の気もするし、 母親の心理が不可解な気もしたが、それでも最後にはなかなか感動させられた。 ちなみに母親役は、「冬ソナ」でユジンの母親だった人。 ホームページ
氷雨 (ice rain) 2004韓国 (監)キム・ウンスク (出)ソン・スンホン、イ・ソンジェ、キム・ハヌル 2005/05/29 太田イオンシネマ ◎ アラスカの雪山登山で、吹雪の中、崖から転落して身動きの取れなくなった男二人。 絶望的な状況下、山に来た理由を語り合う中で、それぞれの胸の内に去来する ある女性の思い出から、互いの関係が意外な方向で結び付いてゆく。 主演俳優二人は勿論よかったが、キム・ハヌルの、思い詰めたところで自分を 押し殺した静かな笑みの表情は『リメンバー・ミー』 (→2005/01/30)をも上回るものがある。 壮絶な雪山の中で迎える最後の結末はとても悲しく、しかしそれでよかったのだ、 とも思う。荘厳な音楽に煽られて、こんなに泣いてしまったのは久し振り。 ホームページ
オー!ブラザーズ 2003韓国 (監)キム・ヨンファ (出)イ・ジョンジェ、イ・ボムス、イ・ムンシク、リュ・スンス 2005/05/27 シネマスクエアとうきゅう ○ 早老症という病気を負った異母兄弟の弟を、やむを得ず 施設から引き取る羽目になった兄。弟を扱いかねて当初は当惑ばかりの兄だったが、 ふと思い立って、弟の特異な外見を利用して、恐喝まがいの金の取り立てなどを ちゃっかり遂行してゆく。奇病を使った際どい状況設定だが、そんな心配を 笑い飛ばしてしまうような勢いがあって、しかも全体としては家族愛の物語にも なっていてちょっと泣かせる所もあり、後味も爽やか。 ホームページ
村の写真集 2004日本 (監)三原光尋 (出)藤竜也、海東健、宮地真緒、原田知世 2005/05/27 東京都写真美術館ホール ○ 徳島の山奥。村がダムの底に沈む前に「村の写真集」を作る仕事を受けて、 村民たちの写真を撮って回る老写真家と、都会か呼び戻されて 最初は嫌々ながらそれを手伝う息子との物語。 ざっと言ってしまうと臭い話だが、父と息子との距離感が縮んでゆくに従って、 ジワジワと感動に襲われて何度も目が潤んでしまい、 最後に次々に画面に写されるモノクロ写真にはついに涙が噴出。 意外にもかなり客は入っていて、しかも平均年齢は高そう。 ホームページ
スカーレットレター (THE SCARLET LETTER) 2004韓国 (監)ピョン・ヒョク (出)ハン・ソッキュ、イ・ウンジュ、ソン・ヒョンア、オム・ジウォン 2005/05/27 アミューズCQN 妊娠中の妻がありながら、昔の恋人との情事に耽る敏腕刑事が、ジリジリと追い詰められてついに破綻へと至る、まさにドロドロの愛憎劇。しかも彼らの関係は思いの他入り組んでいて…。個人的には、残念ながらいただけない作品。あまりに絶望的で、どうにも息苦しく、観ていて耐え難い気分だった。これが遺作と強調されては、イ・ウンジュが可哀想な気さえする。 ホームページ
理由 2004日本 (監)大林宣彦 (出)村田雄浩、寺島咲、岸部一徳、他多数 2005/04/29 深谷シネマ ◎ 東京の下町にそびえ立つ高層マンションの一室で起こった殺人事件。 しかし被害者たち、そこに住んでいる筈の家族とは全くの他人たちだった。 原作は宮部みゆきの長編小説(→2000/12/19) で、あの長大かつ複雑に入り組んだ話がうまく映画になるのかと危ぶんでいたのだが、 意外にも、107人の登場人物にそのまま証言させると言う手法が奏功し、 なかなか成功していたと思う。 出演者たちの大半はほんの一瞬の出番だが、しかし超豪華キャスト。 ホームページ
甘い人生 (a Bittersweet Life / La dolce vita) 2005韓国 (監)キム・ジウン (出)イ・ビョンホン、シン・ミナ、キム・ヨンチョル、キム・レハ、ファン・ジョンミン、チン・グ、エリック 2005/04/29 熊谷シネティアラ21 ◎ 表社会からも裏社会からも信望厚い冷徹無情な男。 ボスから愛人を監視するように指示され、ついに逢引の現場を取り押さえたものの、 一瞬の気の揺らぎからボスへの通報をためらってしまうが、 それを境目に、それまで完璧であった男の人生がずるずると壊滅へと転落してゆく。 一つの「滅びの美学」さえ感じさせる、洗練された映像とストーリー展開。 残虐な暴力シーンが多く、私の好みからは外れるものの、映画としては極めて高水準。 ホームページ
隠し剣 鬼の爪 2004日本 (監)山田洋次 (出)永瀬正敏、松たか子、吉岡秀隆、田畑智子、小澤征悦、高島礼子、田中泯、小林稔侍、緒形拳 2005/04/23 深谷シネマ ○ 西洋近代戦術が流入しつつある幕末期。貧しい武士の男は、 商家に嫁いだものの冷遇されていたかつての女中を家に連れ戻す。 二人は身分違いながらも互いに想いを寄せていた。 一方、男は謀反を起こした男を斬るように命じられるが、 彼はかつて共に剣術を学んだ仲間であった。 一対一の果し合いの場面には壮絶さが漂い、 内向的な恋物語には泣かされるが、 前作『たそがれ清兵衛』(→2003/06/29)と どうも傾向が似過ぎているのが難点かも。 ホームページ
コースト・ガード (海岸線/Coast Guard) 2002韓国 (監)キム・ギドク (出)チャン・ドンゴン、キム・ジョンハク、パク・チア、ユ・ヘジン 2005/04/21 シネマスクエアとうきゅう ○ 「韓流シネマ・フェスティバル2005」での上映。 軍事境界線の湾岸警備に当たる兵士が、誤って民間人を射殺してしまい、 それを引金に、何もかもがおかしくなってゆく。 犠牲者の恋人は発狂し、その兄は逆上し、 誤射した当人は罪悪感に苛まれた挙句に除隊され、 正気か狂気かついに思いもよらぬ行動に走ってゆく。 水や魚や鏡などが象徴的に使われ、キリキリと痛むような緊張感が漲り、 取り戻せない過去への痛恨の念がずっしり重い。 ホームページ
カナリア (Canary) 2004日本 (監)塩田明彦 (出)石田法嗣、谷村美月、西島秀俊、りょう、つぐみ 2005/04/21 アミューズCQN ○ カルト教団から「救出」された少年が保護施設を脱走して、 やはり心に傷を抱えた少女と共に、引き離された妹を探す旅に出る物語。 謎めいた女性カップルや、かつて共に暮らした元信者らとの出会い中で、 信じてきたことの土台が崩れてゆくのを受け入れ難い少年の苦悩は、 衝撃的なニュースによって頂点を達する。 異常な事態であってもただの狂信者扱いせず、 当事者たちの内面をきちんと捉えようとしていたのがよい。 ホームページ
オオカミの誘惑 (Romance of their own) 2004韓国 (監)キム・テギュン (出)イ・チョンア、チョ・ハンソン、カン・ドンウォン 2005/04/17 熊谷シネティアラ21 ○ 田舎から都会に転校したばかりのちょっと冴えない女の子が、 カッコよくて強い二人の男子生徒から恋われて板挟み、 と言う甘い願望系の話のようでいて、 しかし途中から『冬ソナ』を想起させる展開(血縁、事故、病魔…)に。 主人公たちが高校生というのは(年齢的にも物語的にも) かなり無理がある気はするものの、全体としては意外に悪くない出来。 主役の二人が、最初は気障に振舞っている分だけ、 最後に見せる純情な表情には泣かされる。 ホームページ
モーターサイクル・ダイアリーズ (Diarios de motocicleta) 2003イギリス=アメリカ (監)ウォルター・サレス (出)ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ミア・マエストロ 2005/04/10 高崎映画祭 ◎ 若き医学生(後の革命家チェ・ゲバラ)と親友の生化学者、二人の若者が ポンコツのバイク(途中で壊れてからは徒歩とヒッチハイク)で南米大陸を縦断した旅。 いくつもの国境を越え、様々な生活を見、人々と語らい、らい病院で働く中で、 当初は勢い任せだった二人の意識が、次第に確固たるものとなってゆく。 砂漠や雪山、山峡や大河、遺跡や市場などの景観も見もので、 二人の理想の焦点が絞られてゆく様は共感を誘い、最後の回想には涙。 ホームページ
あゝ野麦峠 1979日本 (監)山本薩夫 (出)大竹しのぶ、原田美枝子、友里千賀子、古手川祐子、三国連太郎、西村晃、地井武男 2005/04/09 熊谷市中央公民館 ○ 明治時代、富国強兵の号令の元、はるばる飛騨高山から山を越えて諏訪の製糸工場に 連れて来られ、過酷な労働環境で道具のようにこき使われて、 そして棄てられた娘たちの物語。 時代背景をしっかり教えてくれると共に、 娘たちの悲しみや喜びが丁寧に描かれていて、 筆頭格だった二人の末期は(鹿鳴館の舞踏シーンとの対照されているだけに) 何ともやるせない。 地元ボランティアによる無料上映で、機材不調で何度も中断したのは仕方ないこと。
恋の門 2004日本 (監)松尾スズキ (出)松田龍平、酒井若菜、松尾スズキ 2005/04/07 高崎映画祭 ○ 石を偏愛する自称漫画芸術家の男と、 コスプレ趣味のアニメ狂OLとの、ハイテンションでシュールでナンセンスな恋愛物語。 完全にブッ飛んでいる主人公たちと、それに劣らず奇天烈な周囲の人たち (しかも豪華キャスト)の、目くるめく展開は、 馬鹿馬鹿しいながらも、ただひたすらに面白かった。 アニメやコスプレと聞くとつい色メガネで見てしまうが、 自分の好きな世界に熱中していると言う点では、 映画や音楽や読書の趣味だって全然違いはないのだな。 ホームページ
午後の五時 (At Five in the Afternoon) 2003イラン=フランス (監)サミラ・マフバルバフ (出)アゲレ・レザイ、アブドルガニ・ヨセフラジー、ラジ・モヘビ、マルズィエ・アミリ 2005/04/07 高崎映画祭 タリバン崩壊後のアフガニスタンで、未来への大きな夢を抱く若く聡明な女性が、 現実の厳しさに押し潰されてゆく。 圧政の時代が去ったところで、宗教的背景に根付いた女性への抑圧は変わりなく、 若い詩人と心通わせながらも、最低限の衣食住すら確保できないままに、 徐々に荒野へと追いやられてゆく家族の悲惨さを目の当たりにして、 すっかり気分が滅入ってしまった。 見て知っておくことの大切さは認識しつつも、どうにも救いがないのが辛過ぎる。 ホームページ
父、帰る (VOZVRASHCHENIE) 2003ロシア (監)アンドレイ・ズビャギンツェフ (出)ウラジーミル・ガーリン、イワン・ドブロヌラヴォフ、コンスタンチン・ラヴロネンコ 2005/04/07 高崎映画祭 ○ 12年振りに突然家に戻って来た父親、 写真でしか見たことのない父の出現に戸惑う兄弟。 父は息子たちを連れて車で旅行に出るが、互いの関係はぎくしゃくしたまま、 やがて辿り着いた孤島で、当人たちさえ予想しなかった悲劇が訪れる。 どんよりと曇らせた映像に、引き摺られるように重苦しい物語で、 しかも取り返しのできない結末には、どうしようもなく沈んだ気分に。 父は本当は何をしたかったのだろうかと、どうも気持ちの整理がつかない感じ。 ホームページ
恋の風景 (戀之風景/The Floating Landscape) 2003香港=中国=日本=フランス (監)キャロル・ライ (出)カリーナ・ラム、リィウ・イエ、イーキン・チェン 2005/03/31 ユーロスペース ◎ 病死した恋人が遺した幻のような風景画の場所を探して、 恋人の故郷・チンタオへとやってきた女性。 たまたま出会った郵便配達の青年が彼女を手伝ってくれるが、 その青年へとなびいてしまう自分の心を彼女は許せない。 ついに香港へと帰る決意をした彼女の目に飛び込んできたものは…。 『山の郵便配達』のリィウ・イェがまたしても郵便配達夫で、しかも舞台は 中国本土だが、しかし全体としての印象は中国映画というよりは香港映画。 地味で内向的なロマンティックさが好みの傾向。 ホームページ
サマリア (samarian girl) 2004韓国 (監)キム・ギドク (出)クァク・チミン、ハン・ヨルム(ソ・ミンジョン)、イ・オル 2005/03/31 恵比寿ガーデンシネマ ◎ 無二の親友の女子高生二人。 外国旅行のお金をためようと援助交際する友人を、苦々しくも見守る少女。 しかし目の前でホテルの窓から落下して死んでしまった彼女の贖罪のために、 少女はそれまでに得たお金を男たちに返す決意をするが、 それを知ってしまった少女の父は苦悩に苛まれる。 残酷さと危うさと痛みと美しさとが交錯する中に、 どこか宗教的な「赦し」の気配さえ漂う、深みのある物語。 誰が彼女たちに石を擲つことができようか。 ホームページ
天上草原 (Heavenly Grassland) 2001中国 (監)サイフ、マイリース (出)ナーレンホア、ニンツァイ、グアルスーロン 2005/03/20 東京都写真美術館ホール ◎ 広大なモンゴルの草原で、義弟と暮らす女のもとに、 獄中にいた夫が刑期を終えてふらり戻って来たが、 彼は知人の息子で口の利けない少年を携えてきていた。 少年は、義弟や女の優しさ少しずつ心を開いてゆくが、 4人の平穏な暮しは長くは続かなかった。 遊牧民族らしい無骨な愛情表現が感動的で、 自由そうに見える中にこそある不自由に胸を打たれ、 映画的な拡がりのある映像は見応え充分。 ただ、最後の展開はちょっと気の毒過ぎる気も。 ホームページ
バンジージャンプする (bungee jumping of their own) 2001韓国 (監)キム・デスン (出)イ・ビョンホン、イ・ウンジュ 2005/03/20 新宿武蔵野館 ○ 学生時代、豪雨の夜に運命的に出会った男女。 やがて男が兵役へと出向く日、見送りに来る筈の女はついに現れなかった。 そして十数年後、教師となった男は、 一人の男子生徒に妙に心惹かれている自分自身の意識に思い悩まされる。 主演俳優陣はさすがによいし、純愛そのものの物語ではあるのだが、 それ故に主人公が選んだ結論が、私にはどうも受け入れられず、 気分的に入り込めなかった。 自分自身の意識からジャンプできない己の狭量さを感じる。 ホームページ
≒舟越桂 (near equal funakoshi katsura) 2004日本 (監)藤井謙二郎 (出)舟越桂 2005/03/20 アップリンク・ファクトリー ◎ 彫刻家・舟越桂の制作過程に密着したドキュメンタリー。 約3ヶ月間、新作を作り上げるまでの模様を丹念に見せる中で、 舟越さんの全貌に迫ってゆく。 アトリエの中でひたすら彫っている場面が大半であるにも関わらず、 舟越さんご本人も映画の制作過程を積極的に楽しんでいるためもあって、 極めて興味深く面白いものに仕上がっていて、全く退屈させない。 ちなみにパンフレット(千円)には、 舟越さんが彫ったクスノキの木屑を詰めた布袋が付録。 すーっとした木の香りがたまらない。 ホームページ
草の乱 2004日本 (監)神山征二郎 (出)緒形直人、藤谷美紀、杉本哲太、田中好子、林隆三 2005/03/19 江南町文化会館 ○ 明治初期、埼玉県秩父地方。悪政に起因する生糸価格の暴落と高利貸しの横行に 苦しめられる養蚕農家たちが、ついに武装蜂起を決行した「秩父事件」を描いた映画。 結局は叩き潰された彼らの無念さがひしひしと伝わり、何ともやりきれない思いだ。 この事件が追い詰められた末の止むに止まれぬ抗議行為であったこと、 必ずしも困窮していない仲買人なども賛同し闘争を主導していたこと、 それを時の施政者が単なる「暴動」として葬り去ろうとしたことなど、 地元民でありながら何も知らなかったことを恥ずかしく思う。 ホームページ
泥の河 1981日本 (監)小栗康平 (出)田村高廣、藤田弓子、芦屋鴈乃助 2005/03/12 熊谷市中央公民館 ◎ 戦後十年の大阪。川辺のうどん屋の小学生の息子は、 目の前の川に浮かぶみすぼらしい船で暮らす姉弟と友達になるが、 父母は夜はその船に行ってはいけないと言う。 その時代の空気が、モノクロ映像の中に完璧に再現されていて、 宮本輝らしい少し残酷さを秘めた叙情性がよく出ていた。 地元ボランティアによる無料上映会で、映像も音声も甚だよろしくなかったが、 それでもこの作品を見られたことに心底感謝。 小栗康平第一回監督作品。 ホームページ
誰も知らない (Nobody Knows) 2004日本 (監)是枝裕和 (出)柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子、韓英恵、YOU 2005/03/05 深谷シネマ 2004/10/16に続く2度目の鑑賞。 実際にあった「西巣鴨子供4人置き去り事件」をモチーフにしたフィクション。 アパートの一室に置き去りにされた兄弟姉妹4人が、息を潜めて生きてゆく中、 異常が異常でなくなってゆく過程を刻々と見せてゆく。 あまりにも悲惨な話だし、それなのにどうしてこんなに心を揺さぶられてしまうのか、 自分でもよく分からない。何れにしても凄い映画だと改めて思う。 ホームページ
トニー滝谷 (TONY TAKITANI) 2004日本 (監)市川準 (出)イッセー尾形、宮沢りえ (ナレーション)西島秀俊 2005/03/02 ユーロスペース ◎ 孤独を当たり前のように受け入れて生きてきたイラストレーターの男。 一人の女性と運命的に出会によって、人生の孤独な時期を終了したが、 幸せな時間はあっけなく過ぎて、彼女は突然この世から去ってしまう。 彼女が遺した膨大な洋服や靴を前に、再び訪れた孤独を、男はなかなか受容できない。 静かで詩的な、幻想的ですらある「物語」で、 全篇を縁取るナレーションが極めて独創的で効果大。 最後、ふと唐突に終わってしまうのが、妙に印象的な余韻を残すと共に、 後になってじわじわと後を引く。 ホームページ
故郷(ふるさと)の香り (暖) 2003中国 (監)フォ・ジェンチイ (出)グオ・シャオドン、リー・ジア、香川照之 2005/03/02 銀座テアトルシネマ ◎ 都会に出て10年振りに帰った故郷の橋の上で、ふとすれ違った、昔の恋人。 しかし彼女は、別人のように貧しくやつれた姿をしていた。 彼女の家を訪れた男は、彼女の夫が幼馴染の聾唖の男であることを知り、 かつての切ない想いが蘇ってくる。 主人公3人の、歳月の間でどうしようもなく離れてしまった境遇と、 微妙な心境がよく伝わってきて、 何より香川照之(の役)が最後に泣かせる。 中国の寒村の情景もしみじみと美しく、雨や水の音が情緒的で、 しかも全体として品がある傑作。 ホームページ
大統領の理髪師 (孝子洞の理髪師) 2004韓国 (監)イム・チャンサン (出)ソン・ガンホ、ムン・ソリ、リュ・スンス、イ・ジェウン、チョ・ヨンジン、 ソン・ビョンホ、パク・ヨンス 2005/02/24 ル・シネマ ◎ 1970年代の韓国。大統領府のお膝元に住んでいたばかりに、 大統領専属の理髪師となってしまった純朴な男と、その家族の物語。 政治なんてさっぱり分からないのに、官邸内の派閥争いにびくびくしながら、 しかし誇り高く仕事していた男だが、北朝鮮ゲリラがもたらした 「マルクス病」の疑いで、小学生の息子が収監されてしまう。 場内が笑いに包まれてしまうような滑稽な場面もあり、 圧政時代を痛烈に皮肉っている所もあり、 しかも最後はかなり感動的で、爽快な後味。 ホームページ
雨よりせつなく 2004日本 (監)当摩寿史 (出)田波涼子、西島秀俊、黒坂真美、深浦加奈子 2005/02/24 シネアミューズ ◎ 30歳間近、仕事をこなしつつ充実した毎日を過ごす女性が、 ふと同僚の男性と親しくなるが、 男は10年前の悲しい出来事から忘れられない傷を負っていた。 二人の出会いから別れ、そしてその後まで、淡々と過ぎてゆく時間。 劇的なことは何も起こらない、徹底的に地味な物語だが、 主演二人の穏やかそうな、しかしどこか翳りのある雰囲気が、 切なさをじわじわと醸し出す。 カップ麺とか釣り堀とかラジコン飛行機とか、場面がまるでお洒落でないのもよい。 ホームページ
いま、会いにゆきます 2004日本 (監)土井裕泰 (出)竹内結子、中村獅童、武井証、市川実日子、小日向文世 2005/02/19 深谷シネマ ○ 妻を亡くして一年、小学生の息子とともに何とか生きている男の元に、 雨の季節になったら戻って来るという約束通り、ふと戻って来た妻。 しかし彼女は、夫や息子の一切の記憶を失っていた。 夫婦や親子の関係を次第に再構築し始めた幸せな日々も束の間、 雨の季節の終わりが近づいてくる。 いかにもと言う感じの話のようでいて、しかし話はそう単純ではなくて、 回想場面の中から最後に明かされる秘密と、 そして現れる表題の意味には、かなり涙を絞られた。 ホームページ
炎のジプシーブラス 地図にない村から (Brass on Fire) 2002ドイツ (監)ラルフ・マルシャレック (出)ファンファーレ・チォカリーアのメンバー 2005/02/12 シネマテークたかさき ル−マニアの田舎のジプシー・ブラスバンドの日常と海外公演に密着した ドキュメンタリー。 決して豊かとは言えない農村地帯の超絶技巧ブラス集団に惚れ込んだ ドイツ人の若者が、彼らを西ヨーロッパへ、更には日本にまで連れ出す。 ドキュメンタリー映画としては悪くない出来だが、 演奏場面が盛り上がりの部分のカットばかりで、一曲を通して聞かせる部分が皆無。 肝心の音楽をもっときちんと聴かせて欲しかった。 また、字幕を省いた場面が多く、 あちこち何を言い合っているのか分からないのも残念。 ホームページ
オールド・ボーイ (OLD BOY) 2003韓国 (監)パク・チャヌク (出)チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・ヘジョン 2005/02/12 シネマテークたかさき ◎ 妻と幼い娘を残したまま、雨の夜に突然拉致され、15年間もの間、 監禁部屋に幽閉されていた男。 ある日、突然解放された男は、ついに自分を監禁した相手の所在を突き止め、 復讐すべく相手と対面するが、相手は監禁の理由を明かそうとしない。 やがて明らかになって来るのは、綿密なる復讐劇だった。 予想外の展開に驚かされるストーリーも、洗練の極みにある映像も、相当に高水準。 残虐な場面が多過ぎて私の好みからは程遠いものの、 それでもこの映画の凄さは認めざるを得ない。 ホームページ
海猫 2004日本 (監)森田芳光 (出)伊東美咲、佐藤浩市、仲村トオル、三田佳子、ミムラ、深水元基、蒼井優、小島聖 2005/02/11 深谷シネマ ○ 函館から、海辺の寒村の漁師の元へ嫁いだ女。 懸命の努力にも関わらず漁村の暮しに馴染めない女を、 町で働く漁師の弟は見守り続けているが、次女を出産した女が 病の床に臥した頃から、3人の微妙な関係がついに崩れてゆく。 主演の伊東さんの表情がやや起伏に乏しいのが難点だが、 それを補って余りある主演俳優2人の好演もあり、 また劇的なストーリー展開のためもあって、予想外になかなかの感動作。 ちなみに出演のミムラさんは地元・深谷の出身とのこと。 ホームページ
北の零年 (YEAR ONE IN THE NORTH) 2004日本 (監)行定勲 (出)吉永小百合、渡辺謙、豊川悦司、柳葉敏郎、石田ゆり子、石原さとみ、平田満、香川照之 2005/02/06 熊谷シネティアラ21 ○ 明治初期、淡路から北海道の未開の地へと移住を命じられた武士とその家族たち。 「我等の国」を作るべく一致団結していた彼らも、度重なる苦難の連続に、 次第にバラバラになり反目さえ生じるが、 それでも夫を信じて帰りを待っていた妻と娘を、思いもよらない絶望が襲う。 いささか大袈裟な物語ではあるが、 開拓時代の北海道にあったであろう苦難や苦悩を知ることができると共に、 時代に抗いながらも流されてしまう人間の悲しさがよく伝わる。 ホームページ
真珠の耳飾りの少女 (GIRL WITH A PEARL EARRING) 2002イギリス (監)ピーター・ウェーバー (出)スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ 2005/02/05 深谷シネマ ○ 17世紀オランダの画家フェルメールが、 貧しい使用人をモデルに傑作「真珠の耳飾りの少女」を描くまで。 アトリエの掃除を担う少女の感性に気付いた画家は、 彼女をモデルに絵を描こうとするが、妻や娘は嫉妬心を燃やす。 再現されたアトリエの光の加減などは本当に美しく、 まさに絵から飛び出して来たかのようで、これだけでも充分に見もの。 ただ、画家の芸術家意識に何となく17世紀的でないところがあるのと、 英語の会話が不自然なのが、ちょっと惜しいところ。 ホームページ
酔画仙 (Chihwaseon) 2002韓国 (監)イム・グォンテク (出)チェ・ミンシク、アン・ソンギ、ソン・イェジン、ユ・ホジョン、キム・ヨジン 2005/01/30 岩波ホール ◎ 19世紀朝鮮、卑しい身分に生まれながら、天性の画才で名を成した 放浪の天才画家(実在)の奔放な生涯を、朝鮮半島の社会情勢の流れに置いて描く。 短時間に大量のエピソードを盛り込み過ぎていて、話の流れが唐突な部分もあったが、 時代の朝鮮の街や田舎や宮廷などの情景がリアルで美しく、 何よりも画家になりきったチェ・ミンシクの姿にぐいぐい引き込まれ、 サラサラと絵が描かれる場面も見もので、満足感は高い。 『ラブストーリー』(→2004/12/23) のソン・イェジンの出番は、ほんの少しだけ。 ホームページ
純愛中毒 (ADDICTED) 2002韓国 (監)パク・ヨンフン (出)イ・ビョンホン、イ・ミヨン、イ・オル、パク・ソニョン 2005/01/30 新文芸坐 ◎ 兄夫婦と、共に暮らす弟。 弟と兄は、同じ瞬間に別々の事故に遭い、 弟だけが昏睡状態を脱するが、弟が取り戻したは兄の魂だった。 この人は兄なのか弟なのか、妻の苦悩が始まる。 狂気と言ってよいような情愛の物語は、最後の最後まで想像を絶する展開。 あまりに衝撃的な結末に、終わった直後しばし呆然としながら、 表題の意味深さを思い知らされた次第。 ビョン様人気のせいか、客席は結構埋まっていた。 この2作品は新文芸坐「韓流シネマコレクション」にて。 ホームページ
リメンバー・ミー (Ditto) 2000韓国 (監)キム・ジョングォン (出)キム・ハヌル、ユ・ジテ、パク・ヨンウ 2005/01/30 新文芸坐 ◎ 古い無線機から聞こえてきた声の主は、異なる時代に生きている人だった。 1979年に住む女子学生と、2000年に住む男子学生、時を越えた不思議な交信は、 やがて互いの将来に微妙な変化をもたらすことになる。 よく比較される 『イルマーレ』(→2004/12/04) とは、時空を越えた交信という点は似ているが、物語の傾向は全く異なるもの。 歳月の間隙が21年もあることが展開の鍵にもなっていて、 切ない結末にはさめざめと泣かされる。 イルマーレのスタイリッシュさに比べて、こちらは純朴な感じで、それもよい。 応援サイト
笑の大学 2004日本 (監)星護 (出)役所広司、稲垣吾郎 2005/01/28 深谷シネマ ◎ 昭和15年、娯楽が憚られるご時世。 浅草の大衆喜劇の脚本家兼演出家の若い男が、 次回作の脚本の検閲を受けるため警視庁の取調室に赴くが、 新任の検閲官は、これを上演中止に追い込むべく無理難題を吹き掛ける。 受けて立った脚本家が奮起して修正を繰り返すうちに、 脚本は一層面白くなってしまう。 この物語は以前ラジオドラマ(NHK FMシアター)で聞いたことがあるが、 この映画版もそれに劣らぬ傑作。 笑わされて、泣かされて、しかも反戦映画にさえなっているかも。 ホームページ
約三十の嘘 2004日本 (監)大谷健太郎 (出)椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠一、八嶋智人、伴杏里 2005/01/25 シネクイント ○ 久し振りに結集し、一仕事で大儲けした詐欺師グループの6人。 ご機嫌の帰りの寝台特急の中で、しかし大金の入ったトランクが消えてしまう。 疑心暗鬼が渦巻く密室内で、次第に互いの嘘と本音が明らかになってゆく。 俳優たちは皆ぴったりはまり役だし、会話の応酬も面白いのだが、大傑作だった 前々作『アベックモンマリ』(→1999/03/09) や前作『とらばいゆ』(→2002/03/29) に比べると、物語の方向性がはっきりしないせいか、何となくすっきりしない感あり。 ホームページ
火火 2004日本 (監)高橋伴明 (出)田中裕子、窪塚俊介、岸部一徳、石田えり、池脇千鶴、黒沢あすか、遠山景織子 2005/01/25 シネスイッチ銀座 ◎ 信楽焼の自然釉を完成させた陶芸家・神山清子の壮絶な生涯を描く。 同業の夫から見放され、貧しい生活をも省みず、制作に没頭するむ主人公は、 ついに自然釉の再現に成功。陶芸家として評価を高めたその頃、 同じく陶芸の道を歩み始めた息子が白血病に倒れ、 母は骨髄移植の適合ドナー探しに奔走する。 実在の人物の強靭な生き様が乗り移ったかのような、 田中さんの鬼気迫る姿には凄みが漂い、 主人公の強さを併せ持った愛が強烈に伝わる。 息子役や弟子役も、殆ど命懸けの演技。 ホームページ
接続 (The Contact) 1997韓国 (監)チャン・ユニョン (出)ハン・ソッキュ、チャン・ドヨン 2005/01/25 ヤマハホール 昔の恋人への想いを断ち切れないラジオ局プロデューサの男性と、 友人の恋人への恋情に悩む電話オペレータの女性は、 あるレコードの音楽を介してインターネットのチャットで語るようになり、 ついに互いに会うことにするが、とある出来事で会えないままになってしまう。 主演の二人の好演もあって、なかなか切ない物語に仕上がってはいるのだが、 同じようなテーマを扱った 『(ハル)』(→1996/04/06)の方が、 電子メールやチャットをずっと上手に物語に取り込んでいたように思う。 ホームページ
銀のエンゼル 2004日本 (監)鈴井貴之 (出)小日向文世、佐藤めぐみ、大泉洋、山口もえ、村上ショージ、浅田美代子、西島秀俊 2005/01/22 MOVIXさいたま ○ 北海道の農村にあるコンビニエンスストア。 妻が入院してしまい、妻に任せ切りだったコンビニ店主の仕事を 請け負う羽目になった中年男と、父と向き合うことのなかったその娘、 出入りする店員や客たちをめぐる群像劇。 軸となるのは父と娘との関係だが、他の登場人物もそれぞれの事情を抱えていて、 それぞれの心が、コンビニという「場」を通じて、少しずつ温められてゆくようだ。 何と言うこともないけれども、それが魅力的な佳作。 なお、監督がこの劇場に寄せたメッセージ映像が上映前に紹介された。 ホームページ
パッチギ! 2004日本 (監)井筒和幸 (出)塩屋瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子、尾上寛之、真木よう子、小出恵介、 波岡一喜、オダギリジョー、光石研 2005/01/22 大宮シネマリゾート ◎ 1960年代末の京都、血気盛んなあまり、対立し合う朝鮮高校と府立高校の高校生たち。 朝鮮高校の女子生徒に一目惚れした府立高校の男子生徒は、 彼女に近づきたい一心で、朝鮮語を覚え、そして「イムジン河」と言う歌を知り、 少しずつ「在日」の問題について知ってゆく。 音楽や社会風潮などが当時の雰囲気を感じさせてくれて、 日本と韓国・朝鮮の関係をめぐる深い問題提起も含んでいて、 しかも全体として熱くほろ苦く感動的な青春物語として成立していて、盛り沢山。 ホームページ
掘るまいか 手掘り中山隧道の記録 2003日本 (監)橋本信一 2005/01/19 深谷シネマ ○ 先の中越地震で壊滅的被害を受けた山古志村で、かつて、 住民たちが自分たちの手だけで、隣村までの山を貫通する約1kmのトンネルを、 約15年かけて掘りぬいた記録。 当事者たち(もう高齢)への取材場面に、適切な再現映像を交え、 一筋縄では行かなかった工事の年月が語られる。 ついに貫通した瞬間の喜びを振り返る本人たちの、嬉しさ溢れる表情には、 聞いているこちらにもその時の感動が伝わって来るよう。 当事者がご存命の内にこの映像を残せて、本当によかったと思う。 ホームページ
誰にでも秘密がある (Everybody has Secrets) 2004韓国 (監)チャン・ヒョンス (出)イ・ビョンホン、チェ・ジウ、チュ・サンミ、キム・ヒジョン 2005/01/16 大宮シネマリゾート ○ 三女の彼氏である、格好よくて知的な「完璧な男」。 頭でっかちな次女も、倦怠期の人妻である長女も、彼に惹かれてしまい、 いつしかいい関係(?)になってしまう。 いささか下品な場面も多いのだが、とにかく楽しく、ほんのり幸せ気分。 同じ場面を、三姉妹それぞれの立場から繰り返し辿ってゆくという構成が面白い。 完全にジャズ歌手になり切っている三女も凄いが、 何と言っても生真面目な次女役のチェ・ジウさんがチャーミングで コミカルないい味を出している。 ホームページ
スウィングガールズ 2004日本 (監)矢口史靖 (出)上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、豊島由佳梨、平岡祐太、竹中直人、白石美帆 2005/01/15 深谷シネマ 2004/10/03から2度目の鑑賞。 ビッグバンドジャズの演奏にのめり込んでしまった女子高生たちの夏から冬まで。 やはり圧巻なのは、最後にノーカットでしっかり聞かせる女優たち本人による 演奏シーンで、押し寄せる感動は圧倒的。 この日は上映前に、地元・深谷第一高校の吹奏楽部による特別演奏があり、 客席をぐるりと囲んだ20名超の高校生たちの、ひたむきな演奏ぶりに、 自分の学生時代のことなどもふと脳裏を過ぎったりして、目頭が熱くなった。 ホームページ

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(紺野裕幸)

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